$R40 無名バンド NYへ行く



いよいよNYでのライブ体験!!


 まず、自分たちがNYでライブをやってみて実感した日本とNYの違いを列挙しておくので、海外でのライブをもくろんでいる方は参考にして欲しい。



<リハ>

 日本のように15時とか16時に集まって、開店時間前に全出演者のリハを終わらせるというライブハウスはNY(アメリカ)にはない。
 NYの店に「入りは何時?」と訊けば、「自分らの演奏時間までに来てよ」と当たり前に返ってくる。

 リハは自分たちの演奏開始前の10~15分前のみ。前のバンドの演奏が終わったら、楽器をセッティングして、軽く音出しして、それでゴーだ。各パートのバランスもその時間内で調整しなくてはならない。

 日本のアマバンドにとっては驚きだが、NYじゃ当たり前のこと。PAも慣れたもので、その短い時間でしっかりと全体的なバランス調整をしてくれているので、ご心配なく。

 元来、オレたちはPAにあまり注文をつけないバンドなので、セッティングのときに英会話はあまり必要としなかった。「プリーズ、ギタースタンド」とオレが言ったくらい。あとは皆「サンキュー」か「OK」か「NO,NO」でこと足りた。



<持ち時間>

 日本のライブハウスで、よく書かされる曲順のリストもない。そして「何曲やるんだ?」と訊かれもしない。

 NYのライブハウスのサイトのスケジュールは大体こうなっている。

 8pm ○○BAND
 9pm ▲▲stones
 10pm ××pistols

 各バンドの持ち時間は40~45分。つまり出順が9pmと言われたなら、店には8:40までに行って舞台傍にスタンバイしていればよい。

 時間オーバーしてしまうバンドは今まで見たことない。だから仮にオーバーしたらどうなるかは不明。いずれにしろ日本でもそうだが、時間は守りましょう。

 前のバンドの開始が遅れたりで、スタート時間が押してしまうこともあるだろう。その場合は大体40分くらい演奏すればいい。よほどのことがない限り早めに切り上げてくれと言われることはない。

 注意しておいたほうがいいのは、押すこともある反面、出番が早くなるというケースも多いらしい。前のバンドが急遽来れなくなったから、先にやってれとか平気で言われることもあるらしいので、知人などが見に来るのであれば、その可能性も伝えておいたほうがいいだろう。



<PA>

 PAオペレータは「この場所にオレ以外は絶対に座らせない」的なベテランばかりだ。手際もいいし、マイクのセットから出音のチェックまでたった一人でこなすパターンがほとんどだ。日本でたまに見受けられる最近バイトで入りました風の若者はまずお目にかかれない。

 音については総じて、日本のライブハウスよりも全体的な出音は小さめ。ドラムやアンプ類の前にマイクを立てない店も多い。

 オレはもともと日本のライブハウスは店の面積のわりに音がデカ過ぎると思っていたので、こちらのほうが好みであった。出音がデカければなんとなくミスがごまかせているような気がするのはオレだけだろうか?

 ライブの録音や録画は店には頼めないと思ったほうがいいだろう。
しかしながら、英語力があるのであれば交渉してみはどうだろう? 設備があれば、録音ぐらいならサービスでやってくれるような気がする。

 自分たちでカメラ等を持ち込んで撮影するのは全く問題ない。店側の許可を取る必要もない。



<照明>

 注文はつけられない。

 日本のライブハウスのように曲調によって色をかえたり、ジャンジャカ動かしたりという気の利いたことはしない。基本的に店側の気が向いたら変わる程度と思ったほうがいい。

 バンド入れ替わり時は暗めにして、演奏が始まったらパァッと明るくして、あとはそのままーって店も多い。その場合は、ミラーボールを回して動きをつけていたりする。



<楽屋>

 どちらかといえば無い方が多い。
 無い場合は、ステージ横に荷物を置いたり、バックステージの通路を使用したりする。地元のバンドはあまりやらないが、演奏時に衣装に着替えるのであれば、ステージ袖でやるか、トイレに入るしかない。

