枇杷をいくつかいただいた。

 無駄に種の大きい枇杷をそれほど好きなわけではないが、でも懐かしい味なのだ。

           

 大学2年夏20歳になったばかりのころだからちょうど今頃、珍しく風邪をひいて熱を出した。私と母は継父を大分のどこかに送り出し、元の会社の社宅から一間のアパートに隠れ住んでいたころだ。別にそのことを隠しもしなかったから近くの下宿に住む食い詰めた男の友達なんて私の家のこの上ない貧しい夕食を食べに訪れたりしていたが、その日始めての顔ぶれがお見舞いと称してアパート窓の外に現れたのにはびっくりした。しかも大きな枇杷の箱を運んできた。洗って皿に持って食べた、一間しかなくてよれよれのパジャマの女の子のところに急に来るかなあ?その中に夫がいた。ずっとずっと後になってなんで枇杷をもってお見舞いに来たのって聞いた。答えは簡単3人で果物屋の前を通った。おいしそうな枇杷が並んでいた。箱で買うと思いのほか安かった。3人で買ってお見舞いにもっていき一緒に食おうってことになったのだそうだ。変なお見舞い。

 でも枇杷は思いのほかおいしくて三日ほど休んだが元気に復帰した。

       

 入学したて、「ごめんあそばせ」と言って笑われた私が社宅どころか一間のアパートにいる落差にはびっくりしたって、あとで女友達が打ち明けてくれたけれどそんなことまるで気にならなかった私も相当なものである。