ヘルドッグス(2022年) | 勝手に映画紹介!?

ヘルドッグス(2022年)

ヘルドッグス(2022年)

 

【鑑賞日:2022年9月16日】

 

公開初日の「ヘルドッグス」を地元シネプレックスの会員デーで見てきた…オイラも大好きな深町秋生センセイの小説「ヘルドッグス 地獄の犬たち」を映像化したもの。映画化が決まった時に、監督が原田眞人、主演が岡田准一と聞き“一抹の不安”が…原田眞人は好きな作品と嫌いな作品の落差が大きく(偉そうなことを言ってるけど2008年の「クライマーズ・ハイ」以降、あまり見てないかも?)、岡田准一も演技とかが嫌いなわけじゃないんだけど、バックに“ジャニ”の影がチラつくので、原作を知ってると、この題材をどこまで“本気”で撮れるのかなと…?

 

出月梧郎は交番勤務の警官時代に…残忍なスーパー強盗事件に遭遇、その事件で顔見知りの知人を亡くす。以来、警察を辞め、自力で犯人を捜し出し、粛清を行ってきたのだが…最終的に警察に捕まってしまう。しかし、元警察官という経歴を買われた出月は、兼高昭吾と名を変え、関東最大のヤクザ組織・東鞘会へ潜入捜査することになる。現在は武闘派・土岐勉の右腕として、サイコボーイと呼ばれる室岡秀喜とコンビを組み、数々の汚れ仕事をこなしていた。そんなある日、兼高と室岡は東鞘会の若きトップ、十朱義孝のボディガードを任されることに…。

 

導入部は、だいぶ違うな…小説では、初恋の相手が巻き込まれたことで、主人公が警官を志すきっかけとなった過去の“スーパー強盗事件”。映画だと警察官時代の実体験に変更されており…そのせいで、警察を辞め、すでに裏社会に足を踏み入れていた、堅気じゃなくなっていたところ、“元警察官”ということで、潜入捜査官に抜擢されたという設定になっている。小説の方では、ちょっと調べられたくらいじゃ正体がばれないように、記録は抹消されているものの、ちゃんと警察組織には属しているんだよね。映画的に理解しやすくするためのアレンジなんだろう。

 

小説では途中で紐解かれる主人公の過去だけど、映画では潜入するまでの過程を最初にちゃんと見せている。その後は、原作の方の冒頭で描かれた、主人公・兼高とサイコボーイ・室岡コンビによる“襲撃”シーンへ繋がる…チャカなんか使わずに、レンチとドライバーで相手をフルボッコにして仕留めるという、いかにも深町作品的なバイオレンスアクションが、身体能力高めの岡田と坂口のアクションとともに、けっこう忠実に描かれていて、まずまずといったところ。でも、兼高がたまに素に戻る時の弱さはあまり描かれてない、岡田准一にもゲロはかせろよ(笑)
 

こういうところで、若干、“ジャニ”への忖度が残っているのかなと…。映画でも、わりかし登場人物が多く、関係性も複雑に入り組んでるんだけど…小説より、だいぶスッキリと整理したなという印象はある。一方で、原作では描かれない兼高、室岡に“女がらみ”のエピソードなんかが盛り込んであって、映画独自の展開も。2人の直属の親分である北村一輝演じる武闘派ヤクザの土岐勉、その愛人役の松岡茉優との…え~なにその設定、関係は“聞いてないよ”って感じに色々と驚かされる。あとサイコボーイの室岡も普通にイチャイチャな“ラブコメ”しとるがな。

 

やっぱり主役俳優たちを目当てに見に来る女性客のことも考えた結果だろう。余計なエピソードが増えているので、主人公・兼高を地獄に送り込んだ張本人である、警察組織内部で“潜入捜査”の事実を把握する本当の上司・阿内…ある意味、本職ヤクザ以上にヤクザな男で、小説の方ではめちゃめちゃクローズアップされていて、なんだったら三番手くらいのメインキャラだと思うんだけど、小説に出てきた阿内に関するエピソードはほぼほぼカット。小説の方で訪れる“阿内のピンチ”とか、兼高のその後も左右する、けっこう重要な展開だったんだけどな…。

 

まぁ、そこまで原作至上主義じゃないので…映画独自のアレンジも、十分に楽しませてもらったけど。中盤、敵対組織の人間を拷問にかけたり、死体の処分をしたりする…“処理場”と呼ばれるアジトで繰り広げられる、原作にも登場するアクションシーンがあるんだけれど、このあたりは、原作ファン的に深町テイストがしっかりつまった映像に仕上がっていて、序盤のフルボッコの襲撃と甲乙つけがたい、ベストアクションシーンだと思う。及川ミッチーの不気味さと、吉川晃司のヤバさを兼ね備えたMIYAVI演じる会長、その秘書・熊沢が思いのほかかっこよかった。

 

やはり原作に似たシーンがあったんだけど、原作よりも“酷さが倍増”している、会長自ら兼高たちのボディガードの素質を見極めるシーンはけっこう良かったよね。ある意味、あっちの方が深町っぽい(笑)前述の“処理場”にも関することなんだけど、会長を狙ったヒットマンあたりも、ちゃんと原作に近いテイストで描写されていたので、あの辺もけっこう満足度は高めかなと。刺客の襲撃を受けるシーンは、“ここ、絶対にくるところじゃん”って思わず、よりスクリーンを注視し、身構えてしまった。そうだ、何か所か字幕が出るんだけど、縦字幕なのが読み辛かったな。
 

潜入捜査が成功するかどうかより、BLっぽさもある兼高と室岡の関係性をクライマックスにもってくるなど、小説とは違う展開もけっこうあったけど、概ね深町秋生が小説で描いた世界に近いものは見れたかな?でもさ、久しぶりに原田眞人作品をちゃんと見たが、相変わらずの“親バカ”も健在であった。演技がうまいわけでもない息子がちゃっかり出演していて(しかもセリフもあって、なんかちょっと目立ってる)、作品の編集まで手掛けている。編集マンになったって話は聞いてたけど、役者も続けとんのかい、原田遊人!一番、気になったのはそこだった(爆)

 

 

監督:原田眞人

出演:岡田准一 坂口健太郎 松岡茉優 金田哲 MIYAVI 吉原光夫 村上淳 北村一輝 大竹しのぶ

 

 

【原作小説ははこちら…面白いよ!】

ヘルドッグス 地獄の犬たち (角川文庫)

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