戦略とその実行 | 外資系 戦略コンサルタントの着眼点

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戦略コンサルでマネージャーを務める筆者が日々の出来事を独自の視座で書き綴る


どんなにいい構想や戦略でも、実現できなければ意味がありません。
また実現できたとしても、実現のスピードも重要です。

スピードを上げるにはクライアントを動かすチェンジマネジメントが重要ですが、戦略コンサルは、みんな大小の失敗を積みながら徐々にその重要性を肌身で感じていきます。
(以前もチェンジマネジメントの重要性と難しさをこちら で書きました。)

私の場合も失敗の経験があります。

あるクライアントの事業戦略を検討したプロジェクトでパートナーとなる企業のニーズを先読みして提携を持ちかけ、それによってある分野で優位性を築く戦略を立てました。

カギは、世の中の動きを先読みし、パートナー企業よりも先に事業を構想して、その企業のニーズをくすぐって主導権をとることでした。

このため、世の中の動きを予想し、事業戦略とパートナー企業案を作ったのですが、クライアントからの反応は芳しくありませんでした。

クライアントは、「パートナー企業にそんなニーズはないし、そんな話に乗ってくるわけがない。こちらからそんな持ちかけができるわけがない」という一点張りです。
確かにその業界からすると、ややアグレッシブな戦略ではありました。

「この業界を知らないからそんな戦略を作るんだと思いますが、ありえないですよ。」とまで言われ、その路線での推進をつい躊躇してしまいました。

それから半年後、その担当者がPJルームに駆け込んできて、そのパートナー企業から、こちらが立案した戦略とほぼ同じ話が持ちかけられたと報告がありました。

こちらから持ちかければ全体の構想をリードできますが、向こうに構想されてしまっては、こちらが相手のプランに乗るかどうかを判断する立場になるため
、その差が大きな命取りです。

そのクライアントは「そんなニーズはありえないと思ってたけど・・・」と言っていましたが、その話を聞きながら強く後悔です。なぜ、「この業界を知らない」と言われながらも、強く推進できなかったのだろうかと。

きっと戦略の必然性を説得できていたら、もっと早くクライアントを動かすことができていたでしょう。

結局、パートナー企業に先行され、やや弱い立場での連携になってしまいました。その半年前にこちらから持ちかけていたら、パワーバランスは全然違ったはずです。

チェンジマネジメントの重要性を認識した大きな出来事でしたが、誰かれ、そうした経験の中で戦略立案とチェンジマネジメントのバランスの重要性を痛感していくのだと思います。
(ちなみに徐々に「この業界を知らない」には負けなくなります。こちら 。)