戦略の議論が出来ない日本人 | 外資系 戦略コンサルタントの着眼点

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戦略コンサルでマネージャーを務める筆者が日々の出来事を独自の視座で書き綴る


ある外資のグローバル企業の経営者が言っていたコメントなのですが、「日本人とは戦略の議論ができない。」というショッキングなフレーズを聞いたことがあります

その方によれば、アジアでも例えば中国人は戦略の概念を持っているので“戦略”という考え方に則って議論ができるが、日本人はそうではないとのこと。

以前、記事の中で中国人やインド人は家族のマネジメントにもポートフォリオの考え方を取り入れているという話を書きましたが、これも中国人、インド人が戦略の視点を持っているという証左かもしれません。
(そのときの記事はこちら 。)

確かに日本においては、グローバルな大手企業の部長クラスの方でさえ戦略的な考え方が弱い方もそれなりにいて、議論で苦労することがあります。

そもそも“戦略”って何よ?と聞かれたときに、日本ではビジネスマンであっても答えられない方が多いように思えます。


戦略の定義はいくつかありますが、一般的には「ある目的を実現するために、限られたリソースの中で、何を選択し何を捨てるのかを決めたことによってできた方針や計画」が戦略となります。

更に戦略としてのその道筋は、そうした取捨選択によって競合と差別化できる要素が生み出され、目的の実現に向けたスピードや確度が上がるものでなくてはいけません。

こうした定義や意味合いを考えると、大企業で戦略としてしばしば目にするような、「良さそうなことは全部やる」という絵は、戦略とはいえないことがわかると思います。

中国人やインド人の家族のマネジメントで挙げた例は、有限な資源をある目的のためにどう配分し、何を捨てるかという視点なわけで、まさに戦略的な考えであると言えます。


日本ではロジックで全てを割り切るよりも、人とのつながりを大事にして、より関係性やコンテクストを中心とした物事を進める傾向がありますし、これこそが日本の美しい文化でもあります。

ただこうした副作用として、グローバルから見て「戦略の議論ができない」という評価につながっているのかもしれません。
(対欧米では、MBAのような経営学の浸透度合いの差も一つの要素だと思います。)

日本の強い部分・美しい部分は残しつつも、ビジネスマンとしては、戦略のコンセプトを理解できていない人たちとは言われないようにしたいところです。