「竜とそばかすの姫」の感想を書きます。まだ観てない人と、この映画が大好きという人は、読まないでね | えいいちのはなしANNEX

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「竜とそばかすの姫」の感想を書こう、と思う。

まず、ネタバレなので、まだ映画観てない人は読まないでね。観ずに読んでも何も分からない。

それから、先に言うと、かなり激越に批判を書くので、この映画が好きだ、という人は気を悪くするといけないので読まないでくれると嬉しい。宜しくお願いします。

確かに仮想空間の映像は、奇麗だ。だけど、この話はどうもおかしい、というか、ダメだと思う。
この「U」という世界には、管理者というものがいないのだろうか? 誰かがこの世界を創造したのだとすれば、その誰かの設計思想がオカシイ。
仮想空間にアバターを創造するとき、生体データが反映されるんだと。本人がソバカス顔だから、アバターにもソバカスができるんだと。あくまで実像を引っ張る、というシステムらしいけど。それって面白いのか、現実を離れて理想の姿になれるわけじゃない、ってこと?
ヘンだ。
本人の体にアザがあると、アバターにもアザが反映される、って話が出たところで、決定的にオカシイぞ、と感じた。
ハンデキャップのある者はこの「U」でもハンディキャップを背負わなきゃならない。心にコンプレックスがある者は、ここでもそのコンプレックスから解放されない。辛い現実からの逃げ場にはならない。こんな仮想空間に、一体何の意味があるのか?
身体だけ優れていて心根が卑しい連中が、私設警察みたいなことをやって、得意になっている。世界の秩序を乱す者を排除する、って、それこそ世界の創造主である「管理者」の仕事じゃないのか? この世界を作った者は、作るだけ作って放置しているのか? SFだとしても、設定が甘すぎる。
つまり、この「U」は、どんなに見た目が美しくても、つまらない現実世界のつまんない部分を、そのまんま仮想空間に持ち込んでるだけの代物だ。
ツラい現実と相似形な世界が、いくら映像的にキレイでも、全く魅力的に思えなくなった。
観客としては、映画を観ている最中から、こんなに醒めた気持ちになるとは、という気分(もちろんツッコミながら見るのもそれはそれで楽しいけど)。
終盤の展開が、さらに困った。

相手の信頼を得るためには、アバターを捨てて自分の実像を見せることだ、っていう、それ基本的に考え方がヘンじゃないのか? 世界観を根本的に否定することにならないか?
極めつけは、「竜」の本体(生身の男の子)を救うために、主人公がなんと夜行バスに乗って高知から東京に駆け付けちゃう、っていう。なにそれ? 生身の人間が素顔で動かなければ何も解決できないのなら、これはもう、完全にバーチャル世界の否定だ。
いや、もし作者(細田守監督)が、そういう思想の人で、そういうメッセージを発したい、と思って映画作ってるなら、それはそれでいいんだ。こっちも、そのつもりで見る。
だけど、たぶん、そうじゃないでしょ? 
作者が自分で作った世界観を自分で消化できずに作っている、極めてチープでキモチワルイ失敗例を見せられた、ような気分がする。
いや、観て損はない映画だとは思う、映像は奇麗だし、歌も悪くない(たぶん)、けど、それを全く生かせていない、と言わせて貰いたい。

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