地名や名字に動物の名前がついてるのって、どういう由来? | えいいちのはなしANNEX

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「犬神家の一族」を観てきましたよ、テアトル新宿、角川映画祭。

市川崑監督は実は結構なアバンギャッルドだ、ってことを改めて実感しました。ありゃあ、凄いや。

草笛光子サンがアフタートークで来て、取材陣がわんさか来てました。さすがにテアトル新宿であんなに取材が来てるのは初めて見た。「ベイビー・わるきゅーれ」のときの3倍はいたな。

しかし、「犬神家の一族」、いま観ても、いや今見てこそ、めっさ面白いぞ! ぶっ飛んでるよなあ、スケキヨ君。

ところで。信州の製薬王の大金持ちが「犬神家」なんですけど。なんでそんな大富豪が、「犬」なんで動物の名前をつけているんだろう、と子供の頃は思っていたんだけど。

それは不明であった、と今では思います。「犬上(いぬがみ)御田鍬」という豪族はいるし、「犬上郡」という地名も古代からあるし。

アミニズム信仰、っていうんですけど、動物のパワーにあやかる、強い動物の名前をつけて呪術的にパワーを自分に取り込もうとする、っていうのは、普遍的な感情なんですよ。

名字はほとんどが地名由来であり、地名はたいてい地形や位置関係でつくものです。

たとえば、川が曲がりくねっているから「隈元」、湾の中に抱かれた島だから「籠島」。だけど日本語の地名は、音が同じならば縁起のいい漢字に変えてもいい、ってルールになってるんです。そこで「熊本」「鹿児島」という文字に変えた、つまり熊や鹿という動物は、縁起がいいんですよ。

虎や熊はみるからに強いけど、鹿だって犬だって兎だって猫だって、生命力に満ち溢れているじゃあないですか。地球上に生息している動物はすべて、生命力の象徴なんです。縁起がいいんです。

ちなみに、隈元を熊本に変えたのは、加藤虎之助という名前の人ですね。はい、清正のことですね。

日本の貴族の最高峰である五摂家のひとつに「鷹司」という家があります。つまり鷹を飼う仕事をしてます、みたいな名前ですけど。

まさか関白が鷹を育ててるわけじゃない。

鷹司寮、という役場の建物の前の道が「鷹司通り」と呼ばれて、その近所に屋敷を建てて住んでいたから「鷹司家」になった、っていう順番のようです。

つまり「仕事名→地名→名字」の順番です。

ひとつ確かに言えるのは、日本人は動物の名前を「卑しい」とは考えない、むしろカッコいいと考えてる、ってことです。「犬神家の一族」って名前だけで不吉だな、と思うのは、間違いです(たぶん)。

犬飼さんは、確かに古代に犬を飼っていた氏族の子孫かも知れませんが。犬飼さんの領地が犬飼という地名になり、そこに移り住んだ農民や武士が犬飼と名乗った、というパターンのほうが、むしろ多いでしょう。

ここで重要なのは、「犬なんて字はカッコ悪いから、他の字に変えよう」という発想を、日本人は絶対にしない、ってことです。

むしろ、端ヶ谷を鳩ヶ谷に変えちゃうとか、熊本や鹿児島みたいに読みが同じなら動物に変えちゃうほうが圧倒的に多いでしょう。

 

ざっくり言えば、動物の名前はパワーがあって縁起がいいから、みんな付けたがるんだ、ってことです。

かならずしも「それ関係の仕事」がルーツとは限りません。

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