「東京都同情塔」 | 吾輩はクルミ(旧:我輩はチョコである)

吾輩はクルミ(旧:我輩はチョコである)

吾輩は2023年9月21日生まれのクリーム色のトイ・プードル(ティーカップサイズ)(旧:我輩はアプリコット色のトイ・プードル(2007年5月2日〜2023年3月3日)体重3.7㎏で50m走はよそ見をしたので10秒を切れなかった)

吾輩はまだ国立競技場に行ったことがない。

 

 飼い主は今年1月頃に”初めて”行ったようで、広すぎて半周も歩けなかったようじゃ。ニュースでたまに見るオリンピック五輪のモニュメントも、探しあぐねて歩き回り、やっと日本オリンピックミュージアムの前に見つけたのじゃが、その小ささに愕然とさせられたようじゃ。やはり千駄ヶ谷は、飼い主にとっては、、、、

 

将棋会館が一番だったのじゃワイ!!

 

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「東京都同情塔」 新潮2023.12月号 

 九段理江 作       新潮社 発刊

   を読みました。

 

 今年1月の芥川賞受賞作です。例によって図書館予約では単行本は1年以上待たされるので、文芸誌「新潮」に掲載されたのを取り寄せました(それでも4ヶ月以上待たされました)。

 

 内容は分かりにくいことが多いですが、私の性格上深くは考えずに雰囲気だけを味わうように、半ば流し読みで読み終えました。

 

 仮想近未来のお話で、天に近づこうという人間の傲慢な野望で作られたバベルの塔のように、現代の人間の、いや日本人の業の卑しさを償うように、罪人たちをユートピア風の建物に隔離する巨大な塔(タワーマンション的)が建設されます。

 

 罪人を作るのは環境(経済、家族他)のせいで、個人の能力、資質の問題ではないので、民主主義的に多様性を認めて、どちらかというと不運な方々を、幸運な人間たちが支える意図(税金使用)で、ユートピア刑務所が建設されます。

 

 この本では、2020年東京オリンピックで3000億円もするので最終的に不採用になったザハ・ハラマドの国立競技場が完成しています。実は、私も東京都民でありながら都税を無視して「あの素晴らしい国立競技場が完成していたらなあ」と何度も思うことがあります。1964年東京オリンピックの国立代々木競技場、日本武道館に匹敵する素晴らしい建築デザインで開閉式の屋根だったのです。それに引き換え、現在の国立競技場はただ広いだけで、雨天では屋根もない何の新鮮味もない競技場です。

 

 その素晴らしいザハ・ハラマドの国立競技場の隣の新宿御苑周辺に、近代的なタワーマンション風の”刑務所”が建設されます。必然的に賛成者と反対者が拮抗するこのユートピア刑務所を舞台に、その構想段階、建設段階、完成後の段階で登場人物が少し入れ替わるものの、徐々に主人公は女性建築家(中年)の牧名沙羅だと分かります。彼女は生成AIと会話しながら有り余る才能(数学オリンピック銅メダル獲得、とびきりの建築家)を駆使して「東京都同情塔」を設計、建築します。実際の名前は「シンパシータワートーキョー」なのに彼女はカタカナ語を嫌って若い恋人の拓人が呟いた「東京都同情塔」と言い続けます。(昔は東京タワーの名前を公募したらトップは「昭和塔」だったそうで、13番目だった「東京タワー」を選定した方はすごいと思いました、「東京スカイツリー」よりずっと胸に刻まれる名前です。)

 

 このユートピア刑務所が”日本人の欺瞞なのか寛容さ(多様性)なのか”で主人公たちは葛藤に苦しめられるというお話でした。

 

 ストーリー自体はどちらかというと、登場人物を含めて印象は薄いですが、仮想近未来観が素晴らしくて読み飛ばしながら一気読みできました。また、ところどころにAIで仕入れたような小話が散りばめられている(三島由紀夫他)のも知的好奇心を満たしてくれましたね。

 

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 株は横ばいで「セルインメイ」とかも囁かれています。ここはジタバタしないで我慢して年末の捲土重来を待つことにしています!?