リアル vs ネット①:価値の違い | 外資系 戦略コンサルタントの着眼点

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戦略コンサルでマネージャーを務める筆者が日々の出来事を独自の視座で書き綴る


別記事のコメントで、“旅行代理店のネットに対するリアル店舗での戦い方や如何?”というコメントがありましたので、簡単に思いついたことを書きたいと思います。


まずリアル店舗の戦い方を考える上で必要なことは、サービスにおけるリアルとネット持つ価値の理解でしょう。

ネット販売の価値を考えてみると、商品と関連する情報が時間・場所を問わず手軽に手に入ることと、企業の運営コストが安いため、利用者が低価格でサービスを利用できる点が挙げられます。

また情報の検索性・一覧性にすぐれており、多くの情報からスクリーニングをかけられる点で、リアルのチャネルは太刀打ちできません。あわせてマスのクチコミの集積もネットの力になります。

一方でリアル店舗の価値を考えてみると、価値の大きさでベーシックなものから、差別化できるものまで、いくつかのレベルに分けられそうです。

もっともベーシックな価値は、ネットが使えない利用者にサービスを提供する価値です。

例えば、地方の商店街にある文房具屋さんがこの位置付けになりますが、この価値はネットに移行出来なかった人へサービスを継続するというだけであり、ネットに差別化する価値ではありません。
ネットが使えない人は、世代交代でさらに減っていきますので、こうした価値だけで戦う店舗は今後生き残っていくことは難しくなります。

さらに高次の価値は、商品やサービスを探す手間の代行です。

これはよく富裕層向けサービスで提供されます。
例えばAmexのコンシェルジュが代わりに店を探して予約しておいてくれるような秘書的サービスです。
また百貨店などでの店員さんが好みにあわせていくつかの商品を提案してくれる機能も同じ価値です。

さらに高い価値はOne to Oneカスタマイズサービスの提供です。

これは証券会社や銀行がプライベートバンキングで提供している価値に近く、顧客の状況を踏まえて投資先を適切に目利きし、顧客が期待する期間と利回りで投資するサービスもその1つでしょう。
また医者が診察をして薬を提供する病院の機能などは、こうした価値の最たるものといえます。

この価値では、消費者が自分では達成できないことを専門家のサービスを通じて実現することができます。


以上のネットとリアルの価値の差を踏まえると、リアル店舗がやってはいけないことは、コスト(価格)で勝とうとすることと、サービス・商品の品揃えの多さで勝とうとすることです。

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に対し、リアルの本屋(紀伊国屋や丸善)が品揃えをいくら拡充しても勝負にならないですし、家電量販店が価格.comに価格勝負をしても勝てないのと一緒です。

店舗がネットのサービスに勝つためには、リアルの価値として挙げた3つの総和が、ネットよりも魅力的であることが前提になります。

やや理論的な話が長くなってしまいましたが、こうしたアイデアを踏まえると旅行代理店のリアル店舗戦略が見えてきそうです。

本論の旅行代理店の話ですが、長くなったので、明日考えてみます。

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