秋の日光は寒かったそろそろ紅葉も中禅寺からっ下まで降りてきていたし曇っていた。

 ガイドするご夫婦はその時のわたしと同じくらい60代半ばかしら?春のオーストラリアから来たので季節が逆。奥様は少々風邪気味で薄手のウールの上着だけで寒がっていらっしゃった。幸いにも私とその日ペアでガイドするH子さんも極め付きの寒がりなので之をたくさんバッグに忍ばせてきていたのだった。

 

  そうご察しの通り。答えはこれ。       

         

 奥様のコートの背中の真ん中と腰の近くに2枚貼ってあげた。「まあ、あったかい。すばらしいわ。」彼女はすっかり元気になった。輪王寺、東照宮、二荒神社を参拝し、ご希望の蕎麦屋さんへ。少し遅めの昼食になったので外で待つこともなく、おいしいお蕎麦にありついた。そして最後のご希望は渋いけれど日光御用邸。

 背中からすっかり温まった奥様はお土産に絶対このカイロを買っていくとメモをなさった。「何でできているの?」その時までしみじみ考えたことのない私たちは袋の材料を見て説明を読んでなるほど、と一緒に感心した。

 

 さてこの経験がもう一度役に立ったのはラスベガスへ行った時だ。全く不必要な季節なのにその前オーロラを見に行った夫は手持ちのカバンの底にこの「使い捨てカイロ」を持ったままだったのだ。旅行では夫は地図を見る係、話す方は私任せ、会話は全く苦手なのに手荷物検査で引っかかった。金属反応があるって引っ張り出されたのがこれ。私はそんなこと考えもせずさっさと出てもう5,6メートル先を歩いていた。「ちょっと、ちょっと。」夫が呼んでいる。

     

係りの人「チョットさ~ん」あのねえ外国なんだから優しく名前で呼んでよ。私の名前「ちょっとじゃない。」仕方なく戻ると「これ説明して。」あの時読んでおいてよかった。それに「この前彼はフィンランドにオーロラ見に行ったんで、これが必要だったの。それを入れたままにしておいたんだけど、日本じゃどこで買えるから置いていくわ。寒い時は便利よ。」宣伝までしてめでたく落着。

 

 「使い捨てカイロ」は日本の偉大な発明なのである。