夕ぐれ

 

                                    髪油のほのかなにおいをはこぶ

                                    ゆるやかな風

                                    厚いビロードの感受性をまとって

                                    重くもの悲しい時が      

                                    若いふたりのうえに過ぎる

                                    長い指先が芝をひきちぎっている

                                    その間に……

 

                                    動きを沈めた雲を

                                    夕日が縞模様に織る時は

                                    わけもない悲しみに

                                    涙を落とさぬように

                                    目をとじているのかもしれない

 

                                    高い梢が煙になって

                                    夕ぐれ色にとけこむ時は

                                    心も霧にならないように

                                    冷たく汗ばむ手を

                                    握りしめているのかもしれない

 

                                    足もとで花がひとつずつ

                                    とじてゆく時

                                    人影はまばらとなり

                                    樫の木の荘厳なざわめきが

                                    時のシンフォニーを奏でる

 

                                    それはまた どこかで

                                    さわやかな悲しみをこめた

                                                                             別れの訪れる夕ぐれ

 

 

                                                         

 

 

 若い二人にとっての別れは永遠のものでなくても切ない。「クリスマスまでは会えないね」「今度はいつ会えるかな?」昔こんな歌さえあった「明日の晩も会えるじゃないか」それでも切なかったのだろう。