四月怪談（１９８８年）

ＷＯＷＯＷの“あなたの映画館”という視聴者リクエスト企画で…「四月怪談」が放送されたのでエアチェック。人気漫画家・大島弓子の同名タイトル作品を実写化したものだが、原作も未読。タイトルだけは知っていたが、今までちゃんと鑑賞する機会はなかった。今から36年前の旧作のため、ＷＯＷＯＷでも初放送ではなかったものの…自分が加入してからは、タイトルを見た記憶がないので（見逃してた可能性もある）、だいぶ久々の再登場ではないかと。メインキャストに中嶋朋子と柳葉敏郎（2人とも若っ！）、監督はウルトラシリーズも手掛ける小中和哉。

夢うつつで目覚めた女子高生・初子の前に、突然、見知らぬ青年が現れ…“あなたは死んだ”と宣告される。それが夢だと信じている初子は、天国が見れるとはしゃぎ気味だが、青年は初子が本当に死んでいるということを実感させようと、遺体と対面し、悲しむ両親の姿を見せる。それでも信用していない初子は、直前の記憶を思い浮かべ…自分が鉄板に当たって死んだ事実に行き当たる。しかし、そこで青年から衝撃の事実が！本当は間違って死んだと思い込んでるだけで、今なら生き返れるという。初子は戻る前に幽霊になったことを楽しもうとするが…。

幽霊になった主人公が、案内人と共に、現実をさまよい歩きながら…自分と交流のあった人々を俯瞰して見ることで、自分の存在意義なをを見つめ直すことになる。髙橋ツトムの「スカイハイ」に似てるけど…女性漫画家の少女漫画が原作だけに、もう少しポップでファンタジックな要素が強めだった。ジュブナイル的というか…最初は死を宣告されても、あっけらかんとし…どちらかというと自分が幽霊になったことや、死語の世界に興味津々という感じで、幽霊の特殊能力を使ってはしゃぎまくる。アニメ版「時をかける少女」の真琴のような明るさ…アホっぽさだ。

謎の青年ギバちゃんが…“早く自分の体に戻れ！時間が経つと蘇生できない！”って言ってるのに、片思いの男子の日常とかを覗きに行っちゃう。やってることは「インビジブル」で透明人間になったケヴィン・ベーコンが、おねーちゃんの家に忍び込んでいやらしいことしちゃうのと同じ発想。それをやってるのが女子高生だってことで、変態ではなく、ギリ…可愛く見える。せっかく死んだのをなかったことにしてくれるって言ってるのに、生き返れなくなる危険性をはらみながら、どうでもいい振舞をするのが、女子高生という奇妙な生態の普遍的な本質を描いている。

学校ではクールで秀才肌の意中の男子生徒が、実はパソコン、アイドルオタクで…母親のことをママと呼び、駆け込んだトイレからズボンをズリ提げたまま出てくる。そういった一連の姿を、主人公が見てしまって幻滅するシーンはおもろかった。っていうか、これが少年漫画とか青年漫画のギャグだったら…男子生徒は“もっといかがわしいこと”をしてるんじゃないかな？という想像が膨らんでしまう…アイドルの写真を見ながら、パソコンでイラストを描いていて、完成と同時にトイレに駆け込むから、一瞬、“ナニしてるの？”って思ったけど、ただ催しただけだった。

後半は…自分は生きる価値無し、死ぬ運命だったんじゃないかと急にネガティブになり、死を受け入れてしまう主人公を、必死に説得し、なんとか生き返らせようと必死になるギバちゃん。告別式が終わり、火葬場で焼かれるまでがデッドリミット…それまでに、主人公は生きたいという気持ちを取り戻せるのか？このままでは本当に逝ってしまうぞ！スタッフクレジットで、“アニメーター 板野一郎”って入ってたけど…板野さん、どのシーンに関わってたの？アニメっぽいシーンなんかあったかな？小中監督とは後に映画「ULTRAMAN」でも一緒に仕事してたよね。

劇中では、地味であまり可愛くないと…自分を卑下するようなセリフもあるが、女子高生役の中嶋朋子は可愛らしくて魅力的だった。そういえば、現代の女子高生が戦中にタイムスリップして特攻隊員と出会っちゃう例のあの映画の中では、娘から“魚臭い！”と罵倒される、疲れ切ったシングルマザーを演じていて…嘘八百なあの映画で、そこだけ妙にリアルだなと感心したものだが（笑）、この女子高生を演じていた女優さんが、あのシングルマザー役が似合うようになるという、時の流れも思い知らされるよね。36年前だもん…ギバちゃんも初々しいわけだ（笑）

監督：小中和哉

出演：中嶋朋子　柳葉敏郎　角田英介　新井昌和　原彩子　寺田農　山口果林　小沢仁志

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