今週の木曜会はチェロと共に寺山心一(しんいち)(ろう)先生のご出演でした。

 

48歳の時に右腎臓癌の手術を受け、その後も放射線、抗癌剤治療を受けますが状態は徐々に末期に近づいていくという体験をされた先生。学生の頃から目指していた道、その人生を大きく変えたのがこの病がきっかけでした。

多くの人がそうであるように、大病を経験すると人生観が変わるといいますが、先生はそれだけではないように想像します。使命を担い、果たすこと、です。

「癌は自分が作ったのだ」と気づき、癌に「愛」を送り続けます。その気づきが奇跡を起します。癌(自分)に愛を送ることで自然治癒力が働き、癌は姿を消していったのです。83歳になった今もお元気そのものです。

 

「昨年の7月に僕の木曜会が決まっていました。その時入院中で、代わりに引き受けて下さったのが寺山先生なんですよ。僕より5歳も年上なのにお元気ですよね。今日はチェロを持って来て下さっています。チェロを聞けるのが楽しみです」と田村の司会でスタートしました。

 

お話のテーマは「生かされていることに気づく時、私たちは変わる」。

 

地球上のすべてのものは、振動しており、私達の身体も振動しています。振動は見えませんが、「感じる」ことができます。

「目を閉じて自分の中に入っていき、チェロの音で感じる力を味わってみましょう」と名曲「アヴェ・マリア」を弾かれました。

「感じるということはすべての原点です。言葉で伝えるのはほんの一部です」

と先生。

会の中盤には映画「禁じられた遊び」のテーマ曲「愛のロマンス」と「鳥の歌」を弾かれました。チェロが奏でる広い音域、優雅だったり温かかったりダイナミックだったりと、非常に表現力豊かな音色を感じさせて下さり、お客様も感動されているご様子でした。

 

「自分がここにいることを感じるために瞑想をします。目を閉じると頭の中で考えていることが、次から次に脳をめぐります。そういう時は静かな呼吸を感じていきます。徐々に頭の中の騒がしさが収まってくることを感じたら、瞑想と呼吸は上手くいっています」

 

瞑想を始めてから先生は意識が変わっていったそうです。

「自分の行いが悪かったんだ。癌よ、ありがとう」と言えるようになりました。そのことに気がついてから、先生は日の出の太陽に向かって合掌するようになり、その神々しさや深い呼吸に感激、空気のありがたさに気づいていきました。

 

人間の身体には自然に治る力があり、そして、空気や水で癒されています。

深い呼吸で、瞑想の状態に入り、地に足をつけ、すべてを腑に落とし、空・無の状態(何でも受け入れられる状態)に自分を置いてみることで、自分がいま「生きている」から「生かされている」ことの実感を味わい、神に感謝する気持ちが湧いて来たそうです。

 

「すぐには生かされているとういう実感は湧きませんが、自分を感じるために瞑想をしてください。意識が変わるかも知れません」

 

最後約1時間で行った質疑応答の中から一つご紹介します。

 

「母が癌で、病院で手術ができない状態なので、抗癌剤を受けています。私は自然治癒することを100%信じているのですが、抗癌剤を止めさせる方法はありますか?」という質問。先生のお応えは、

「それは本人次第です。お医者さんも勉強したことで、一生懸命癌を治そうとしています。だけど自分がそれを受けた時に嫌だったら、止めたらどうですか? 僕はそれが分かったから止めたんです。何故って、苦しかったからです。止める決心をしたのは直感です。感じただけです。遅かれ早かれ皆死ぬんです。僕は83歳で人から見れば長生きしてるように見えても100歳以上の人から見るとまだまだです。人の一生は何で決まるか分かりません。その人の選んだ道でそのようになっていきます。決して無理しないで、その人が選んでいく道をサポートしてあげたらどうですか?」

 

「それぞれに色々感じたことがあると思いますけど、僕も久しぶりに先生が最初にいらした時のことを思い出しました。屋上で朝日に向かって瞑想したと仰っていました。僕も真似してマンションの屋上に上がったら、都心の真ん中に住んでたので、まるで太陽が見えませんでした。それで夜、日の出の太陽の代わりに、北極星に祈ることに繋がっていきました。楽器が弾けるって良いよね。言葉プラス音だものね。今日は久しぶりに先生のチェロが聞けました。ありがとうございました」と田村が締め閉会いたしました。

寺山先生、お客様、有難うございました。

                                (平成31年4月13日 古谷 記)