「fileに閉じる」は、なぜin fileではなく、on fileなのか | 『英語職人』時吉秀弥の英文法 最終回答!

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本当にわかる英語とは?!英語、英文法、その他の外国語の学習、言語学などについていろいろ語ります。

fileと言えば、我々はふつう書類を入れるケースや、あるいは書類を閉じるバインダーのことを思い浮かべます。ですから、書類はファイルの「中に」あるのが普通のイメージですね。ところが英語では「ファイルに閉じる」はin fileではなくon fileといいます。

 

According to documents on file, ... 「ファイルされた記録によると・・」

 

なぜinではなく、onを使うのでしょうか?語源を辿るとその謎が簡単に解けます。また、fileは「縦の列」という意味の名詞になったり、動詞で「縦列で進む」という意味になったりします。これも語源がその謎を解いてくれます。

 

fileの語源は「ひも」を意味するラテン語がフランス語になり、それが16世紀ごろ英語に入ったものです。

(ラテン語は古代ローマ帝国の公用語で、それがのちに別れてフランス語、スペイン語、イタリア語、ポルトガル語などになります。そして、イギリスは1066年にフランスのノルマンディ公国に征服されて以来、300年にわたりフランス語が支配階級の言語となった時代がありました。この時に英語の言語体系が変質するほど多くのフランス語が英語に入ってきました。)

書類にひもを通し「一列にして綴った」ものがfileだったわけです。「ライン上にある」ことを表すon lineという言葉がありますね。それと同様のイメージでon fileという表現ができ、それが現在にまで残っているわけです。fileという動作が、どのような動作を意味しているのか、英英辞典で確認しておきましょう。

 

to keep papers, documents etc in a particluar place so that you can find them easily

「文書や書類などをある特定の場所に保管して、見つけやすくすること」

 

つまり、「見つけやすくするために整理しておく」ことです。ヒモに通して一列に保管することで見つけやすくする、これがfileの元々の動作の意味であることがわかります。現代では「わかりやすく見つけやすくなるように保管する」という意味の部分が受け継がれています。

 

さて、そうすると、fileが動詞で「縦列で進む」、名詞で「縦の列」となることもわかります。つまり「ひもで通す」=「一列」です。

 

People filed into the auditorium.

「人々は(列になって)ぞろぞろと講堂に入っていった。」

→ひもで通したように縦一列になって動いているところをイメージしてください

 

fileが「書類を閉じる」という意味で英語に入ってきて、その半世紀後にこの「縦の列」という意味が派生したようです。

 

さて、のちにfileは報告書や苦情などを「提出する」という意味でも使われるようになりました。これはヒモで閉じた書類の束を役所などに提出したことからきたのでしょう。

 

We filed complaint with the police.

「私たちは警察に苦情を提出した。」

(この「S V 物 with 人」というのは「人に物を渡す」という意味でよく使われる構文です。「英熟語の鬼100則」第65項を参照のこと。)

 

またfile a lawsuitで「訴訟を起こす」となるのも、書類の束を提出して裁判所に訴えることが元になっています。

 

They filed a lawsuit against the company.

「彼らはその会社を相手取って訴訟を起こした。」

 

ちなみに、fileには「やすり」、あるいは「やすりをかける」という意味もありますが、これはまったくの別語源で、英語にもともとあった言葉が同音異義語となったものです。

 

 

こういった熟語の謎解きにご興味がある方は、ぜひ拙著「英熟語の鬼100則」をご一読ください。

 

参考文献:Online Etymology Dictionary