イノセンツ（２０２１年）

ＷＯＷＯＷでエアチェックしておいた「」を鑑賞…自閉症の姉を持つ幼い少女が、引っ越し先の団地で、超能力を扱える少年と出会い、それがきっかけで超能力バトルへと発展していくという北欧のサスペンススリラー。ノルウェー、デンマーク、フィンランド、スウェーデンの合作とのこと…母親役の女優さんはそこそこ有名な人らしいが、他はよく知らない役者さんばかりだった。しかし、とにかくメインの子供立ちの演技がハンパない…みんな現地の映画賞で主演女優賞、主演男優賞にノミネートされてる！円盤はブルーレイのみリリースされてるみたいだ。

両親、自閉症の姉アナと共に団地へ引っ越してきた9歳の少女イーダ…いつも両親がアナばかりを気にかけているのでどこか不満気。1人で外に出かけ、団地内で遊んでいる時に…同年代の少年ベンと知り合い、一緒に遊ぶように。ベンは物体を動かす特殊な能力を持っていて、イーダに披露…イーダはベンの能力に興味津々だ。一方、自閉症のアナも、団地に住むアイシャという少女と出会っていた…アイシャは言葉が喋れないはずのアナと感情や思考が共有できる能力を持っていた。次第に4人は一緒に行動、互いの能力を連携させるようになるが…。

映画公式サイトのイントロダクションに“大友克洋の「童夢」にインスピレーションを得た”と書かれていた…恥ずかしながら「童夢」をちゃんと読んでないんだけど、「AKIRA」の鉄雄味は感じるなって思ってたら、やっぱり大友克洋に影響を受けていたのか。10年ちょっと前かな？モキュメンタリーが流行った頃…高校生に超能力が覚醒する「クロニクル」っていうのがあって、あれもやっぱり大友克洋っぽい描写で話題になっていたのを思い出す…要は子供版「クロニクル」みたいな内容なんだけど、映画としての雰囲気があり、子供ならではの残酷さがよりエグいのよ。

主人公一家が、家族で団地に引っ越してくる…メインヒロインの女の子には自閉症の姉がいて、どうしても両親の愛情が姉に傾き気味なので、いつも不満を抱えている…だから、終始、仏頂面なことが多い。姉がまともに反応しないことをいいことに、親に隠れて、ちょっとした意地悪なんかもしちゃう。これが大人だったら、ただの陰険な人間なんだけど…まだまだ無知で幼い女の子だから、仕方がないなと、最初はそういう気分で見ていたんだけど、同年代の子供たちとの新たな関係性を踏まえ、段々と無知だけじゃ済ませれない、シャレにならない展開へとなる。

物語が始まると、序盤で急に…超能力という概念が出てきて、びっくり。しかし、幼い子供の視点で描かれるので、興味本位が勝って、自然に受け止めちゃう…そこの見せ方が巧いんだろうね。そういう世界観の話だって、見てる側も知らないうちに説得されてしまうんだ。劇中で能力を覚醒していく子供たちに比べ、メインヒロインの女の子が、一番普通には近いんだけど、自閉症の姉の存在で、他とは違う感情、感性も持ち合わせている。自閉症の姉が大怪我をしてるのに、痛みを表現できない…それを平然と、時には笑みを浮かべて見ている妹が怖いのよね。

ただし…他の能力者と触れ合ったこと、そこで起きた様々な事件に対処することで、姉との関係性にも変化が出る、妹の成長もちゃんと描かれてはいるんだけど。それにしても、発端になった超能力少年の淡々とした暴走ぶりがなかなか狂ってる。自閉症の姉と、心を通わすことができる黒人の女の子も出てくるんだけど、そんなすごい能力を持っているのに、皮膚疾患を抱えていて、顔に症状が出てしまっている。最初は泥遊びをして、顔が単に汚れているのかと思ってしまった。自分も子供の頃から皮膚が弱く、症状が出やすいので、他人事に思えなかった。

そして、この他人の感情を共有できる、正義感も強い黒人の女の子…自分のコンプレックスなんかもはねのけて、すごく頼もしく見えたんだけど、子供ならではの浅はかさ、そして、子供だから親に逆らえないという立場の弱さ（これは当人じゃないんだけど）も影響し、とんでもない目に遭っちゃうじゃない。あのあたりから、どうなっちゃうんだろうって…。能力もない、親にも頼れない…メインヒロインの捨て身の覚悟。そんな馬鹿なをやっちゃう、子供の危うさがそのままスリルにも直結。地味目の映像表現ながら、最後まで目が離せない超能力バトルやった。

監督：エスキル・フォクト

出演：ラーケル・レノーラ・フレットゥム　アルヴァ・ブリンスモ・ラームスタ　ミナ・ヤスミン・ブレムセット・アシェイム

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