ここ以外では、社会的・公的なことなので、「です・ます」調にしていますが、ここでは、個人的・私的なことなので、「だ・である」調にしています。
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目や耳が老いで衰えつつも、テニスができるくらい、健康で元気だった父が、89歳で急死した。
約4年前に大病で手術をした、81歳の母の独り暮らしとなった。
実家は、郊外の住宅地にあり、壁式プレキャスト(工場生産・現場組立)・コンクリート(PCa)造の建売で、1974年に新築で入居し、2022年現在で築48年になる。
雛壇型住宅地の2階建住宅は、木造が大半なのに、なぜ鉄筋コンクリート(RC)造を持家に選んだのか、父には聞けなかったが、おそらく幼少期に先の大戦を体験し、焼け野原の中で、RC造だけが残っている光景を目にし、それでマイホームをもつならRC造だと、直感したのではないか。
何の本の誰の文だったかは忘れたが、戦後日本の都市住宅で、コンクリートの打ち放しが流行したのも、建築家の意志・思惑だけでなく、建主が焼け野原の中に残されたRC造の光景を目にしていたので、受け入れやすかったと書かれていた。
間取りは、京間8畳を1ユニットとし、1階では、4ユニットを田の字に配置、2階では、2ユニットを北側へ日の字に配置され、南面の2ユニット分をルーフバルコニーにした、シンプルなプランだ。
1階の1ユニットが、玄関+廊下・階段・水廻り、その他の1・2階の5ユニットが、居室+収納で、居室のうちの1ユニットが、ダイニングキッチンなので、4DKだ。
入居以来、実家の改修は、工務店をほとんど使わず、主に父が自力で行っていた。
だから逆に、他の家族がほとんど介入せず、外注も極力しないので、しだいに経年劣化し、整理・掃除が行き届かなくなっても、そのままだったが、父の死を転機に整理・掃除し、母の念願のリフォームに着手することになった。
しかし、リフォームするには、あまりにも居住者の年齢が行き過ぎており、本来なら工事で引越しても、まだ元気な60歳前後が理想だが、この時機だと、高額な費用をかけても、引越と不慣れな仮住まいで体調が悪化し、短期間しかそこで生活できなかったという事態にもなりかねない。
そのうえ、実家のある住宅地は、高齢化が急速に進行しているとともに、公共交通機関がバスしかなく、最寄の鉄道駅までバスで約20分もかかり、リノベーションしても、不動産の売買に困難が予想できる。
また、当時の間取りは、浴室・洗面脱衣室が狭いのだが、実家はPCa造のため、壁を壊して水廻り(両室とも約0.75坪)を広げるのは、相当大変で、現在標準の浴室・洗面脱衣室の広さ(両室とも約1坪)を確保しようとすれば、居室1部屋の一部を水廻りに当てるしかなく、大がかりになってしまう。
このように、難題山積だが、引越を極力回避することを最優先とし、最低限の改修計画を立案することにした。
●課題
・床がベコベコ:点検口から見ると、床下地の合板の接着が剥離しているが、根太は腐っていない模様
・1階の3居室+水廻りのすべてで、床とドアの下枠との段差あり:今後の生活に支障大の可能性
・キッチンセットの老朽化:交換が母の希望
●欠点
○根本
・窓のシングルガラス
・便所が1ヶ所
・エアコンを増やすには(IHクッキングヒーターも)、アンペア契約も増やし、コンクリートのコア抜きが必要
・便所・浴室・洗面脱衣室に換気扇がない
・便所・浴室・洗面脱衣室と廊下に段差あり
・コンセントが少なく、配線が窓・ドア下を通る
・屋外の追い焚き風呂釜で、車庫の車幅が制限
・屋内のガス給湯器が老朽化すれば、一酸化炭素中毒の危険あり
○末節
・雨戸が開閉しにくい
・勝手口が開閉しにくい
・壁紙のはがれ
・2階の西側個室の収納の引き違い戸が開閉しにくい
●方針
○1階の居室3部屋+廊下を軽量な畳敷に
畳敷をフローリング張に改変することは、リフォームでよくあるが、それだと、工事が長期化するので、逆に、個室・廊下のカーペット床や、ダイニングキッチンのクッションフロア床を、採寸1日・敷込1日でできる畳敷とし、既存の畳床と高さを合わせることで、床とドアの下枠との段差を解消する。
畳敷にすれば、万一、床が抜けても、その都度、床下地の合板をやり直せば、その畳が再度利用できる。
ただし、階段の1段目の蹴上げだけが、2段目以降と段差が変わることになる。
畳は、スタイロフォーム・ポリスチレンフォーム等で軽量化を前提としたうえで、防カビ・防ダニ対策と、床のベコベコ阻止を、両立させ、ダイニングキッチンのみ、防水の畳表でヘリなしとし、他の畳のヘリの色は、既存の畳のヘリと統一する。
○2階の西側居室を畳敷に
別居している私達息子家族が、居心地よく布団で就寝でき、掃除しやすくるため、畳敷とする。
○便所・浴室・洗面脱衣室は現状維持
居室・廊下と水廻りの段差は、残ってしまうが、手を入れようとすれば、工事が長期化するので、とりあえずいじらない。
○工期を極力短縮できるキッチンを検討
キッチンでのライニングの立ち上がりは、給湯器の配管・キッチン水栓・ガス栓がからみ、そこをいじると工事が長期化し、シンクの位置がズレれば、給水管・給湯管の移動と、排水管の延長が、必要になるので、どこまで改変するかを検討する。
キッチンは、畳厚分(ドアの下枠分)をカサ上げしたうえで、キッチン台(天板)の高さを87cmにする。
○壁・天井の仕上げは後回しに
壁は、父がDK以外の居室に内断熱をし、天井は、入居時のままか、父によるペンキ塗かだが、PCa造なので、構造的に無関係な壁・天井は、今後自力で仕上げるのを想定し、美観的な改変は、後回しにする。
結局、生活の本質を突き詰めれば、床・器具(設備・家電)・家具・道具の4つが大切になる。
(つづく)