空の話で思い出したがその時の夕焼けの話は以前にも書いたからご存じの方はスルーしていただきたい。

 

 

 S.Kは中学1年で担任した。悪名高い3人組の一人として入ってきた。。中学ではもちろん8組にばらばらに入れられた。それでも放課後つるんでしまう。喫煙、万引き、ずる休み。何度叱られても3か月に1度はことを起こす。S.Kはどちらかというとひきずられて行動している感じだが生徒指導に叱られようと担任の私が話をしようと反応がない、きょとんとした顔で立っているだけ。お父さんは無口な工員さん、パートにいっているお母さんはそのたび私に謝りに来てくれる、お店に品物を返し、お金も払ってくる。持ち上がりで3人組を持ったのはわたしだけ。お母さんは私との連絡ノートを自分から作り、毎日の放課後の生活を書いてきてくれることを始めた。そしてその薄い大学ノートの最後に「Kがこのノートが終わるときはまっとうな子供になっていてくれますように」と書いてありしばらくは大きな事件は起きなかった。

 その日、運動会が終わったばかりのころ、彼は万引きした下着と靴下もって新幹線に乗ろうとして捕まり学校に送り返されてきた。生徒指導に叱られ、担任から親に連絡するべく、私の机の脇に立った。3人組を2年間続けて担任しているのはわたしだけ。何度生徒指導や校長にお詫びを言って引き取ったことだろう。同じようなお説教するのもなんだか疲れた。ふと二階の職員室の窓から西側を見たら真っ赤な夕焼けが学校を囲む木々の向こうに広がっていた。

       

 「見てごらん。きれいな夕焼け。」私はKの肩をつかんで振り向かせた。黙って二人立ったまま夕焼けを眺めた。何分眺めていただろう。何時も無表情だった彼の目から大粒の涙がぽろぽろとこぼれだした。そうはしなかったけれど、私は彼を抱きしめたくなるほど愛しいと思った。

 「お母さんには連絡するけど、自分でちゃんと話せるね。」私は言った。彼は黙ってうなずいた。

 2年の2学期ちょうど今頃だっただろうか。

 それから彼はグループを離れ、クラスの一員となり、クラスの仲間もS.Kをもじった愛称で呼ぶようになった。彼は無事県立の工業高校に進学した。

 家庭内別居で仲の悪い両親をもったK.Kは大人になって窃盗で逮捕された。お父さんが竹刀をもって乗り込んできたK.H

は 中学出てそれでも何とか生きて居酒屋で成功したとか。こちらの2年からの担任は竹刀なんかにひるまず父親に対峙した。

 S.Kは普通の勤め人として生きている。

 お母さんの熱意が彼を救ったのだと思う。

 でもあの夕焼けが彼を変えた瞬間、私は忘れられない。