大抵の「戦国武将好き」の子供は、毛利元就が大好きですから、その敵であった尼子をバカにしているか、無視しています。
しかし「八ツ墓村」の設定は、明らかに、滅ぼされた尼子側に同情的です。
勝ちに奢って落武者狩りをする毛利に批判的であり、勝ち馬に乗ってそんな尼子の落武者を騙し打ちで無残に殺した「村」は、実に没義道で、祟られて当然、皆殺しになっても自業自得、なわけです。
「毛利は正義」だと何の根拠もなく信じていた子供の頃の私は、「ハツ墓村」を読んで、頭をガツンと殴られたような衝撃を受けました(大袈裟か?)。「敗者だって人間だ」ってことを、オレは忘れてたんじゃないか?
横溝正史は、なんとなく、薩摩・長州の藩閥政府が作った明治維新の「うさん臭さ」を感じていたのではないか、という気がするんですよ、いろんなの読むと、いやなんとなく。
つまりあのひと、毛利が嫌いなんじゃあないかなあ。
「八ツ墓村」のおかげで、敗者の尼子に注目が集まった、という側面は、絶対にあると思う。