江戸川乱歩の陰獣（１９７７年）

BS松竹東急で毎週日曜日に放送している（たまに休止週もあり）…天知茂主演の“江戸川乱歩の美女シリーズ”の一挙放送を追いかけている。そういえば、前にＷＯＷＯＷで録って、見てなかった江戸川乱歩映画があった気がするなと思って、エアチェックディスクを確認していたところ…2016年（うわ、もう8年も放置してた）に録画した「」が見つかったので、鑑賞してみる。原作は未読だが…前に同じ原作を使ったフフランス版映画は見たことがある。ちなみに、“美女シリーズ”でも…同じ原作を使ったものがあり、今後、放送になるはずだ。

本格推理小説作家を自称する寒川光一郎は…幻想的な作風を得意とする大江春泥を毛嫌いし、敵視していた。ある日、寒川は、自分のファンだという人妻・静子と出会い、会話がはずむのだが…どうやら大江についての情報も聞き出したいみたいだった。後日、再び対峙した静子から…実は大江が結婚前に付き合った元恋人であること、その大江が、自分との関係を夫にばらすといった内容の脅迫状を送り付けてきて悩んでいることを聞き、驚く。脅迫状には静子と夫の秘め事まで詳細に記されており、寒川は事件に興味を抱き、大江探しを引き受けるが…。

前述の“美女シリーズ”など、他の映像作品だと…名探偵・明智小五郎が登場しているものもあるが、こちらの作品は原作準拠設定なので、明智小五郎は登場せず。主人公である、ガチガチの本格推理小説一筋の作家・寒川光一郎が探偵役を担う。寒川は、自分と正反対の作風、怪奇的、幻想的な作品を得意とする大江春泥というライバル作家をやたらと敵視しているんだけど…この大江春泥っていうのが、人前に出ることをとかく嫌い、その正体がかなりミステリアスだという。そんな状況下で…寒川は、自分の作品のファンだという人妻と知り合いになる。

その人妻の旦那は有名な資産家でもあり、周りの人間から“気をつけろよ”なんて忠告も受けたりするんだけど…実は、人妻側に寒川へ近づきたい魂胆があった。どうやら同業者の大江春泥が本命のようで…連絡先を知らないか？なんて質問してくる。大江の名前が出て、寒川は不機嫌になったりするも…別の機会に、再び人妻と会うことになって、テンションが爆上がり。そこでいよいよ人妻が寒川に近づいた理由が判明…なんと、大江春泥は人妻の元カレであり、今になって…“旦那に自分との関係をバラす”といった内容の脅迫状を送り付けてきていたのだ！

対処したくても所在が不明な大江。寒川も…自分が敵視している大江が、とてつもなく陰険な変態野郎だったことに憤り、作品にも活きている自分の抜群の推理力を使って、大江の居所を突き止めてみせると、豪語！人妻のお悩み相談を安請け合いすることになる。その後、旦那の留守中、“家の中に大江がいる”とパニくる人妻に乞われて屋根裏を捜索したりし、実際に大江の気配を感じる。さらに新たな脅迫状に書き記されていた通り“陰惨な事件”も起き…寒川は人妻や旦那の人間関係を調査しながら、正体不明だった大江の正体にも迫っていく…。

原作を知らなくても、だいたい予想通りなオチではあるものの（なんか、前にフランス版を見た時も同じようなことを書いてた気がする）、どんでん返し、クライマックスの真犯人との駆け引きと…乱歩作品らしいどこか淫靡で、スリリングな展開は楽しめる。なるほど…寒川を明智小五郎に置き換えても、違和感なく成立しそうだ。“美女シリーズ”の天知茂演じる明智も、いつも五十嵐めぐみ演じる助手から“美人の依頼人に弱い”ってイジられてるけど…この作品の寒川も、鼻の下を伸ばし、女の尻を追いかけているうちに事件に巻き込まれ、騒動が大きくなる。
 

前に見たフランス版は…乱歩の原作を現代（2000年代）の日本に置き換え、さらにフランス人の願望や妄想まで織り交ぜられていたので、淫靡を通り越して、かなりカオスだった印象が残っているけど、昭和初期という設定の本作は、ムードたっぷりで面白かったな。“美女シリーズ”の方の「陰獣」（作品タイトルは「妖しい傷あとの美女」）も今まで見たことがないんだけど、またきっと雰囲気が全然違うんだろうな…放送の順番が回ってくるのが今から楽しみ。とにかく妖艶な人妻・香山美子がとても魅力的だった…この人の実年齢、確かウチのオカンと一緒だよ。

監督：加藤泰

出演：あおい輝彦　香山美子　若山富三郎　大友柳太朗　川津祐介　田口久美　倍賞美津子　仲谷昇

【DVDソフトの購入】

人気blogランキング 参加中　-クリック-　ご協力ください！