マクドナルドの携帯電話オーダーの意味合い | 外資系 戦略コンサルタントの着眼点

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戦略コンサルでマネージャーを務める筆者が日々の出来事を独自の視座で書き綴る


マクドナルドが携帯電話で事前にメニューを登録し、店頭で携帯電話をかざすとオーダーがすぐに出来るシステムを今後3年で全店に導入することを発表しました。

このシステムを導入により店頭での顧客が悩む時間が短縮出来るため、1顧客あたりのオペレーションがさらに効率化されることになります。

これまでマクドナルドはメイド・フォー・ユーシステムを全店に導入し、オーダーからラッピングまでを50秒で可能とするシステムを実現してきました。

厨房のオペレーション改善がほぼ限界に達した今、残るオペレーション改善の余地は顧客側の意思決定にかかる時間というわけです。

以前、マクドナルドの原田社長が、オーダーの時間が30秒早くなれば、回転率の向上で売上は10%改善すると言っていましたが、これを携帯電話の事前オーダーで達成しようとするシステムです。
(これまで携帯クーポンに積極的に取り組んできましたが、その仕組を活用したオペレーション改善だといえます。ちなみに以前マックの携帯クーポンの取り組みについて書いた記事はこちら 。)


今回の施策を見て思い出したのがイギリスのアルゴス(Argos)という最大手の小売チェーン店です。

アルゴスは安売りに特化したチェーン店で、店舗に行くと店頭に商品は全く並んでおらず、無人のスペースに分厚いカタログだけがズラーっと並んでいます。

来店した顧客はそこでカタログを見て、横に置いてあるマークシートの紙に希望する商品の番号を記入し、近くにある無人機でお金を払います。

外資系 戦略コンサルタントの着眼点-Argos

そうすると奥にあるカウンターで番号が呼び出され、スタッフが裏の倉庫から商品を持ってきてくれる仕組みです。

人件費は倉庫から商品を持ってくるスタッフのみですので、店舗を持ちながらもかなり低いコストで運営することができ、安売りの代表格として成長してきました。

今回のマクドナルドの施策もこれに近いものがあり、オーダーは無人で済まし、会計と商品の受け渡しだけを店頭でやるシステムを目指していると言えます。

もう少し決済のシステムが高度化し、お財布携帯などを使って会計も携帯電話で済ませられるようになれば、店頭で必要な機能は商品の受け渡しだけとなり、そうなればアルゴスと同じ仕組みとなります。


これまでマクドナルドでは、一部のオーダー時にサジェスト(「Lサイズはいかがですか?」と聞く、顧客単価を上げる取り組み。)をしていましたが、今回の仕組みの導入が意味するところは、アルバイトの機能を更に限定し、サジェストを含めた顧客接点を携帯電話のCRMシステムで代替してしまうということです。

マクドナルドは徹底したマニュアル化によって、サービスと商品の質を担保してきましたが、今回のシステムの導入はこうしたシステマチックな統一化を更に推し進めていく施策だといえます。

マクドナルドが徹底したコストリーダーシップで攻めてくる中、モスバーガー、ロッテリアなどの競合は、更に難しい経営判断を迫られることとなりそうです。
(以前、マクドナルドのコストリーダーシップと競合の動きについて触れた記事はこちら→その①その② 。)