ＤＯＧＭＡＮ ドッグマン（２０２３年）
【鑑賞日：2024年3月11日】
地元シネプレックスの初回上映時間が昼過ぎという中途半端な時間だったせいで、初日鑑賞を断念していたベッソンの新作「DOGMAN ドッグマン」をようやく見てきた…公開されたばかりなのに上映のタイムスケジュールがもう変更されていて、今日は午後1時過ぎという、さらに中途半端な時間になってたんだけど、なんとか都合をつけて見に行ってきた。確か、初日から…昨日までは1日3回くらい上映があったはずなのに、今日からは1日2回しか上映がない…一昔前はフランス映画界の寵児なんてもてはやされていたベッソンも、今はこんな扱いなのか…。
ある晩、女装姿の不審な男が運転する車が警察に止められ…荷台には十数匹もの犬が乗せられていた。男は警察に拘留されることになったが…詳細を語ろうとせず事情聴取に難儀。そこでシングルマザーの精神科医・エヴリンが呼ばれ、男との対話を始める。ダグラスと名乗った男と少しずつ距離を縮めていくエヴリン…彼がどのような経緯で犬を愛し、女装にめざめていったのか、想像をはるかに超える壮絶な人生を語り出し…それは犯罪の告白へと繋がっていく。エヴリンはダグラスの語る言葉をを真摯に受け止め、時には冷静に諭していくのだが…。
ネットで同じことを仰っている評論家センセイもいたんだけど…「ジョーカー」の雰囲気にも似ている。最下層の虐げられた人間が、耐えに耐え抜いた挙句に…やべぇ方向にブチ切れちゃった映画。そこになぜか“犬”という押井守チックなフェチをぶっこみ…しっかりとベッソン映画に着地していく。犬が大好きすぎちゃって、犬と意思疎通ができるようになっちゃった女装も大好きオジサン、通称“ドッグマン”…訳あって警察に拘留中なんだけど、接見にやって来た精神科医との会話の中で紐解かれる壮絶な過去などは、ベッソンに珍しく脱中二病感もあったよね。
かなり不幸な家庭環境にあった幼少期の“ドッグマン”…父親や兄から虐待を受けており、闘犬目的で飼われていた犬と同じ犬小屋・檻の中に放り込まれて生きていたんだよ。で、もともと犬が大好き、っていうか犬ぐらいしかすがる相手がいなかったので、檻の中で身を寄せ合ってるうちに、意思疎通ができるようになっちゃったと。大人になった“ドッグマン”…女装大好きオジサンを演じたケイレブ・ランドリー・ジョーンズも抜群のインパクトはあったが、幼少期を演じた子役の男の子も印象に残る…あの“死んだ魚の目”のような絶望的な表情がなんともいえない。
そんな絶望的な状況から這い上がり…人生をやり直そうとするなけど、現実はそんなに甘くなかった展開。彼には“犬”という支えがあったので、苦汁を味わっても、その都度再起はするんだけど…どうして、警察のご厄介になってしまっているのかが、徐々に明らかになっていく仕掛け。“ドッグマン”の年上女性への初恋が明かされるエピソードなんかは、“ようやく春が来たのか”と、まるで親のような気持ちで、嬉しくなる半面…でもな、そう簡単に成就はしないだろうという危うさなんかも一緒に伝わってきて、案の定…どん底に突き落とされ、やっぱりなと思った。
あの初恋エピソードなんかは…もっとねちっこいストーカー気質が開花してしまうような展開でも良かったのになと、ちょっと思ったよね。それこそ犬を使って、相手女性の幸せを踏みにじるとか、絶対にそうなるんだろうなって期待も抱いていたんだけど…そこまでの変態ぶりには振り切ってなかったのね。ベッソン…やっぱり心はまだ中学生どまりか？（笑）このあたりを境にして、後半はだいぶ中二病ぶりが復活してきた部分もあり…完璧に“御犬様映画”と化していく。最後は「レオン」のオープニングばりの銃撃戦に、やっぱり“御犬様”を絡めたアレンジで魅せる。
最近のベッソン映画…特に脚本のみで参加しているような作品は、幼稚だ、中二病だとさんざん蔑むことも多かったんだけど、近年のベッソンが関わった作品の中では、一番面白い作品に仕上がっていたんじゃないかな？ただし、過去の回想で物語が進んでいくことが多いので、ひとつ前の監督（兼脚本）作品「ANNA/アナ」同様、時間軸がいったりきたししすぎるのが…ちょっと気になったかな？あのオチを見せるためとか、いろいろと理由はあるんだろうと思うけど…もう少しすっきりと整理してあっても良かったかも。アクションは少なかったけど充分満足できた。
監督：リュック・ベッソン
出演：ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ ジョージョー・T・ギッブス クリストファー・デナム クレーメンス・シック
【最後の銃撃戦が「レオン」の冒頭の銃撃戦に似てたよね…】
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