 演奏後のミュージシャンは客と同化してビールを飲むか、さっさと帰ってしまうことが多い。
 日本のライブハウス業界において、店の知名度が上がるほど、最後のアーティストの演奏が終わるまで、全出演者を帰さない傾向がある。あれは全く意味がわからない。チケットの最低分はこっちが負担しているのだから、どちらかというと演奏者も店にとっては客のはず。好きな時間に帰らせてくれてもいいのでは? ましてやその客の演奏に講釈たれるとは……。




 全体を通じて、日本のライブハウスの方が、気が利いているというか、お金がかかっていると思える。まあ、チケットノルマなんてとっているのだから、当然といえば当然とも言えるが、なんでもきちんとする生真面目な国民性が出ていると思う。

 かといって、NYのライブハウスが、気が利いていないのか?というとそうではないと思う。無駄なところにお金をかけないといったところが正しい表現ではなかろうか?
「照明なんかに余計なお金をかけるなら、その分チャージを安くした方がいいんじゃないの?」といった方向に考えが向いているのだと思う。

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<ビリヤード>

 ビリヤードが出来るといい。そんなにウマくなくていいのだ。スカッと空振りしない程度、ポケットに確実に入らなくとも強めのショットが打てる程度。

 NYのバーにはよくビリヤード台がある。現地に住む日本人や観光客はバーやライブハウスには顔を出すことはあるが、ビリヤードをすることはまずないという(現地人いわく)。理由はオレでもわかる。バーでビリヤードをやってる奴らはとても怖そうなやつらばかりに思えるからだ。

 ほどよく酔っていたせいもあるのであろう。オレは「やりたいな~」って感じでキューなんていじってたりした。ちなみにオレは別に上手いわけではない。しかし、ずぶの初心者でもない。酔っていても空振りだけはしない自信はあった。
 そうこうしているうちにゴツめの兄さんがビール片手に寄ってくる。「おいオレとやろうぜぃ」と……。

 言っておくが、ドラマティックでもデンジャラスな話でもない。相手もフレンドリーな感じで、アジア人がビリヤード台の周りをウロウロしてるのが珍しかっただけのこと。

 何ゲームかやって、勝ちもしたし負けもした。相当な実力がない限り、ナインボールなんてそんなものだ。
 そいつといろいろ会話もしたが、英語力の問題があり、8割がた理解出来なかった。それでも貴重な体験だったと思う。そのときオレは「日本人のイメージを上げてやったぜ」と思ったほどだ。



<日本人であることについて>

 オレこのツアーを終えて半年後、会社を退職し、4ヶ月ほどの期間で世界一周旅行をしている。(とはいっても訪れたのは十数カ国と、かなりなんちゃって世界一周だ)
 いずれの国でも感じたことは「日本人はとても評判がいい」ということだ。入国審査が代表的で日本のパスポートというだけで、審査時間が短くなる。それに対しやたらと長いのは中国人。(就労とかビザとか、いろんな問題があるのであろう)

 NYでも同様で、どこに行っても不快な思いをすることは少ない。道を聞いても皆、親身であるし、バーや街中でも度々フレンドリーに話しかけられる。とくに楽器を持っているとそれは顕著で「どんな音楽をやるんだ?」「どこでライブやるんだ?」など相当現地人が寄ってくる。(大抵、男だが)

 アジア人が楽器を持って歩いているのは非常に珍しいらしいのだ。


 オレが一人で地下鉄に一人で乗っていたときの話。

 黒人のベロベロに酔った男が、オレのギターケースを見つけるやいなや寄ってきて、「おぅ、一緒に歌おうぜぇぇぇぃ」と手でリズムをとり歌いだした。曲名はわからないが、日本でも結構売れていた一昔前のR&B系のバラードだ。オレはそんな曲、FMで耳にしていたぐらいのものなので、もちろん歌詞だって知らないし、メロディーも怪しい。

 オレは適当に相手して受け流そうとしたが、大抵の酔っ払いがそうであるように男はそんなことは気にしない。笑ってごまかすだけのオレであったが、そのうち男は他の客にも声をかけだした。

 あまり混んでない時間帯で、中心部もとうに過ぎていたので、周囲にはオレと酔っ払い以外の客は2人しかいない。1人はオフィス系のスーツにメガネといかにもキャリアウーマンで、もう一人は派手なブランドの服をまとったいかにも金をもってますよ的な兄さんだった。それに対して酔っ払いはどちらかといえば小汚く、お世辞にも同じ世界に属している人間とは言えない。

