彩坂美月 ひぐらしふる 有馬千夏の不可思議なある夏の日(幻冬舎・文庫) | 勝手に映画紹介!?eigasukiの読書忘備録用ブログ

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何年か前に強制退会トラブルの時に、予備で登録したID。本家ブログの更新を再開しています⇒http://ameblo.jp/eigasuki/ ここでは読んだ本の忘備録を書くつもりです。書籍購入はブックオフ中心なので、新作は少ないかも?


ブックオフの古本110円で入手…2016年4月発行、彩坂美月の「ひぐらしふる 有馬千夏の不可思議なある夏の日」を読了。もともとは2011年に別タイトルで出ていた作品を改題、加筆・修正して文庫化したものだそうだ。この著者の作品を読むのは「サクラオト」「夏の王国で目覚めない」に続き3冊目。前述の2作品がなかなか面白かったので、古本で何か見つけたら率先して買ってみようとは、気に留めていた(この間、電子書籍の整理をしてたら、何年も前に購入し、未読になってる中に、この作品と同じ幻冬舎文庫で出ている「少女は夏に閉ざされる」があった…購入したことすら忘れていたが、今度読んでみようと思っている)。本作は、久しぶりに故郷・実家に帰省したヒロインが、地元の旧友たちと再会したことで、過去または現行の様々な謎に直面し、それを解き明かしていくという全5編の連作短編で、最初と最後にプロローグとエピローグがつく構成。それぞれ独立したエピソードながら、最後まで読むと…ちょっとした仕掛けがありという、以前読んだ「サクラノオト」に近いスタイルの作品かもしれない(本作の方が発刊は古い)。ラノベっぽい可愛らしい表紙イラストに反し、プロローグでは、語り手のヒロインが自分の生首と対面するという、ホラーじみたおどろおどろしい始まり方をするのだが、もちろんこれは夢オチ。その後は先述したように…どちらかというと日常系のような“死人がでない”ミステリー、謎解きが展開されるんだけど、作品によっては、嫌な“黒さ”を感じる作品もあった。“第一章 ミツメル”は帰省したヒロインが、高校の同級生2人と再会…その中の1人が、高校時代に体験した不可解な出来事についての真相を解き明かすことで、さらにもう一つの隠された秘密にも気づいてしまう。“第二章 素朴な休日”…同級生の1人と地元の夏祭りに出かけ、そこで高校の先輩2人とも偶然に再会するが、その先輩2人の複雑な関係性にまつわるゴタゴタに巻き込まれ、これまたさらに激ヤバな真相に気づいてしまう…一章と合わせて“女って怖い”って思った(汗)“第三章 さかさま世界”…ヒロインが、東京に置いてきた恋人と電話で会話をしながら、恋人の友達が、学生時代に経験したバイト中(ヒロインの地元でもある観光地でのロッジで夏季限定で働いていた)の不可解な出来事の真実を暴くんだけど…これまた最後は、どっちともとれる解釈で終わり、もし片方の解釈が真実だったら怖いなって思う。“第四章 ボーイズ・ライフ”は…ヒロインの高校時代の男友達(関係はプラトニック)が、幼少期に体験した友人の失踪・消失の謎を解き明かす。男友達は友達がUFOにさらわれたと、半ば本気で信じてるようだが…。途中、男友達視点で語られる過去シーンは…いわゆる“ひと夏の冒険譚”的な内容になっていて、昨年劇場で見たアニメ映画「グッバイ、ドン・グリーズ!」みたいだったなぁ。“最終章 八月に赤”は…第一章から登場しているヒロインの地元の親友が、激ヤバストーカーに誘拐されてしまうという、最終章に相応しい、一番サスペンスフルな展開が用意されているも…逆に今までのような“黒さ”は薄いかなと感じたりもする。この五章でプロローグも含めた全体の種明かしも含まれていて、重いテーマもありつつ、最後は晴れやかにみたいな印象。連作短編なんで、あまり語りすぎるとネタバレになっちゃうし、どのエピソードも“持って回った言い回し”になってしまい…自分でもうまく内容を伝えられていないなとは思うけど、どの話もそれなりによく練られていて、面白かったですよ。ただ、最終的などんでん返しに関しては…予想通りな部分もあり、それこそ「サクラノオト」を読んだ時ほどの驚きはなかったかなと。この作者の傾向から何かあるって最初から身構えちゃってたのも、影響してるかもね…。


彩坂美月 ひぐらしふる 有馬千夏の不可思議なある夏の日(幻冬舎・文庫)