男子クラス対抗リレー。

 高校では、一番盛り上がるイベント。

 ツートップ柏木 ハルトと二宮 マヒロは当然出場。 

みんな、立ち上がって、グランドの中心を見つめる。 

最前列にいる子は、イケている子。

 

 

 

 

どうせ、私が立ち上がったところで見えないから、後ろ向いて座りこんでいた。  

そしたら、横にレイカが座ってきた。 レイカは、柏木ハルトと二宮マヒロの幼馴染。

 おそらく柏木ハルトの彼女だと思う。 私には関係ないから、詳しいことは知らない。

 

「田村さんは、柏木派?二宮派?」 レイカが顔を覗き込んできた。

 「え・・・」 私が言葉に詰まっていると、 「私は、平野派」とレイカ。

 平野マサヤ・・・あだ名は部長。 ツートップとは、かけ離れたルックスで、おなかもでっぷり出ているあの平野マサヤ?

 

私は、固まってしまった。 

「誰にどんな誤解されてもいいけれども、田村さんだけは嫌だ・・・ってハルトが頼み込むからさ。」 

レイカは言った。

 「えっ?」 

「あと、へこんでた。。。ジュース渡したのは、俺だって」

 

 

 

体育祭の実行委員で一緒になったんだ。 

クラスで男女1名ずつ。 

誰も手をあげないから、私が手をあげた

。 他の女子たちは、ありがとうという目で私に拍手した。

 それと同時に柏木ハルトが挙手した。 「

えー、ハルトがするなら、私もしたかった」という声が次々にあがった。

 

そんな声をよそに。 

「田村さん、よろしく」って、 さわやかな笑顔を見せた柏木ハルト。

 

あの日は、なんか会議が長引いて、体育際実行委員はみんなクタクタ。 

あたりも暗くなって、一人で帰ろうとしたら、柏木ハルトがコーラを渡してきたんだ。 

「ありがとう」そう言って、コーラをかばんに入れようとした。 

「あれ?コーラ嫌いだった?」

 

 

 

すごく寂しそうな表情をしたハルトを見ると、私、明日、どうなってもいいと、飲んでしまった。 

砂糖がダメなんだ。 しかも冷たいもの。 

コーラは冷たくて、おいしかった。 

おいしかったけれども、次の日は、朝から保健室で寝なければいけなかった。

 

おそらく、私の友達のユカとアイリに聞いたのだろう。 

中休みの時に保健室に来たのは、知っている。 

私は、顔見られたくなかったから、寝ているふりをした。

 保健の先生が説明してくれていた。

 

「田村さん、以前は、よく保健室に来てたの。でも、2週間前ぐらいに、原因が分かったって報告しにきたの。砂糖を食べるとしんどくなる。特にアイスや冷たいジュースはだめだって。原因分かってたのに、何か食べちゃったのかなぁ」と言ってくれた。

 

 

「おれです。俺が昨日、ジュース渡したんです。コーラ」 落ち込んでいる声だった。

 カーテン開けて、

「違うよ、私が飲みたかったから、飲んだんだよ」

と言いたかったけれども、体が動かなかった。

 

「コーラね。私が飲みたくて、飲んだんだ。柏木君のせいじゃないんだけどな」 私が、レイカに伝えた。

 レイカは、そうなんだ・・・と一言だけつぶやいた。

 私もレイカもあまり共通の話題なく、そのまま黙って砂を見ていた。

 

ポンポンと頭をされたから、上を見上げると、柏木ハルトが立っていた。

 「あれ?ひどいな。クラス対抗リレー見てくれてなかったのか」 

横に、二宮マヒロも立っていて、 『少女漫画から抜け出してきたのか!』と心の中で突っ込んでいた。

 

「だって、マサヤでないもん」とレイカが口をとがらせて言った。

 「平野、違うクラスだし」 フッと柏木が笑った。 よっ!!と言いながら、レイカは立って、最前列に戻っていった。

 

 

イケてる女子の定位置に。