ニョ・コンビ結成!!
試合会場からの帰り道は、ルディーニョの車に乗せてもらった
彼の本名は「ルディ」なんだけど、エイジーニョと同じ理由で名前に最後に「ニョ」をつけている。
ブラジル式でいう「~ちゃん」という意味。
先週末に発表された、今日の試合のメンバーリストに「RUDINHO」と名前があった。それを自分と勘違いしたエイジーニョは、慌てて監督にメールで確認を取る、なんて出来事もあった。
「おう、乗れよ」なんて、声をかけてくれたルディーニョ。
でも、ここまではほとんど言葉を交わしたことがなかった。
年配だし、怖そうだし、あんまり練習にも来ないし。それでいて、毎週DFで試合に出てる。
車内で沈黙の時が過ぎたらイヤだな~ なんてちょっと心配したけど、
なんと、彼、英語がペラペラだった!! チームの中でも一番上手いくらいだ。
すんごく楽しいドライブになった。
エ: "ルディーニョ" って、いい名前ですねぇ。僕と同じだ。僕の名前もエイジっていうんですけど、ニョを付けてみた。
ル: そうそう。ブラジル式にね!! じつにかわいい。キミは、いつドイツに来たの?
エ:2ヶ月前です。ドイツ語は必死でやってるんだけど・・・ 僕、ここで英語を話すのはあんまり好きじゃないんです。ずっと英語に頼っていたら、ドイツ語は上手くならないと思う。なにより、チームメイトとちゃんとコミュニケーションできないし。
ル:ドイツ語は簡単じゃないよ! じっくり時間をかけてやったほうがいい。
エ:そうですね~ 名詞に男性・女性・中性があるしね。 でも、すごく楽しんで勉強してますよ。
僕、日本では外国語大学で韓国語を勉強したんです。日本語・韓国語・英語に続いてドイツ語は、3番目の外国語かな~。
まぁ、英語は上手くないですけど。 とにかく、外国語を話すというのは、すんごく楽しいことです。僕にとっては、人生の喜びだ。サッカーと同格ですね。
ル:ああ、そうか? 日本語と韓国語っていのは、同じなんだろう? だから、楽なはずだ。オレだって、4ヶ国語を話すよ。 ドイツ語、英語、フランス語 そして・・・ケルン語だ・・・ ガハハハ。 フランス語はなかなか話す機会がなくてな。
エ:・・・
ル:キミ、ガールフレンドは?
エ:みんな、どっかに行っちゃいましたけど。
ル:ガハハハ。ドイツで見つけなさい。ただし、ここで真の友人を見つけるのは簡単じゃないぞ。ドイツ人っていうのはハードだからな。いい方法がある。パブに行くことだ。行きつけの飲み屋をつくって、何度も顔を合わせるうちに、親しくなれるんだよ。
エ:合わせて、このチームでもどんどんみんなとコミュニケーションを取りたいと思う。試合にも出たいし・・・
ル:キミ、ポジションはどこなの?
エ:MFですよ。ディフェンシブと左サイド、両方出来ます。
ル:それは、フィールドを行ったり来たり、忙しいな!!
エ:ルディーニョは、何歳なんですか? ここのクラブには長くいるの?
ル:27歳だよ! このクラブには、長くいるな・・・何年になるのかは分からない。オレは、ケルンでの生活と、クラブで過ごす時間にすごく満足している。この街はいいだろ。大学がたくさんあって、外国からの留学生も多い。だから、キミも暮らしやすいはずだ。
クラブもすごくいい。何がいいかって、学生の街なのに、なぜか若い選手が少ないんだよ!
だから、オレも47歳で現役を続けられている。 好きな街に住んで、週末にはリーグ戦に出場して。
楽しい人生だ。
エ:ウチのクラブ(ボルシアLH)は、ユースやそれ以下の育成に物凄く力を入れていると聞いたけど?
ル:そう。50年以上も歴史があるからね。クラブというのは、若い人たちに対してよくあるべきだと思うんだよ。当然のことだ。
なんて、話しているうちに車は今日の出発地、クラブハウスに戻った。
正直に言うと、今までは、「なんで、このおっさんが試合に出てるんだ」とも思っていた。
今日、はじめてじっくり言葉を交わしてみて、監督が彼を試合に出しつづける訳が、少しだけ分かる気がした。
クラブを愛して、ずっとピッチに立ちつづけるおっさん。
幼稚園から選手を大事に育て、そして50歳近い彼にもプレーの場が確保されている。
これが、ケルンの街の小さなクラブの有様を象徴しているのだ。
この人がどう人生の中でサッカーと接しているのか、もっとじっくり話を聞きたいと思った。
まぁ、ポジション争いでは、一切手加減はしませんが!!
年齢・人種・民族を超えて・・・ ニョ・コンビが結成された。
向こうはオレを「ヤパニーニョ」(日本のニョ)と呼び、
オレは「ドイッチェニョ」(ドイツのニョ)と返した。
うーん、後者は語呂が悪いな。
英語で「ジャーマニーニョ」としておこう。