こんなご質問を受けました。せっかくですからここで読者の皆様にもその知識をシェアさせていただきます。
ご質問の内容
What exactly is the procedure for terminating the provider service?
この for terminating の部分を形容詞的用法の不定詞 to terminate にしても同じ意味になると思うのですが、その場合どんな感覚の違いがあるのでしょうか?
高校生のライティングの指導をするときに、for ~ingとto do~の混同がよく見られました。とくにto do~とするべきところをなんでもfor ~ingにしてしまう生徒さんは多かったですね。ということは大人の英語学習者も同じことが言えそうです。
この問題を解決するためには、3つの言葉の意味の違いを理解する必要があります。それは「機能」「理由」「目的」です。
まずはこの記事を書くにあたって以下のサイトが非常に参考になりました。記事の内容もこのサイトの内容を多く引用しています。Cambridge Dictionaryというサイトです。
https://dictionary.cambridge.org/grammar/british-grammar/for-ing
for ~ingとto do~の違いはなかなか難しい問題で、私も長い間疑問に思っていました。上記のサイトによると、for ~ingには二つの用法があり、
①「機能」を表す
②「理由」を表す
とあります。
一方でto不定詞は
「目的」を表す
とあります。
① for ~ingが表す「機能」
I need something for storing CDs.
「CDを収納するためのものが必要だ。」
→somethingは「CDを収納する」という機能を持つモノです。
The PC is still the most popular tool for developing software systems.
「パソコンというものはソフトウエアを開発するための最も人気のある道具だ。」
→toolは「ソフトウエアを開発する」という機能をもつモノです。
② for ~ingが表す理由
You should talk to Jane about it. You know, She's famous for being a good listener.
「ジェーンにそれを話した方がいいよ。彼女の聞き手としての能力は定評があるよ。」
→「良い聞き手」というのは、ジェーンが有名である理由。
ここまでの説明で、おそらく読者の中には「機能」「理由」、そしてこのあと出てくる「目的」の違いがよくわからない、どれも同じに見える、という気持ちが湧いていると思います。それについてはこのあとのto do~の例文が扱う「目的」の意味を見ながら考えて行きましょう。
③ to do~が表す「目的」
We're going to Lisbon to visit my aunt.
「私の叔母に会いに、私たちはリスボンへ行くのです。」
→リスボンへ行く目的は叔母に会うこと。
●「目的」と「機能」の違い
機能:
「リスボンへ行くこと」は「叔母に会う」という機能を表すものではありません。機能とは「体や機械、組織などの中で、あるものがその働きを十分示すこと(日本国語大辞典)」。例えば「棚」はものを収納することが「いつでも」期待される棚としての働きであり、それを機能と呼びます。しかし「リスボンへ行く」という行動は「常」に「叔母に会う」ために存在している仕組みというわけではありません。
理由:
理由は原因と言い換えても良いです。理由(原因)と目的の一番の違いは「すでにあること」なのか「これから手に入れるものなのか」ということです。 「寝坊したから、遅刻した。」の「寝坊」はすでに起きたことであり、それを原因として、「遅刻」という事象が発生したのです。もし「寝坊」が「目的」だと、「寝坊するために遅刻した」というふうに、「遅刻した後で、寝坊をしよう」という意図を表すことになってしまいます。②で書いている「良い聞き手として有名」という理由も「すでに存在している評判」です。
目的:
これから達成されることです。現時点で「叔母に会うこと」は達成できておらず、これからそれを達成しようとして、リスボンへ行くという行動がなされます。
もちろん、「機能」「理由」「目的」はそれぞれ全く違う意味、というわけではなく、お互いに意味が重なる部分があります。ですから混同しやすいわけですが、上記の違いを頭に入れると、整理の一助となるはずです。
最後になりますが、質問にあった例文 What exactly is the procedure for terminating the provider service? について述べます。 もうお分かりの通り、the procedure(手続き)はプロバイダサービスを終了させるという「機能」を持った「手続き」であり、この手続きは「常に」プロバイダサービス終了のために働く「手続き」である、ということです。これをto不定詞に置き換えても問題はありません。なぜなら、まだプロバイダサービスの終了は実現しておらず、これからそれを実現させるために、手続きをふむ、ということになるからです。