土曜日は逗子の歯医者さんの帰りに、モーリスのお家に遊びに行きました。
モーリスとは、11ヶ月ぶりの再開。
お互いピョンピョン大はしゃぎ。
ただし、私が行くとモーリスはいつもケージの中に入れられてしまうの。でも、
その中ではしゃいでくれる。
モーリスは盲導犬の訓練を早々と辞退して、いまはキャリアチェンジ犬として、
パパとママとおばあちゃんの愛情一杯の中で幸せに暮らしているの。
モ「リルハ、まだそんなハーネスなんか背負っているんかい。これから夏で厳し
いぜ。そろそろキャリアチェンジすればいいのに。見てるだけでこっちが疲れる
ぜ」
リ「私はハーネスを背負っている時の緊張感が好きなの。モーリスには分からな
いでしょうけどね」
モ「そんなの知りたくもないよ。それより俺、今年もう泳いだんだぜ」
リ「へえ、泳げるの?」
モ「当たり前だろう。見せたかったな、俺の犬かき」
リ「見なくてよかったわ」
モ「失礼な」
リ「お家を抜け出して海へ行ったの?」
モ「いいや、そこまでワルじゃないよ。俺のかあちゃんのイトコだか親戚だかの
おっちゃんが遊びに来たんだ。それでもって、俺を逗子海岸に散歩に連れて行っ
てくれたんだ。そのおっちゃん、海岸でタバコを吸うために、ライターで火を付
けようとしたんだな。で、その瞬間にリードを手から離してしまったんだ。俺に
してみれば『待ってました』って感じだろ。『海が俺を呼んでいるぜ』だよな。
俺は海めがけて駈け出したんだ。おっちゃん、慌てて追いかけたけど間に合わず。
俺はそのまま海へジャブジャブと入って行って泳いだんだ。すごいだろう」
リ「アハハッ、ちゃんと泳げるの?」
モ「盲導犬の訓練には泳ぎはなかったからな。でも俺は泳ぐんだよ。傍から見た
ら、水を飲んで、溺れているように見えるらしいけど。ちゃんと泳ぐんだ」
リ「ヘェェェェ」
モ「俺は自由を愛する湘南ワンコ。誰にも邪魔されないままに沖へ向ってどんど
ん泳いで行ったんだ。素晴らしかったなあ。そしたら、スタンドアップパドルで
遊んでいたどこかのにいちゃんが、犬が溺れていると思ったんだろうな。近づい
てきて、俺のことをボードに引き上げたんだよ。ちょうど俺も疲れてきたところ
だったから、なされるがままさ」
リ「やっぱり、半分は溺れていたんだ」
モ「いいや、泳いでいた。それよりも、ボードの上から海岸を見るのはなかなか
いいもんだよ。見れそうで見れない景色さ」
リ「私も去年、40フィートくらいのナウシカってヨットに乗って『タモリカップ』
にでたわ。それと江の島でY15っていうディンギーに乗ったわ。ディンギーはバ
ランスが難しくてジッとなんかしていられない」
モ「そんなのどうでもいいんだよ。ボードが浜辺に着いて
俺はリードのままおっちゃんに引き渡された。でもおっちゃんがお礼を言ってい
るすきに、また海めがけて駈け出したのさ。そしてまたまた泳いだんだよ。どう
だ、まいったかって感じだろう」
リ「大分ワルだよ」
モ「俺は充分に泳いでから、海岸へ戻った。おっちゃんは呆れていたね」
リ「ずぶ濡れの姿を見たら、モーちゃんママも驚いたでしょうね」
モ「かあちゃんかい。俺の格好を見て、大笑い」
リ「笑うしかないわね。ところでボードに乗ってる写真はないの?」
モ「ないよ。おっちゃん、相当焦っていたから、撮影するなんて余裕なかったよ」
リ「残念。じゃあケージの中のモーちゃんの写真写そうかな」
モ「やめろよ。今日のタオルはピンクだぜ。カッコワル」
リ「それ可愛いよ」
モ「だから嫌なんだよ。写すなリルハ。ワンワン」
モーちゃんは吠えて、ママに叱られちゃった。
モ「あれ、もうハーネスの時間?」
リ「そう、帰るの」
モ「ええっ、俺の話、これからなのに。まだいろよ。ワンワン」
さっき叱られたことも忘れて、思わず吠えたモーちゃん。またママに叱られてま
したが、めげないのが彼。
モ「私、モーちゃんに吠えられるの苦手よ。ではまたね」
リ「なんだよリルハ。お前ってそんなヤツだったんかい。いいよ。帰っちゃえ。
リルハが帰れば俺はケージから出してもらえるしな。バイバイ、おすましリルハ
ちゃん」
リ「バイバイ。ピンクのタオルのモーリスちゃん」
盲導犬の訓練中に「一生少年のような犬」とキャッチコピーを付けてもらったモ
ーリスちゃんは、ペット犬の世界を堪能しております。
モーちゃんは盲導犬になれなかったのではなくて、選ばなかったのです。
校正 写真 パピコ
