マンガ制作もユビキタス化する | 外資系 戦略コンサルタントの着眼点

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先月のことですが、マンガ大賞2010が発表されました。

1
位となったのがヤマザキマリ著「テルマエ・ロマエ」。古代ローマの建築家が現代にタイムスリップし、日本の風呂に感銘を受けてローマに戻り、古代ローマで風呂を建築するというコメディです。

テルマエ・ロマエ I (BEAM COMIX)

2
位が小山宙哉著「宇宙兄弟」。弟が宇宙飛行士で会社をリストラされた兄が、宇宙飛行士を目指す物語です。

宇宙兄弟(1) (モーニング KC)

そして3位が大場つぐみ原作、小畑健作画の「バクマン」。素人だった学生2人がコンビとなり、集英社で漫画家を目指す物語です。

バクマン。 1 (1) (ジャンプコミックス)


これら3つに共通することが、読者があまり馴染みが深くない世界を正しく描いているという点です。

「テルマエ・ロマエ」は各温泉地に加え、古代ローマの浴場についてもしっかりとした歴史的検証がなされているように感じますし、「宇宙兄弟」はNASA、「バクマン」は出版社の世界がきっちりと描かれています。
(「バクマン」については描いているのが集英社で連載していた漫画家なので、知っていて当たり前ですが。)

マンガ大賞を見て感じたことの1つは、通常の生活ではなかなか知ることのできない世界について描写し、マンガの面白さに加えて、新たな世界を知る面白さを提供しているのが最近の人気マンガのトレンドとなっていることです。

そういう意味では最近はドラゴンボールやナルト、ブリーチのような空想世界を中心としたマンガとは一線を画すものに人気が集まっているように感じます。
(こうした空想を世界観としたマンガは、世界でも売れるので良し悪しではありますが。)


もう1点今回のマンガ大賞で印象深かったことが、コンテンツ作成のユビキタス化(=「どこでも出来る」という意味)です。

大賞をとったヤマザキマリ氏は、なんとポルトガルのリスボンに在住する漫画家です。

イタリアの大学で学びイタリア人と結婚したヤマザキ氏は、「テルマエ・ロマエ」の掲載氏であるコミックビーム誌の編集長とはネットとスカイプで打ち合わせをして、原稿を完成させるといいます。

ネームや原稿をスキャンして編集部へ送付、それをもとにスカイプで打ち合わせ、その上で原稿にOKが出たら、空輸便で3日ほどで日本に原稿を送付するそうです。

ネットとスカイプがあれば、もはや日本に在住していなくても日本で連載ができるまでにインフラは進んでいるということです。

こうした仕事の仕方を見ていると、マンガだけではなく、多くのクリエイティブな仕事が今後は国境をまたいで広がっていくことは確実だと感じます。

2008
年から始まり3年目となったマンガ大賞ですが、受賞作品を見ていていろいろなことを考えた2010年のマンガ大賞でした。