先週の読書:「帰去来」「追想の探偵」「ビタートラップ」 | 勝手に映画紹介!?

先週の読書:「帰去来」「追想の探偵」「ビタートラップ」

先週の読書:「帰去来」「追想の探偵」「ビタートラップ」

 

ここ数週間は…順調に積読本を消化できてるかな?今は、自分が読みたかったものが、けっこう手元にあるというのも影響しているかも。最近は、近所のブックオフが、値上がりした上に、品揃えもあまりよくなくなってきて(紙の本を読む人が少ないので、古本で出回る量も少ないのかもしれないね)…前ほど頻繁に出向いてないんだけど、その代わり、ネットの古書店でまとめ買いするという方法にシフトチェンジしている。中にはブックオフより高いものもあるんだけど、安いものを組み合わせ、セールやクーポンを併用すると、1冊あたりがけっこう安く済むのよね。

 

結果的にブックオフのリアル店舗で買うよりトータル出費を抑えられる。まとめて買うと送料も無料になったりするし、これだと…比較的新し目のもの、歯抜けになっていたシリーズものなんかが入手しやすいなってことを、今頃になって発見した。ただ…ネット書店もね、タイミングで、けっこう在庫のあり、なしが激しいので、送料無料になるまであと100円なのに、読みたいものの最後の1冊がなかなか見つからなかったりするのがもどかしい。でもね、ブックオフのリアル店舗だと…読むかわからんものまで衝動買いしちゃうこともあったから、今の方がいいかも?

 

そんなわけで先週は3冊ほど読了できた…いつもは掲載写真の左から読んだ順に並べることが多いんだけど、大きさ、厚さの関係で、うまく並べられなくて、写真の右側から、読んだ順番に並んでます。どうでもいい事だけど、自分なりの規則を変える時は、なんか文章で説明しておかないと落ち着かないのよね。まずは1冊目…大沢在昌センセイの「帰去来」。単行本→新書→文庫と出ているので、最初に出たのはけっこう前だけど、読み逃してた。殺人事件を追ってた女刑事が、パラレルワールドに飛ばされ、そこでも犯罪者と対峙するSFハードボイルド。

 

2冊目は月村了衛の「追想の探偵」…人捜しが得意な特撮雑誌編集長が、取材や許可取りのために、音信不通の業界関係者を捜す連作短編。作中のタイトル、固有名詞は架空のものばかりだが…元ネタはアレかな?と想像しながら読むと意外と楽しい。3冊目も月村作品「ビタートラップ」…地味なバツイチ公務員が、付き合ってる中国人のカノジョから“実はハニートラップなんです”というカミングアウトをされ、右往左往する姿をユーモラスに綴った恋愛×諜報サスペンス。カノジョは本当にスパイなのか?結婚前提に付き合ってもいいのか?みたいな話。

 

一番、読み応えがあったのはやっぱり在昌センセイの「帰去来」なのだが…このブログの本来のジャンルが“映画”という点を考慮すると、月村センセイの「追想の探偵」が一番のお薦めかもしれない。というのも、巻末解説でも書かれているんだけど、ヒロインのモデルになっているのが…かつての映画秘宝(洋泉社時代)の姉妹誌“特撮秘宝”の実在する人なんだって。だからね、架空のネタではあるけど、映画業界の内幕ものとしても読めるところが少なくてもある。ということで、今回の“推しの1冊”に選んだのは「追想の探偵」です!ぜひ読んでみてください!

 

 

 

2022年2月発行の大沢在昌著「帰去来」…2019年1月に単行本、2021年に新書で出ていたものの文庫化。正直、タイトルからどういう作品なのか想像しにくかったんだけど…SFハードボイルドだったんだね。捜査中に殉職した父親と同じ警察官になったヒロインが、連続絞殺事件を追いかけ…張り込みをしている最中に、犯人と遭遇、襲われて死にかかるんだけど、その瞬間に…なぜかパラレルワールドに飛ばされてしまい、その飛ばされた先でも、ヒロインは警察官…しかもかなりやり手の警視の位で、悪党からも恐れられるような存在だった!

 

一応、自分がいままでいた“現代日本”にも似ているんだけれども、文化や文明が全く異なり、飛ばされた世界にいたもう1人の自分(異世界にいた方は現代日本に飛ばされたのか?主人公の視点では居所、生死が不明)になり切るのもかなり苦労を強いられる。なんとかパラレルワールド側の部下(元の世界では元カレ…途中から事情も理解する)の力を借りて…その世界で生きながらえながら、本来の自分がいた元の世界への帰還方法を探そうとする。文庫で600ページ超えなので、なかなかのボリュームだったが、さすが在昌センセイ、テンポよく読めた。

 

現代での“事件”も投げっぱなしのまま、パラレルワールドに飛ばされてしまい、犯罪者や悪徳警官相手に命のやり取りをしなければならないので…もし無事に帰還できても、現代の事件は未解決で終わってしまうんじゃないかなんて、心配になってたんだけど…ちゃんとうまい具合にみんな処理します。序盤は、どうなることやらって思ってたけど…後半で色々なものが一本に繋がっていく感じはなかなか爽快だった。パラレルワールド側のヒロインは、悪党に恐れられ、同僚には疎まれ…と、どことなく「新宿鮫」の鮫島が、そのまま女になったような設定だったな。

