神経内科に通い始めた洋は、一緒に暮らしている母親にも事情を説明した。
「そんなに、一生懸命にならなくてもいいのよ、和江さんにもそのうちわかってもらえるでしょ、お母さんね、今日、教会行ってくるからその時にしっかりお祈りしてくるね。」
「う、うん、心配かけてごめんね」
特にマザコンというわけではないけれど、母親が子を心配するのは当然なことでましてや男の子ならなおさらだ。
「お姉ちゃんが心臓の手術したときも、いっぱい教会いってお祈りしたのよ、おかげ見事、成功したでしょ、洋も大丈夫よ!」
この教会ってやつ、洋は深く聞いたことはないんだけど、キリスト教ではない、何かの宗教なのだ、新興宗教だと思うが、母親が熱心になって以来、我が家にはいい影響をもたらしているのも確か。
姉の心臓がよくなったのもこのおかげだと思っている。
洋はよくわからないおけれど、否定する気にはなれなかった、むしろ肯定していた。
母との会話でなんだか心が晴れた。
その夜も和江とSkypeで会話をした。

「調子どお?」
「悪くないよ、今日も神経内科行ってきたし。」
「先生なんて?大丈夫って?」
「まあね、それより、会社はどう?なんか変化あり?」
「少しずつ動いてるよ、まずは目撃者の証言集めから、でもみんな最初より消極的なんだよね~」
正義感に満ちあふれた和江は部長を社会的に制裁してやろうと水面下で動いているのだ。
「まあ、みんな和江みたく強くないからね、俺は今日、母さんに打ち明けたよ」
「なんて言ってた?」
「心配すんなって言われた、うちの母さん、RH教会って宗教で教会に行ってるんだけど、そこでしっかり祈ってくるからってさ~、姉ちゃんもそれで心臓治ったんだ、なんか少しすっきりしたよ」
「・・・・」
和江はまたも絶句に追い込まれた。
この人、お母さんの宗教のこと一言も話してくれたことがなかった上に私の宗教は反対してるっぽい。
マザコン?まさかね。
「洋は信仰してるの?」
「いや、俺は教会にも行ったことないけど、なんか最近そこはいいって噂きくよ」
「そう、じゃ一生懸命やったらいいじゃない、治るんじゃない?」
「俺はそんなんじゃないから、無宗教派だから、当分は医者に行って様子みる」
この人ってまったく理解してないみたい、私が今まで伝えたかったことが何一つ伝わってない。
「じゃ、お風呂入るから、また、明日ね」
これ以上、洋と会話する気になれない和江はそうそうに切った。

翌日、会社では同僚とその話になった。
「なんか、洋ってよくわかんないかも」
「なんかあったの?」
と和江の一番仲好しの同僚、亜樹が相談に乗っていた。
「私の宗教は割と否定気味なのに、お母さんが信仰しているのは賛成らしい」
「お母さんは何なの?なんの宗教?」
「ほらなんかさ、最近話題のやつあるじゃん、教祖様がいてさ、手をかざすと良くなったりさ、教会があるらしいよ」
「あ~なんだっけ?RH教会だっけ?」
「そうそう、それはOKなんだって」
「でも、洋さんは和と付き合うとき、宗教のこは理解するって言ったんでしょ?」
「うん、でも忘れたのか、どうでもいいと思ってるのか、いまいちわからない」
亜樹は無宗教だが和江の宗教は知っている、和江がとても良い子だからむしろその宗教に対する偏見もなくなったくらいなのだ。
「しかし、弱いね~和はこんなに頑張っているのに、1ヶ月休職って、洋さん結婚なんてできんのかね?」
「有意義らしいよ、休職中が。なんかわかんなくなってきちゃった」