逆転のトライアングル（２０２２年）

ＷＯＷＯＷでエアチェックしておいた「」を鑑賞…カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞したのをはじめ、米アカデミー賞にもノミネート。日本公開前に、メインキャストの1人を演じた若手女優チャールビ・ディーン嬢が急逝してしまったのもニュースになったり…オイラもけっこう注目していたんだけれども、ちょうど日本での劇場公開が、昨年、母親が倒れて入院してしまった時期と重なってしまい、見に行けなかったんだよね。その後はすっかり忘れてたんだけど…ＷＯＷＯＷの放送ラインナップを見て、これ見たかったヤツやんと思い出した。

※最後の方の文章でちょっとだけ映画ラストのネタバレっぽい記述があります、ご注意を！

お互いにファッションモデルで、恋人同士でもあるヤヤとカール…しかし女性のヤヤの方が売れっ子で、収入も多く、最近は些細なことで喧嘩が耐えない倦怠期に入っていた。やがてインフルエンサーとしても絶大な人気を誇るヤヤは豪華客船でのクルージングに招待され、カールも同行することに。他の乗客は、ロシア人のオルガルヒや、会社を売却したIT長者、英国人の武器商人夫婦など、誰も彼も桁違いの金持ち連中ばかりである。やがて船は嵐のせいで大揺れ、客たちは酷い船酔いにうなされる中…通りかかった海賊船に手榴弾を投げ込まれ…。

モデルの兄ちゃんがオーディションに挑むシーンから始まり、その後は、そのモデルの兄ちゃんと恋人らしきねーちゃんが、些細なことで痴話喧嘩する姿を延々と見せる。この倦怠期を迎えているカップルがどうやら主人公のようで…女性モデルを演じているのが、先述した故チャールビ・ディーン嬢。この映画を見る限りは、なかなか美人、水着姿など露出もやや多めでセクシーな女優さんだった。それにしても…クルーズ船が大変な目に遭うっていうわりには、なかなか船が出てこない。見たかった映画って、これであってるのかな？ってちょっと不安になった。

だいぶ倦怠期カップルの関係性を見せられてから…唐突に場面が変わり（物語は章立てで構成されていて、テロップが出るので次のパートに移ったのはわかる）、2人はもうクルーズ船に乗り込んでいる場面へと飛ぶ。その船には、彼女たちの他に、クセが強すぎる金持ちのジジイ、ババアがいっぱい乗り込んでいて…やりたい放題やっている。そして、何事も“チップ＝金”のためだと割り切った乗組員たちが、うやうやしく接客、無理難題に応じて、振り回されている様子が面白おかしく描かれる。他にも酒浸りの船長ウディ・ハレルソンとかいて、なんか嫌な予感。

やがて始まったディナーと共に、嵐がやって来て船が揺れ出す…船に慣れていない乗客たちは、段々と様子がおかしくなり、あちらこちらでゲーゲーとゲロを履き始める。このディナーのシーンに移ってからは、終始、カメラも上に下にと揺れ続ける…沈没映画の傑作「ポセイドンアドベンチャー」を見ているようだ。劇中の阿鼻叫喚地獄絵図と相まって、下手すら映画を見ている観客も“もらいゲロ”しちゃうんじゃないかというくらい、嫌な臨場感だ。このまま続いたら「タイタニック」以上の悲劇、いや喜劇が巻き起こるんじゃないか…そんな期待と不安が膨らんでいく。

と、思っていたら…いきなりの海賊登場、船ドッカーーン！あれだけ船酔いゲロシーンを詳細に描いてたのに、見せ場になりそうな海賊襲撃、沈没シーンはたったそれだけなんかい？まぁ、こういうのが映画的な演出とも受け止められて、嫌いじゃないけどな。気がつけば、あんだけいた個性的な登場人物も半数以上脱落してまして…数えるほどしかいない生存者たちが、どこかの島に流されてしまうと。ここで新たなパートに移り、言ってみればここからが“逆転のトライアングル”の本番なのね。今まで金持ちにこき使われていた便所掃除のオバサンの成り上がり！

そうくるかなどひゃーな展開…お色気担当という映画的なポジションまで逆転、便所掃除のオバサンが妙にセクシーに見える（笑）半ば、予想通り…「めぞん一刻 番外編 一刻島ナンパ始末記」を彷彿とさせるオチに爆笑しつつも、人間、やっぱりわが身が大事…一度手に入れた権力はなかなか手放したくない！あの人の最後の行動なんて見ていると…保身に走る悪徳政治家と一緒やななんて思ってしまったよ。本編は2時間28分の長丁場…正直、最初の25分くらいはどうなることやらと思ったが、そこから先はブラックで、シニカルな魅力を存分に楽しんだ。

監督：リューベン・オストルンド

出演：ハリス・ディキンソン　チャールビ・ディーン　ウディ・ハレルソン　ヴィッキ・ベルリン　ズラッコ・ブリッチ

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