 

 

 

2020年5月発行の月村了衛著「追想の探偵」…2017年4月に単行本で発刊されたものの文庫化。タイトルに探偵と書かれていたので、探偵が主役だと思っていたが…主人公は人捜しが得意な雑誌編集部の編集長だった。追想というやんわりとした言葉のイメージから…日常系ミステリーなのかなとは漠然と思っていたが…そっちは、まぁ、ほぼ予想が当たった。弱小出版社の特撮専門雑誌で編集長を務めるヒロイン…編集長とは名ばかりで、アルバイトと外注ライターをうまく使いこなしながら、実質1人で誌面を回しているんだけど…彼女の特技が人捜し。

 

取材やインタビューのほか、昔の写真や資料の使用許可を本人から得るため、しばらく表舞台に出てきていない人物に直あたりすることがしばしあり…まぁ、それが雑誌作りの中でも、難関中の難関。そこがクリアできないと…企画がボツになってしまい、売上や会社存続にも直接影響するわけで、彼女は業界の中でも、その“人捜し”が得意で有名だった。そんな主人公が遭遇する様々なトラブルを描いた連作短編です。全6エピソードで構成されており…最初の2つは80~90ページとやや長め、残りの4つは40~50ページとやや短めのものとなっていた。

 

各エピソードの詳細は面倒なので割愛する。作中に登場する特撮映画やドラマ、俳優、スタッフ名などはほとんどは架空のものであった…この辺、この前読んだ同じ著者の「東京輪舞」のように、虚実入り混じったもう少しリアル寄りの作品だったらなお良かったのになとは思う。ただし…それこそ架空タイトルや、作中登場する関係者の逸話などは、“もしかしてあれが元ネタか?”なんてものも色々とありまして、想像しながら読むとそれなりに楽しかったけどね。たとえば…“封印作品”にまつわるエピソードのヤツなんかは…「ウルトラセブン」のアレかな?とか…。

 

同じく出演者にスパイ疑惑がかかるネタなんかも…前に「私が愛したウルトラセブン」っていう、「ウルトラセブン」の撮影内幕を描いたNHKのドラマで似た話を見たことあるなぁとか。あとは、随所に顔を覗かす特撮豆知識みたいなのは桜井浩子(ウルトラマンのアキコ隊員)のYouTubeチャンネルで、樋口さんや庵野さんのゲスト回の対談、会話を見ている時とみたいだったなと。それから…作中では特撮に特化した雑誌ということになってるけど、モデルになってる雑誌が映画秘宝っぽいなと思ったら…秘宝は秘宝でも、姉妹雑誌だった特撮秘宝の方だったのか。

 

それにしても、何の気なしに読んでる雑誌記事…情報量が少なく、掲載写真がショボかったりすると、読者として文句の1つや2つも言いたくなるところだけど、こういう背景を知ると、ライターさんや編集者さんの苦労もちゃんと理解しないといけない、興味がない特集やコーナーとかは直ぐ読み飛ばしがちだけど、ちゃんと一字一句、しっかり読んであげなきゃなって気分にもなる。よくYouTubeの「わしゃがなTV」でもマフィア梶田や中村悠一が、昔のゲームをプレイしたくても許可取りが大変でってこぼしてるけど…雑誌作りにも同じようなことが当てはまるんだな。

 

 

 

2021年11月発行の月村了衛著「ビタートラップ」…現段階では、新書化、文庫化はまだされていない模様。農林水産省に努めている地味な主人公が、中国人の恋人から…“実はハニートラップなんです”というまさかのカミングアウトをされ、諜報の世界へと引きずり込まれる羽目になる。恋人は…中国国家安全部からの命令で、渋々スパイをやってるが、主人公に対する気持ちはホンモノだとも断言。しかし、主人公はその言葉を、ハイ、そうですかと素直に受け止めることができずに大いに悩む。自分の彼女に対する気持ちは、ホンキだったのだろうか…?

 

とりあえず中国に“任務”がうまくいっていると思わせるため、表面上は問題なく恋人関係を続けていると装い、恋人の提案で同棲まで始めることになるが…今度は日本の公安警察が接触してきて…逆に恋人を監視するよう命じられる。どうしたらいいのか、答えを出せずにいる間に、どんどんと状況は悪化していく…。ついでに容姿や体につられてズルズル…おまけに料理も巧いから、胃袋だってがっちり掴まれてる。正直、主人公はどう見てもどんくさい間抜けだし、それ以外の登場人物は恋人も含め、主人公の職場の同僚さえみんな胡散臭く見えるんだよな。

 

ホントは“スパイ・諜報”などではなく…単に金銭を狙った大掛かりな詐欺集団に狙われているっていうオチなのではないかと疑って読んでいたんだけど、どうやら自分の推測は間違っていたようだ。一応、サスペンスなんですけど…コミカル、ユーモラスな部分も多く、思いのほかちゃんと壮大な話だったわりに、そこまでの緊張感はなかった。わりと綺麗にオチもついちゃうんだけど、どうせなら毒っ気のあるもうひとひねりはあっても良かったかもしれない。単行本で215ページほど…そこまでのボリュームがあるわけではないので、比較的サクサクと読めてしまう。






 

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