ドッグヴィル | 映画を観よう

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ジェネオン エンタテインメント
ドッグヴィル コンプリートBOX

デンマーク 2003年

ニコール・キッドマン、ポール・ベタニー、クロエ・セヴィニー、ローレン・バコール、ジェームズ・カーン、パトリシア・クラークソン、ジョン・ハート


監督・脚本:ラース・フォン・トリアー  『ダンサー・ザ・イン・ザ・ダーク』


【ストーリー】

ある孤立した田舎町ドッグヴィル。そこには23人の住人と犬がすんでいた。ある日、ギャングに追われて、ひとりの美しい女性グレース(ニコール・キッドマン)が逃げてくる。たまたま居合わせた自称作家の青年トム(ポール・ベタニー)に匿ってくれと頼む。その場をしのいだトムは、集会で住人たちに彼女をかくまうことを提案する、そこで2週間以内に住人全てに気に入られればよい・・という条件の下、グレースは無償で肉体労働を始めるのだったが・・・・




かなり気になっていた作品。

何度か放映されていたのにタイミングが悪くて見ていなかった

昨日、BSで放映するのを知って録画しようと思っていたけれど

グレースがどうなるのか・・気になって最後まで見てしまった・・・


やはり『ダンサー・ザ・イン・ザ・ダーク』の監督の作品

人間の弱くて、卑しい嫌な面が前面に押し出されて

はっきり言って、気持ちのいい作品ではありません


それなのに、なぜ最後まで見ることができたのか??

それは、途中で目を伏せる(そむける)ことができかっただけ


閉鎖的な空間(町なのだけれど)に、住む人々は

極端に人と違う意見を述べたり、行動することを嫌い

集団の中でお互いを肯定しあう・・・


どこか宗教団体のような世界というか

自分の(個人の)意見が必要ない世界は

観ていて寒気がするほど恐ろしい・・・


こんなに不当な扱いを受けているのに

なぜグレースは逃げ出さないのか?


いじめや虐待を受けた人は、あまりの恐ろしさや

逃げれば、捕まったときにさらに酷くいじめられることで

逃げる気力や、考えることができなくなると聞きます

グレースもそうなのかと思いました

けれども、そんなに単純じゃないのですね・・


でも、ラストでグレースが何から逃れたかったのか

ビッグマンとの会話のなかで

グレース自身も、この悲劇の原因であったのだと思いました


ビックマンがグレースに言った言葉・・・

「お前のほうが傲慢だ。」


グレースが、住人になにをされても黙っていたことは

彼らに愛情や尊敬があったからではなく

彼らのことを理解していると思い込んでた彼女の傲慢さ


住人達は、彼女の弱みに付け込み

自らの怠慢や不誠実さを正当化して

理不尽にも不平や不満を彼女にぶつけてしまう・・

けれども、それは彼女を匿ってあげているという傲慢さ


こんなにも人間同士が付き合うことは大変なのか

観ていて、次第に不信感や猜疑感が募っていき

トムの行動で「結局、こんなものだ・・・」と落ち込みました

そして、グレース自身が取った決着の手段

ビッグマンがつぶやきます

「多くを学びすぎたようだ・・・」




恐ろしい作品だと思いました

『お前はこの中の誰になる?』

観ているものに、ごく当たり前のように問いかけているようで

本当に、後味の悪いというか・・・見事な作品だと思います


この中の登場人物ひとりひとり

すべての人が、なりうる、ごく普通の人々かもしれない

理想を掲げ、愛情をもって接していると思っていたトムさえも

結局は自分を守ることになった

(彼はそこで初めて解放され自分らしくなったのかもしれないけれど)



こういうテーマを

一点の曇り(きれいごと)もなく、オブラートで包むこともなく

また、劇のような舞台背景で描いたということでは

素晴らしい作品かもしれません。


ちなみに、出演者たちは、

どのシーンでも常に演技をしていなければならかなったため

「こんなにキツイ仕事はなかった」と口々に言っていたということを聞きました。


壁のない舞台、チャックに襲われるグレースのシーンで

何も知らず、気づかず普通に暮らしている人々の姿に

私たちの生活の中でもそうなんだと思いました

(レイプが普通という意味じゃゃなくて・・・)



いいとか、悪いとか・・好きだとか嫌いだとか・・

そういう一般的な形容詞では表現できない作品です

う~~~ん・・未熟者です。。。