 予想どおり2人は無視した。しかし、2度3度と男がアプローチするうち、ブランド系の兄さんが「仕方ねえな……」と折れて、ハミングしだした。「ホラホラ、姉さんも……」と調子に乗る酔っ払い。そうこうするうちに姉さんも表情を崩し、歌いだす始末。

「おぅい、お前も歌えよ。ノリが悪いなぁ!」そうオレに言ったのは酔っ払いではなく、ブランド系の兄さんであった……。
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 寂しい話だが、オレがNYで最もウマイと思ったものは日本食だ。

 せっかく海外に行くのだから現地の食事を楽しむのが本筋であろう。がしかし、適当なレストランに入ると、肉かパン系かポテトかサラダの組み合わせばかり、2度も食べると、もういいやという感じになる。
 あ、誤解をしないで欲しい。NYのレストランは、バーガーやステーキを出す店ばかりではない。シーフード、イタリアン、中華など世界中のあらゆる料理を楽しむことが出来る街なのだ。
問題はオレたちにある。オレたちは現地滞在日数が3日、そのうち2晩がライブだったのだ。ガイドでレストランを探す気力もなければ、小遣いも最低限しか持っていなかった。飯を食うときは宿の近くのあまり高くなさそうなレストランを選んでいた。

 ラッキーだったのは、宿がイーストビレッヂというエリアにあったということ。

 ここらは日本食レストランが集まっている場所で、通りを2,3本も越えると、それこそどうみても日本の居酒屋という店が乱立していたのである。店員も留学生だったりするのであろう普通に日本語で注文出来てしまう。味はものによるというのが正直なところ、当たりハズレはあるが、同じ味つけの肉料理に辟易としていたオレは高菜チャーハンにむせび泣いたものだった。


 近所のスーパーでいろいろ買出しして宿で食うのも楽しかった。アパートメントホテルだと料理をする道具も備えられているのだ。まあ、オレたちが作ったのなんてインスタントラーメンくらいのものだが。

 日本より割安で、地元民に親しまれているのがピザだ。
 1区画に1店舗は大体あって、1スライスから買うことが出来る(日本ではホールで買うのが普通だよね)というのも魅力である。しかもその1つがデカイことデカイこと。ただし日本のピザ屋のように何十もの種類はない。せいぜい5~6種類ってところ。



<時差>

 個人差もあるだろうが、日本からNYに行った場合は眠りが浅くなることが多い。

 成田は昼頃に発ち、機内の十数時間もそんな時間だから眠りもしなかった。NYに着いたのは現地時間で午後。宿に入った頃は夕方で、日本の出国時間から換算するとその頃は明け方ということになるのだが、全く眠くないのだ。重い荷物を持って慣れない土地に来ているのだから、体は疲労していないわけがないのに。

 その日は宿周辺の散策くらいにし、部屋で飯食って、ビール飲んで寝ようと早めに布団を被るも、やはり眠れない。そんな時、普段であれば布団を出てTVでもつけるところだが、翌日と翌々日は待ちに待ったライブが控えている。なんとか眠らねばとビールをさらに飲むが効果なし。

 結局、数時間もの間、布団の中でもぞもぞしていた。その後、眠りには落ちるものの、それはすごく浅いもので30分に一度くらいは目を覚ましていた。

 あわよくば、翌日は朝から観光などと密かにプランニングしていたが、当然のごとく実行されず。メンバー全員が、昼過ぎまで部屋でうだうだしていた。

 オレたちはNYでの3泊とも全てこんな状態だった。旅慣れていない人間が受ける地球の反対側の時差の影響はそんなに生易しいものではないらしい。

 逆にNYから日本に帰ってきたときは、初日こそ眠りにつくのが遅いものの、翌日には全く正常に戻っていので不思議である。

※オレだけのことなのか、定説なのかは調べていない。


 これは最近TVで見たのだが、目をつむって横になっていれば、実際には眠りに落ちていなくとも、睡眠とほぼ同等に疲労は回復するという。