先週の読書:「還らざる聖域」「深夜の博覧会 昭和12年の探偵小説 」 | 勝手に映画紹介!?

先週の読書:「還らざる聖域」「深夜の博覧会 昭和12年の探偵小説 」

先週の読書:「還らざる聖域」「深夜の博覧会 昭和12年の探偵小説 」

 

今月はなんとか週イチで読書ネタの更新ができている…この調子で頑張って読書の時間をつくろうと思う。でも、更新はできたけど、冊数は前回よりも減ってしまったな。ということで…先週読了できたのは文庫本が2冊、どちらも古本入手品(ネットオフでまとめ買いしたもの)。まず1冊目は…樋口明雄センセイの「還らざる聖域」、屋久島に北朝鮮が攻めてきて、警察署が襲撃され、一部の一般人も虐殺されてしまうんだけど…騒動に巻き込まれてしまった山岳救助隊員や山岳ガイドが、北朝鮮の特殊部隊相手に、山の中でバトルを繰り広げるって感じの話です。

 

2冊目は辻真先センセイの「深夜の博覧会 昭和12年の探偵小説 」…今まで辻真先センセイはあまり読んだことがなかったんだけど、本書を含む“昭和ミステリ”シリーズというのが評判になってて、前から気になっていた。昭和12年、“名古屋汎太平洋平和博覧会”にやって来た主人公の少年(著者の他のミステリ作品で探偵役を務める有名キャラだそうだ)が奇妙な出来事に遭遇するんだけど、想像以上にエログロでカオスな内容であり、時代性が色濃く反映され、戦争の非情さまで描いたとんでもない怪作でした。ただ序盤は、若干読みづらさもあったかな?

 

どちらも面白かった、読み応えがあったし…なんだったら個別の感想の長さは…「深夜の博覧会 昭和12年の探偵小説 」の方が長々と語っているんだけど、読みやすさという点では樋口センセイの作品の方が、テンポもあって自分には読みやすかったかな?あと発刊日もこちらの方が新しいからな…だから、今回の“推しの1冊”は樋口明雄センセイの「還らざる聖域」にします!「深夜の博覧会 昭和12年の探偵小説 」の方も…普通にミステリファンの間でかなり評判が良いので、今さらオイラが偉そうにお薦めするまでもない、たぶんみんな知ってると思うし(汗)

 

 

 

2023年7月発行、樋口明雄著「還らざる聖域」…2021年6月に単行本で発刊されたものの文庫化。著者の代表シリーズでもある“南アルプス山岳救助隊K-9”とは異なる山岳小説の新シリーズ(巻末の著者自身の後期や巻末解説で今後のシリーズ展開が示唆されている)…風光明媚な屋久島に、突如、北朝鮮の部隊が侵攻してきて、島が戦場と化す…警察署が襲撃され壊滅状態、部隊が上陸する際に巻き込まれた一般人も犠牲になってしまう。運よく生き延びた警察官兼山岳救助隊員の女性主人公は、とりあえず山に逃げ込み…状況を把握しようとする。

 

一方、仕事で山に入っていた山岳ガイドの男性2人組は…墜落した飛行機に乗っていた北朝鮮の女性兵士を助けるも、彼女自身が攻撃的だったり、その女性兵士を捜索にやって来た部隊と戦闘になったり、大変な目に遭う。他にも、事の成り行きを静観している島民たちが、レジスタンスを組織して、反撃の機会を伺ったり、とある事情で…大っぴらに動けない政府、自衛隊が、ようやく屋久島出身の役人を案内役に潜入チームを派遣したりもするんだけど…。各々の思惑が錯綜しながら、屋久島の日常、平和を取り戻すための奮闘が描かれるわけで…。

 

作中では、攻めてくる敵が北朝鮮なんだけれども、方々で戦争が起きている今現在、日本だって“対岸の火事ではいられない”という、現実的なリアルは充分に感じられる。作中では核も関わってくるので…実際の北朝鮮による核開発・保有問題なんかも頭をよぎるわけよ。なんで、北朝鮮が攻めてきたのかというのが、本作でも“内乱”が起きたのが原因であり、そこへアメリカなど大国の思惑も絡み…事態はいっそう混迷を極める。第三次世界大戦勃発の危機?余計な事にクビをつっこみすぎると痛い目見るぞ日本、大事な時にアメリカは何にもしてくれない。
 

 

 

2021年1月発行の辻真先著「深夜の博覧会 昭和12年の探偵小説 」…2018年8月発行の単行本を文庫化したもの。正直、あまり辻真先センセイの作品は読んだことがなかったんだけど、先に「たかが殺人じゃなか 昭和24年の推理小説」という作品の評判(発刊当時の“このミス”1位)を耳にし気になってたんだよね…ちょうど昨年、そっちの作品が文庫化になった時に、読んでみようかなって思ったんだけど…どうやら“昭和ミステリ”と呼ばれるシリーズものの2作目だとわかったので、まずは1作目の本作から順番に読んでみようと思って、古本で探していた。

 

ちなみに本シリーズで探偵役を務めている那珂一兵という登場人物は、著者の他の作品にも登場する有名なキャラクターらしい…でも、自分のような“俄か”が本書「深夜の博覧会」から読み始めても、特に登場人物について理解できないというような問題はなかったですね。物語の舞台はタイトルにもあるように昭和12年、銀座で絵描きを生業にして生活している少年・那珂一兵が、懇意にしている新聞社の女性記者に同行し、“名古屋汎太平洋平和博覧会”へ向かうことになり…現地の名士である伯爵の世話になり、屋敷に滞在しながら取材を続けることに。

 

やがて伯爵の友人の満州の大富豪とも知り合いになるんだけど…そのせいで、奇妙な出来事に関わることになる。実は、東京にいる一兵の知り合いの女の子が事件に巻き込まれ、被害者になり、それと同時にその女の子が会っていた姉が行方不明になってしまうんだけど、その姉というのが、満州の富豪のお妾さんという事実もあって、その富豪が事件へ関与しているのではないかという疑惑がもたれる。しかし事件が起きた東京と名古屋では距離が離れすぎていて…。とにかく作中で被害者が巻き込まれた事件は、かなり猟奇的でミステリアスなものなんだ。

 

自分的には、作中で事件が発覚する場面のインパクトが物凄く強烈だったので、何が起きるか、起きたかの詳細は割愛することにする。というのも、本書の舞台は昭和12年…日本が戦争に巻き込まれるちょっと前の話なわけで、その当時の文化・風潮なんかも色濃く反映された話や話題も多く、無知な自分なんかが読むと小難しく感じる部分もいっぱいあったんですよ。なんだけど急にその展開を読まされて、“うわー、いったいどうなってるんだ?”と本当にびっくりしたんだよ。そこからはけっこう面白くなっていって…わりとスムーズに読み進められたんだよね。

 

些細な主人公の言動なんかが後の展開の伏線になってたり、ミステリーらしい奇抜なトリックもあったり、その謎解きシーンにハラハラドキドキし、時代性も非常に深く関わる、事件のなんともいえないマッドでカオスな真相、オチにも驚愕するのだった。作中でもその言葉が使われていたが、想像以上にエログロ趣味も満載…いい意味で如何わしい作品でもあった。関係者のその後を描く丁寧なエピローグ(跋文)で温かい気持ちになるも(主人公が最後まで悩んだあの謎の意味はその前の段階で見抜けたけど)、さりげなく戦争の悲劇、非常さも描かれていた。






 

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