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●言葉を発するって、思った以上にすごい運動!
今回のシリーズでは、「語学は体育系だ」というお話をしてきました。語学は運動訓練が不可欠で、体育系の部活以上に大変な運動訓練を要求されるのです。要するに、体を動かさないと、「聞いてるだけ/読んでるだけ」では語学習得は成立しないということです。今回は、人間の脳が言葉を話す時にどんな働きをしているのかということを見ながら発話と運動の関わりを考えていきたいと思います。
●人間の脳の言葉を司る部分。人間以前では何をしていた?
人間が話すような意味での言語を他の動物は話しません。人間だけが「ことば」を話します。でも人間はある日突然孤立して誕生したわけではなく、進化の過程でできあがったわけです。猿から類人猿になり、ゴリラから分かれ、さらにチンパンジーから分かれ、およそ20種類の人類がそのあと誕生し、そしてそれらは全て滅び、現在のホモサピエンスと呼ばれる種である我々だけが生き残ったと言われています。いきなり我々だけが言語を持ったわけではなく、生物というのは徐々に進化していきますから、人類以前の種にも言語の「芽」とも言える能力があったと考えるのが自然です。
人類が人類以前の時代にどういう姿や機能を持っていたのか、それは化石からは分からない場合も多くあります。そこで研究者は類人猿を研究するわけです。
人類は言語の多くを左脳で処理します。主に発話を司るブローカ野とか、言語理解を司るウェルニケ野とか、そのほかにもいろいろあります。左脳の働きは右半身の体の動きを処理します。脳梗塞などで左脳がやられると言語機能と右半身の機能が麻痺することが多いのはそのせいです。
さて、人間が言語処理に多くの労力をついやす左脳のこの部分、人間以前の類人猿では何に使われているのでしょうか。それは、運動の細かい調整機能です。発話を司るブローカ野はもともと運動機能のための領域だったのです。発話がどれほど複雑な運動を行なっているか、音声学でよく言われる例を出してみましょう。
●音声学を例に、口内の運動のすごさを・・
例えば、早口言葉をゆっくり発話し、その際に舌が口のどの部分に当たるか、もしくは当たらないか、を確認してみてください。
例えば、「たけやぶにたけたてかけた。」・・いや、全部に付き合う必要はありません。最初の「たけやぶに」だけで、口の運動のすごさがわかります。
「た」では舌先が上あごの前歯の裏の歯茎にくっついたあと、吐く息によって、はじかれますね。
「け」では舌の根元が上あごの奥の方にくっついて、それから吐く息によって、はじかれます。
「や」では、「け」の時と同様舌の根元が上あごの奥の方にくっつくのですが、しかし、舌の中央がわずかにくぼみ、空気を素通りさせます。
「ぶ」では舌は上あごのどこにもくっつかず、閉じられた唇が吐く息によってボンっと押し開かれますね。
どうです?早口言葉にもならない、「たけやぶ」の一瞬だけでこれだけで複雑な運動をやっているわけです。生まれた時からやっているので無意識に口を動かせている(つまり、繰り返しの訓練により動作を自動化する大脳基底核を使っています)のですが、これ、聞いたこともない未知の外国語として初めて習得しようとしたら、つまり頭で「えーと、舌をこう動かして、その時に唇は・・」なんて考えていたらものすごく大変な運動だ、ということがわかるでしょ?
ちなみに動いているのは舌や唇だけではありません。上記の「たけやぶ」を発話している最中、肺から出た呼気を口だけに通すよう、鼻への入り口の弁(口蓋垂[こうがいすい]と呼びます。おおざっぱに言えば、のどちんこ。)は、ふさがっています。鼻へは空気は通らないようになっているのです。試しに鼻をつまんで「たけやぶ」と言ってみましょう。言えるでしょ?
ところが「たけやぶに」の「に」ではこの弁が開くのです。つまり、鼻に呼気が流れて抜けていきます。これを鼻音(びおん)と言います。ためしに鼻をつまんで「に」と言ってみてください。出てくるのは「ぐひっ」という間抜けな音だけです。これで鼻から空気が抜けていることがわかりましたね。このように舌だけでなく、のどちんこまで総動員して、我々は発音をやってのけているわけです。これだけの複雑な運動を、何も考えずにやってのけるようになるまでには、小さい頃の毎日の訓練があったわけなんです。
●外国語を習得するということ=違う種目の運動にトライ
さて、小さい頃から野球をやってきた人が、ある日突然バスケットボールを始めても、野球に比べればそんなにうまくはできないでしょ?使う筋肉や、体の動かし方が違うのですから。それと同様に、小さい頃から日本語をしゃべっていた人間がある日突然英語を話そうとしても、口は動いてくれないわけです。使う筋肉(ここでは舌や唇、のどちんこの動かし方)が違うのですから。いくら授業を聴いて英語を理解したつもりになっても、それでは体育の授業を見学しているだけで、口を動かす練習をしなければ、いつまでたっても英語を話すことはできないのです。CDを聞いての、音読が大事なわけです。語学が体育系だということ、納得していただけますね。
しかし、野球ができる人間が、程度の差こそあれ、バスケットボールもできるようになるのと同じように、訓練すれば、英語(だろうが、どんな外国語だろうが)は話せるようになります。ようは訓練次第なわけです。ただ、現在の英語教育ではこの「体育系の部分」がかなりおろそかになっている、ということなのです。
ああ、しまった、話がそれてしまいましたね。今回お話するはずのテーマは「人間の多くが右利きであることは、人間が言語を話すことと関係があるかもしれない」、ということでした。次回はちゃんとこのことをお話しします。どちらにしても今回の前提を分かっておいてもらうことが重要ですので。
(つづく)
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