先週の読書:「予言」「文学少女対数学少女」 | 勝手に映画紹介!?

先週の読書:「予言」「文学少女対数学少女」

 

GWも終わりましたね…オイラ的にはいつもと変わらず、家で映画見て、読書するぜって言ってたけど、本数、冊数もいつもとぜんぜん変わらなかったよ。っていうか、読書の方は前回よりも冊数減ってるしな…特に近況報告もないのでとっとと本題に入りますね。そんなわけで、先週は2冊ほど読了…両方とも古本で入手した本です。大沢在昌センセイのハードカバー単行本は、奥付を見ると2023年12月31日発行、昨年末に出たばかり、まだ半年も経ってないんだけれども、近所のブックオフで390円(前だったら110~220円で買えたのになぁ)で発見しました。

 

その在昌センセイのハードカバーが1冊目に読んだ「予言」です…過去にも読んでいる“ボディガード・キリ”シリーズの3作目。2作目を読んだ時は1作目の内容を忘れてたので再読して挑戦したけど、今回はどちらも再読しなかった。詳しい素性はよくわかってないが、とにかく凄腕のボディーガード“キリ”が、予言めいた機密文書の争奪戦に巻き込まれ、諜報機関、ヤクザ、公安刑事相手に大暴れ。キャラ造形は面白く、テンポもいいんだけど…若干、物足りなさが残るのも、このシリーズならではか?1作目よりは徐々に面白くなってるかなとは思うけど…。

 

2冊目は初めて読んだ中国のミステリー小説「文学少女対数学少女」…数年前の“このミス”の海外編で13位にランクインしててタイトルを覚えていた。文系と理系の女子高生が出てくるミステリーで、正直…小難しい理系部分はさっぱりなんだけど、その辺をあまり気にしないで読むと、意外と日本のミステリーにも近く、ラノベ感覚でも読めちゃったりもする。今回はどちらもまぁまぁ面白く読めたかな?「文学少女対数学少女」もお薦めなんだけど、発刊から年数が経ってるので、新しさを優先…今回の“推しの1冊”は在昌センセイの「予言」の方を選びますね!

 

 

 

2023年12月発行の大沢在昌著「予言」…近所のブックオフで古本390円入手、わりと新し目のハードカバー単行本、もちろん現段階では未新書化、未文庫化です。「獣目」「爆身」と、過去にも読んでいる“ボディガード・キリ”シリーズの3作目。国際情勢、世界情勢を物凄い的中率で予測する機密文書“ホワイトペーパー”…その執筆者であるシンクタンクの中国人リーダーが亡くなり、家族が所有していると思われる、残りの“ホワイトペーパー”を巡る熾烈な争奪戦が勃発。各国諜報機関や実業家、ヤクザ、公安警察などが血眼になって行方を追いかけるが…。

 

今回キリは、前作「爆身」でも登場した、フィクサーのような謎の老人からの依頼で、“ホワイトペーパー”の在り処を知っていると思われる死んだリーダーの娘の護衛を頼まれる。前述の老人も生前の中国人リーダー、“ホワイトペーパー”と少なからず関係があったのだ。そして老人の直属の部下でもある、元女刑事がキリの仕事を色々と手助けすることになるんだけど…とにかく最初は、方針を巡って対立、というより一方的に元女刑事がつっかかる。元刑事にしては、その女性の言動がやたらガキっぽく、それをからかうキリとの関係がなかなかユーモラス。

 

元女刑事の方は、段々とキリに好意を寄せていってるのが直ぐに伝わってくるのだが、それを見透かしてるのかどうか、キリはけっこう冷たくあしらう。その一方…別件で、キリ自身が住んでいる場所の“地上げ”にも巻き込まれ、その“地上げ”絡みで送り込まれてきた妖艶な女社長と…ムフフな関係になったりもする。この“地上げ”の話は、冒頭で同時進行しつつも…なんだか妙に中途半端な展開で終わってしまった感があり。将来の続編への伏線になってるのかどうかは不明だが…今までのパターンからいって、次作のネタにはならないと思うけどね。

 

ただし…女社長は意外な形で、その後も物語に関わる。キリ、元女刑事、女社長の奇妙な三角関係にドキドキ…続編があるなら再登場願いたい。“ホワイトペーパー”争奪戦のさ中に複数の殺人事件も発生、その真犯人をあぶり出して直接対決に挑むのがクライマックスとなる。オチに向かうまでの二転、三転はスリリングなのだが…最後が若干、味気ない。今まで読んだシリーズの中では、キリ以外の登場人物(新キャラ)も一番魅力的だったように感じたので、そこは満足度高めです。前作で出番がなかった運転手の大仏さんが再登場したのも良かったな。

 

 

 

2020年12月発行、陸秋槎著「文学少女対数学少女」を読了…2021年末発表“2022年版このミステリーがすごい”の海外編で13位にランクインしていた、中国のミステリー小説。今まで中国のミステリーって、あんまり読んだ記憶はない、いや全然記憶にないんだけど、タイトルや表紙に惹かれるものがあったので、気になっていた作品ではある。文字通り、自分で小説を書く文系女子と数学の天才である理系女子…共に女子高生の2人が出会い奇妙な友情関係を紡ぎ出す。もう1人、2人の共通の友人である同級生がいて…その3人がメインキャラクター。

 

基本、文系女子が執筆、考案した作中作の推理小説の謎を、理系女子が小難しい数式や公式に照らし合わせて解き明かしていったりする連作短編。場合によっては作中作を提示する人物が入れかわったりすることもあるし…その延長で、作中作だけでは終わらず実際の事件が起き、同じような方法で真実に迫っていくこともある。各短編の細かいストーリーを説明するのは面倒なので割愛、それぞれのテーマとなっている数式、公式、学者の名前・偉業なんてチンプンカンプン。正直なところ…理系の小難しい部分はほとんど理解できてないんだよね(汗)

 

でも、それはつまり作中の文系女子と一緒なんですよ。本人も“よくわからない”って諦めモードだし、相手の理系女子も“わかんないでしょ?わかんなくていいよ”って上から目線で突き放すし…だから実は主人公と同じ気持ちで読めるってことでもあるんだ。もちろん、理系の人が読むとまた違った面白さが味わえるんだと思うけど、自分みたいに数学が苦手な(算盤やってたから単純な計算はまぁまぁ得意なんだけど…証明だなんだかんだっていうのはさっぱり)人間が読んでも…そこまで難しいミステリーではなかったので、気軽な気持ちで読んでみてください。

 

数学の専門用語なんかがいっぱい出てきて、一瞬、訳がわからなくなりかけるんだけど…ひとつの短編なんかは、“作者が神様だ”という、推理小説とはなんぞや?の答えを鮮やかに導き出していて、なるほどと気持ちよく納得して読み終われた。キャラクター造形なんかはラノベに近く…それでいて、あとがきなどでも触れられているが、法月綸太郎や麻耶雄嵩、綾辻行人、米澤穂信といった日本人作家の影響を受けていると著者本人が公言、中国名の登場人物の名前を覚えづらいという以外は、日本のミステリーの雰囲気にもけっこう近い印象を受けた。






 

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