ファイヤー・スコープに出会ってから、
田村は、妻にプレゼントした婚約指輪のダイヤモンドが気になっていた。

「これは大きくていいダイヤですよ!奥様にとてもお似合いです。」
と勧められたダイヤの指輪。

その気になっていた婚約指輪のダイヤを、田村はファイヤー・スコープで覗いた。

それは怒りを覚えるほど、実にひどい代物であった。
反射して光が返る部分が少なく、光が抜ける部分ばかりであった。
それだけでなく、大きなキズがいくつもあり、形はみにくく歪んでいた。
騙されていたことがはっきりとした瞬間であった。

「ひどい石だ。よくこんなものを得意になって指に乗せてきたなぁ。これは捨てろ!!」
と田村は妻に言った。

部下たちのために買ったダイヤモンドが気になりだした。
そればかりでなく、世界中で売られているダイヤモンドまで気になり始めた。

ダイヤモンドという高価な商品を買う時、誰でもこうして自分の目で確かめ、
納得して買えるならどんなに素晴らしいだろう。


こんなにいい加減に磨かれているダイヤモンドの為にも、
こんなにいい加減なカットのダイヤモンドを買わされている消費者の為にもやってやるか。

そして、ファイヤー・スコープを発明した男に、ファイヤー・スコープを販売することを
懇願され続けていた田村は、それを引き受けることにしたのだった。

世界中の人達が、本当のダイヤモンドを選べるようにするために・・・・・。

 写真はイメージです。
 プレゼントした婚約指輪は東京ショールームでご覧いただけます。