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「賃金プッシュインフレ」とインフレ目標の関係について

20日の米国市場ではいきなりミネアポリスの総裁が「インフレ目標の達成に1、2年掛かる」と言ったでしょう?本日のドル円相場がそうであったように、こうなってしまうとその後のマクロは関係ないわけです。

 

以前から彼が発信しているのは、労働市場がタイトであるということと賃金上昇率が依然として高すぎる、ということなんですよね。で、本日はその賃金プッシュインフレ(Wage push inflation)について。 ※賃金インフレ、とはちと違う。

 

 

 

賃金プッシュインフレさ中にある米国

 

パウエルが6月会合後の記者会見で、「賃金上昇率は依然としてトレンドを上回っている」と言っていたでしょう?(いつものフレーズ) 報道で、いつもさらりと流されている感があるのだけど、ここは重要な箇所なんですよね。

 

議長のいう「トレンド」というのは、2%インフレと一致する水準(賃金上昇率)と説明されるものの、適切な数値が示されることはない。従来的には「3.0‐3.5%(賃金上昇率、前年比)」であることから、FRB内部の担当統計局のデータを基に発言していることがわかる。

 

ただ漠然と(マクロが)市場予想を上回った下回った、長期金利が上がった下がったで利下げ時期がどうの、で大体終わりでしょう? 基準が明確でないことからこのような報道になるんですよね。結果、受け取る側としてもイマイチわからない。

 

たとえば、(これが軸というわけでもないが)BLSが公表した5月雇用情勢の中での賃金上昇率(前年同月比)は4.1%だった。(下図 オマケとして右軸は平均時給)

 

 

 

 

 

上図でわかるようにリセッション(灰色箇所)以前の賃金上昇率は、先述のように3.0‐3.5%を推移していることがわかる。そしてコアPCEインフレは目標レンジ(1.5‐2.0%)を推移している。これが通常ベース (1

 

FOMCというかFRBとしてはここを気にしている。賃金上昇率が下がってこないんですよね。(現在4%水準を推移) 米国ではたびたび話題となるコア労働参加率であったり賃金プッシュインフレ(Wage push inflation)が国内ではあまり話題とならない。(他国でも?) だから週ごとのマクロに一喜一憂する。

 

たとえば、5月ADP雇用報告においても就業者数ばかりに目がいくものの、賃金上昇率は3ヵ月連続で5.0%、レジャーや接客業などのサービス業ですら5.5%だった。連銀調査の賃金上昇率(中央値)においても直近は4.7%とパンデミック直前の高値(3.9%)を大きく上回っている。

 

通常、FOMC声明文では第一パラグラフがフォーカスされることはないが、先日の6月声明文においても

“Job gains have remained strong, and the unemployment rate has remained low. Inflation has eased over the past year but remains elevated ” 

と、前回のものが(第一パラグラフで)踏襲された。

 

雇用の堅調さを伝えているようなこの表現だが、実際には失業率が低ければインフレは高いまま、という風に受け取ることができる。

 

良いことではないけれど、失業率の悪化と賃金鈍化がセットになって、はじめて消費者需要が低下しインフレ低下へとつながっていく。現在のこの状態で金利を引き下げればどうなるかといえばインフレの圧力は再び高まるわけです。少なくとも、高まる可能性は高い。つまり賃金プッシュインフレが収まらない限り(FOMCは)利下げに確信はもてないわけです。

 

これで9月からとか11月から(利下げ)、なんて言っている方がおかしい、仮にそうなったとしても。また更新します。