勝手にしやがれ！！英雄計画（１９９６年）

ＷＯＷＯＷの黒沢清特集（特集はまだ続いてます！）でエアチェックしておいた「」…実際の放送から数日経っちゃったけど、ようやく鑑賞。シリーズ全6作の完結編となる本作…過去にも一通り鑑賞経験があり（VHSの中古ビデオでコレクションした）、今回の特集放送に関しては、5作目までは既に再鑑賞を終えている。哀川翔演じる雄さんと、前田耕陽演じる耕作の、なんとも絶妙な珍コンビが繰り広げる活躍も、とうとうコレで見納めですぞ…。そしてそんな2人を振り回すゲストに寺島進と黒谷友香…ああ、みんな若いなぁ～（笑）

便利屋稼業の藤田雄次と舎弟の吉行耕作は、いつものように由美子からの依頼で、取り立ての仕事をしていたのだが、その際に、逆上したヤクザたちに追いかけられてしまう。しかし、そのヤクザたちが、たまたま通りかかった青年とトラブルを起こしてる隙に、なんとか逃げ延び、事なきを得る。後日、結果的に2人の窮地を救った青年・青柳と再会し、親しくなる。青柳は、とても真面目な性格で、今は…町内に住むヤクザの追い出しに力を注いでおり、なんとなく行動を行動を共にするようになった。そんな矢先に、青柳が銃で撃たれて負傷するという事件が…。

取り立ての最中に、ヤクザに追われるという始まり方は…1作目とシュチエーションが酷似している。今回は、2人とヤクザが追いかけっこを繰り広げてる最中に、ヤクザがゲストの寺島進と遭遇。ぶつかる、ぶつからないで言い争いが始まる…確かに、寺島進の方がぶつかられた被害者なんだけど、相手はヤクザなんだから、普通は無視する。いや、無視してくれて、ホっとするところだと思うんだけど、“ちょっと待て”って呼び止めて、説教をはじめちゃう。結果的に、雄さんたちを追っていたヤクザも矛先を変え、その隙に…雄さんたちはトンズらをこくことに成功。

そして後日…“あの青年に悪いことをした”と、ちょっとは後悔していた2人が、偶然、寺島進に再会…で、話を聞いてるうちに、自然と行動を共にするようになる（本シリーズのお約束の1つ）。寺島進は、1人でヤクザの追い出し（立ち退き）運動をしてて、その騒動に巻き込まれていくんだけど…雄さんたちは、途中で疑問に感じるんだ、なぜこのヤクザを追い出さなければいけないのか？雄さんたちが悩んでる最中に、寺島進は、お得意の“正義論”を振りかざし、賛同者をさらに増やしていた。とにかく、頑なに正論を曲げない寺島進が逆に不気味で、怖いのよ…。

まぁ、その第一印象が、後半の物語に大きく関わってくる。ヤクザにも秘密があり、寺島にも裏の顔が…そして両方の板挟みになった雄さんは、寺島の策略で犯罪者扱いされてしまう！まぁ、このあたりまでは…いつもよりも、ちょっとシリアスだなとは思ったけど、このシリーズらしい、ハチャメチャなウルトラＣがあるんだろうなと想像、期待してたよね。でも、予想をはるかに超えた、衝撃展開になっていくと。今でこそ、この年になるまで黒沢清作品に色々と触れてきたから、この“えっ？”っていう展開を楽しむ余裕があるんだけど、初見時は色々とビックリしたもんだ。

まぁ、一番、解りやすいテーマは…“見た目に騙されるな”だよね。前半では、やたらと正義感を振りかざしていた寺島進が、途中で胡散臭い政治家秘書に転向し、庶民の敵として描かれていくことになる。そんな寺島進の策略にハメられた雄さんたちの運命はいかに？やたらと寺島進が目の敵にしていたヤクザも、本当はただのオジサンだった。劇中では、ある法案が成立したことで、日常、世界感がガラリと一変する…初見の時はまだまだ自分も若かったので、作品を理解しきれていないところがあったが、今見ると、黒沢映画らしい怖さをジワジワと実感する。

中盤…雄さんが行方不明になってしまい、耕作がどこかへ旅立とうと、由美子（洞口依子）たちに別れの挨拶をした後、反対運動をする市民のデモと遭遇したあたりからの、長回しワンカットが、技術的にもすごく、そしてなんともいえない居心地の悪さを感じる。あの構図とかカメラワークとか、いかにも黒沢清映画って感じだよ。結末に向かってのひと騒動、ふた騒動。描かれた内容を事実として素直に受け止めるべきか、なんとなくあの2人の存在自体が、誰かの夢だったなんても想像したくなり…そしてお馴染みの輪唱“森のくまさん”がいつも以上に沁みる。


監督：黒沢清

出演：哀川翔　前田耕陽　洞口依子　大杉漣　寺島進　黒谷友香　清水宏　諏訪太郎　藤谷敏八

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