マッシブ・タレント（２０２２年）

ＷＯＷＯＷでエアチェックしておいたニコラス・ケイジ主演の「」を鑑賞…ニコラス・ケイジが本人役を演じるアクションコメディだというのは聞いていたが、タイトルからいったいどんな作品なのか想像できなかった。そうか、雰囲気的にはジャン＝クロード・ヴァン・ダムが本人役を演じた「その男 ヴァン・ダム」とかに近いかもしれないな。最近のニコラス・ケイジ映画って…数はしこたまあるけど、出来不出来の落差も大きく、世間での評価と自分の好みも食い違うことがしょっちゅうなのだが…いや、これは評判通り、ここ数年で一番良かったかも。

ハリウッドスターのニコラス（ニック）・ケイジは、四六時中、映画のことばかり考えているので…私生活はハチャメチャ。多額の借金を抱えた挙句、妻とは離婚、娘にも愛想をつかされる。今度こそ役者を辞める…そう決意した矢先に、マヨルカで富豪のパーティーに参加するだけで100万ドルが貰えるという仕事が舞い込む。現地に向かったニコラスを待っていたのは、ニコラスの大ファンで映画オタクのハビという人物。ニコラスはハビと意気投合し、映画について熱く語り合うようになるが…その直後、CIAが接触してきて、ハビは武器カルテルのボスだと伝える…。

ビジネスで金持ちのパーティーに参加したニコラス・ケイジ（本人）が、CIAの依頼で正体主をスパイすることになる。前述の通り、本人役のアクションコメディという点は「その男 ヴァン・ダム」みたいだけど…ストーリーに関しては、ステイサムの「オペレーション・フォーチュン」にも似てる。「オペレーション・フォーチュン」は、凄腕スパイのステイサムが、架空の映画俳優を演じるジョシュ・ハートネットを無理やり仲間にし、やっぱり映画好きだった武器商人ヒュー・グラントに接触させるって話…あれもジョシュが本人役だったらより面白かったのにって思ったんだよ。

なんだ、先にニコラス・ケイジがやってたのか（笑）それにしても作り手のニコラス愛が詰まりまくった作品であり、見てる側もどれだけネタを拾えるかというのを試されるよね。のっけから、劇中人物がニコラス主演の映画を見てるんだけど…それが「コン・エアー」だった。他にも「ザ・ロック」や「不機嫌な赤いバラ」の映像が流れる。そして、ニコラスがこれまで出演してきた作品のタイトルが、これでもかと会話の中で飛び交い、ニコラスの大ファンだという富豪が秘蔵するコレクションとして、映画グッズや小道具も登場、本作の中でも重要アイテムとして使われる。

映画が始まってすぐ…スターの日常を描く、映画監督との面談シーンあたりのニコラスの雰囲気が、あのワイルドなモミアゲとひげの影響で、ちょっとウルヴァリンを演じてる時のヒュー・ジャックマンみたいだった。ニコラスもアメコミ好きだから、ちょっと意識してる可能性はあるかな？とか勘ぐってしまう。たまに、怒りをあらわにし、エキセントリックになったりするところは…「スネーク・アイズ」の悪徳刑事リック・サントロや「フェイス／オフ」のキャスター・トロイを彷彿とさせる。一番好きな映画は「フェイス／オフ」と語るシーンもあり、ジョ・ウー張りの二挺拳銃も再現だ。

現実のニコラス・ケイジが、映画業界からの引退を示唆なんて話を、昨年末にネットニュースで見かけ…病気を理由に引退してしまったブルースに続き、お前もかという気持ちになった。一時は、ハゲラス、ハゲラスと馬鹿にしたこともあったが、それが事実なら、ちょっと寂しいなと思う。ジャッキー・チェンや宮崎駿のように“辞める辞める詐欺”の映画人も数多くいるわけで…ニコラスも引退を撤回する可能性だって無きにしも非ず、生涯現役を貫いてほしいよ。だって、この映画は…“まだまだ映画スターとして頑張るぞ”と、ニコラスが再起する話でもあったからね。

監督：トム・ゴーミカン

出演：ニコラス・ケイジ　ペドロ・パスカル　シャロン・ホーガン　アレッサンドラ・マストロナルディ　デミ・ムーア

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