「こちら葛飾区亀有公園前派出所」を港区お台場で見るのはアリか。アリです。「寅さん」だけど。 | えいいちのはなしANNEX

えいいちのはなしANNEX

このブログの見方。写真と文章が全然関係ないページと、ものすごく関係あるページとがあります。娘の活動状況を見たいかたは写真だけ見ていただければ充分ですが、ついでに父の薀蓄ぽい文章を読んでくれれば嬉しいです。

 窓口で「えーと、こちら葛飾区、かめあり・・・」とモゴモゴ言いかけたら「コチカメですね?」と言われてしましました。改めて考えてみると漫画にしては異様に長いタイトルだな。それが長寿の秘密か。

 こち亀だったら亀有で見ろよ、かちどきばしだったら銀座か豊洲だろ、と言われそうですが、大丈夫です。ちゃんとレインボーブリッジも出てきますから(この橋が出てこない映画のほうが珍しいな、最近)。
えいいちのはなしANNEX-kk06 えいいちのはなしANNEX-kk02

 タイトルは、「踊る大捜査線線 レインボーブリッジを封鎖せよ」の単なるパロディかと思ったら、そうでもないです、警察上層部の関係者が誘拐されたり、所轄にできた捜査本部ニ「イヤーなエリートの管理官」(沢村一樹)が乗りこんできたり、といったあたり、マジメにパクって・・・、いや、マジメに刑事ものの推理アクション映画に仕上がっています。

ラスト、亀有や下町の街中では到底やるわけにはいかない派手なスペクタクルシーンがありますので、ウォーターフロントまで出てくるのは必然的なところです(だから、お台場で見てもいいんだす)。「踊る(東宝)」や「相棒(東映)」にヒケをとるもんか、という心意気?を感じます。
 とはいえもちろん、松竹の映画です。主な舞台は柴又の近所、亀有ですから、基本的なテイストは「寅さん」です。ヒロインが旅回りの女剣戟の座長(深田恭子)で、それが寅さんならぬ両さんの幼馴染で、浅草の芝居小屋に久しぶりに帰ってきて・・・という、何時代の話ですか、という、ものすごい設定です。それをいわゆるアクション刑事モノの映画にしてしまうというのは、ある種の「力技(チカラワザ)」です。正直、かなり感心しました、その点に。

 しかも、ここまでやっても、犯罪も犯人もあくまで松竹っぽいんですよね。結構ジーンときたりします。うまくすれば。

 ただし、深田恭子は、女優としてはイイんですが「女剣戟」のプロには到底見えません(笑)。そこんとこがどうもね。ドロンジョ様にするテはなかったかなあ、それじゃあ松竹じゃあなくなっちゃうしなあ。
えいいちのはなしANNEX-kk05 えいいちのはなしANNEX-kk04

 主人公が助ける「いちばんエライひと」の役で夏八木勲が出てます。「情けない色男」の役で谷原章介が出てます。これって「アンダルシア」とおんなじじゃん。谷原、最近どの映画にもいますね。頑張ってください。
 この映画、「三丁目の夕日」風の「昭和レトロもの」のテイストをウリにしている点もあります。回想シーンで、子供のころの両さんが、かちどきばしを走り去る、引越しする女の子のトラックを追いかけるシーンですけど。背後には「クレイジーキャッツの映画のころの銀座」の風景が広がっています(もちろんCG合成です)。両さんは、勝鬨橋が「かつて開いた」ということを知っている最後の世代、らしいです。

 原作「こち亀」は、ギネス級の長期連載で、しかも登場人物は誰も歳をとらないのに、時代はつねに現代で、ネタは「最新流行」を扱っている、というスゴイ漫画です。だから、もはや「両さんは、昭和何年生まれで、いま何歳なのか」という設定は「決して詮索してはいけない」アンタッチャブッルになっています。だから実写映画で両さんがヘリに乗ってレインボーブリッジを見下ろしてるシーンは、かなりシュールです。

 でも、それで、いいのだ。そういうムチャなところを「楽しめる」度量が、この映画を楽しむに際して「あったほうがいい態度」だなあと思います。思い切りツッコんで楽しむ、というのももちろんアリだとは思いますが。
えいいちのはなしANNEX-kk03 えいいちのはなしANNEX-kk01

 両さんが「フィギュア製作の名人」であるという漫画の設定が生きているのも、うれしいところです。

 さて、こち亀は「男はつらいよ」「釣りバカ日誌」に続く松竹の売り物シリーズになるのか? ・・・どうだろ。

 ・・・にしても、この両さん、いくつなんですか?