夢の涯てまでも【ディレクターズカット版】(1991年)
![Until the End of the World (Criterion Collection) [Blu-ray]](https://stat.ameba.jp/user_images/20211005/16/eigasuki/d3/f5/j/o0178022015011366991.jpg?caw=800)
月イチのスカパー、無料放送…ザ・シネマでヴェンダースの「夢の涯てまでも【ディレクターズカット版】」をやってたのでエアチェック。ここ何か月か、頻繁にリピートされているタイトルではあるんだけど、オイラが普通の時にザ・シネマを視聴したり、録画したりする場合は、ウチの兄貴殿が契約しているケーブルテレビ経由になるわけであり、さすがに“5時間の番組を録らせてくれ”って頼むのは気が引けるのよ。放送がある度に、指をくわえて見てたんですけど、まさかBSチューナーで視聴、録画できるスカパーの方で無料放送してくれるとは…感謝しかない!
この作品は、ただでさえ長いって言われてた劇場公開版(約2時間半)でも不満があったらしいヴェンダースが、カットシーンなどを追加し、約5時間の長尺版として再編集した“ディレクターズカット版”として世に出たもの。日本だと過去に、レーザーディスク(夢の涯てまでも・特別版〈ワイド〉)でリリースされていたが、現在は劇場公開版を含め、DVD、ブルーレイのリリースはない。海外だとクライテリオン盤ブルーレイ“Until the End of the World ”がリリースされていて、放送版の冒頭にもレストアの説明があったので、このリマスター版の映像と同じと思われる。
1999年、インドの核衛星が軌道を外れ…地球に落下する恐れがあり、世界滅亡の危機に人類は恐れを抱いていた。恋人ユージーンの浮気がきっかけで、ベニスの友人宅に滞在していたクレアは、そこから当てもない旅に出発…そして、2人組の銀行強盗と接触事故を起こしてしまい、それが縁で、2人から頼まれパリまで現金を運ぶことになったクレア。途中、何者かに追われるトレヴァーという男を車に乗せ、パリで降ろした後に…ユージーンの自宅に身を寄せるも、トレヴァーが金をネコババしていたことに気づき、彼の行方を探し始めるのだが…。
学生の頃に映画自体は1度見ている…劇場公開版をレンタルで見たと思うんだが、レーザーディスクでディレクターズカット版を購入したような記憶もあり(ただし、既に手元にLDがないので、その場合は処分してしまった可能性大)。当時のレーザーディスクの目玉商品だったこともあり、けっこう宣伝なんかも力が入れられていて、それで、その頃のオイラはヴェンダースについての知識もろくにないまま、なんか勢いで買っちゃったのかもしれないな。もうね、内容もサム・ニールが出てて、笠智衆とパチンコ屋も出てきて、SFだったことくらいしか覚えていなかった。
まぁ、その記憶自体は間違っていなかったけどな(笑)今ではすっかり現実が先を越してしまったが…映画の製作、撮影、そして公開時点では10年近く先の近未来を描いたSF作品だった。ただ、まぁ、いわゆる近未来SFというものなので、当時の現実に毛の生えた程度の描写が多く、奇抜なデザインのテレビ電話が出てくるとか、ファミコン画面みたいなカーナビや追跡装置が出てくる程度で、だから逆に、今見てもビジュアル的な違和感は少ない。序盤に関しては…普通に、いやちょっとシュールな感じのロードムービーだなって認識で見ていられるかなと。
ヒロインのクレアが恋人のサム・ニールの浮気が原因で…いわゆる傷心旅行的なものに出かけるんだけど、そこで事故を起こしてしまう!なんと相手は2人組の銀行強盗だった!でも、1人は紳士的、もう1人はやたら陽気な男たちでして、ヒロインは仲良くなっちゃうのよ。で、彼らの代わりに…現金をパリまで運ぶという仕事を引き受ける。その途中で、謎の男ウィリアム・ハートと出会い、最初は善意で車に乗せてあげるんだけど、彼が何者かに追われていたり、運搬中の金をネコババされたりっていう経緯もあって…段々、興味を惹かれていくわけなのよ。
で、最初は…元カレのサム・ニールの部屋に転がり込むんだけど、ウィリアム・ハートを探しに、世界中を飛び回ることになる。もちろん1人では目的を達成できないので、探偵を雇ったりするんだけど…さらに助けが必要になると元カレのサム・ニールにもすがる。で、自分が最初に浮気したくせに、サム・ニールは元カノに未練タラタラで、ヨリを戻したいがために、元カノが求めている男探しに協力するという奇妙な関係性が成り立つ。最初は金で雇っただけの探偵なんかとも複雑な関係、感情が芽生えるんだけど…ヒロインは謎の男の行方を追う以外は眼中にない。
紆余曲折あり、ようやく行動を共にするようになったヒロインとウィリアム・ハート…このあたりから、彼が何者なのか、何の目的があって逃げ回ってる、世界中を飛び回ってるのか、そしてどこへ向かおうとしているのかが徐々に明らかになってくる。一方、ヒロインの眼中に入ってない連中も、彼女たちの行動が心配で、後を追いかける。最終的な目的地に向かうまでに…ヒロインを手助けしたような連中が、みんなくっついてきたり、後を追いかけてきたりして、どんどん大所帯になっていくところなんかは、ロールプレイングゲームみたいだなって思いながら見ていた。
ときどき本編の進行状況を確認するとまだ3時間ある、半分も進んでない…なんて心が折れそうになった瞬間もあるくらい、ストーリーの進みは遅く、登場人物同士のダラダラした会話も少なくないんだけど、途中からはこのダラダラを映画的な心地よさとして味わう余裕も出てくるから不思議。世界をまたにかけたロードムービーなので、いい意味でのダラダラ感と、紀行番組感がマッチ。いつものように、プロジェクターで見てたけど、大画面映えする映像も多く、意外と飽きない。劇場のスクリーンで見たらさぞ壮観な長めだろうが、でも5時間はさすがにキツいかな?
後半はいよいよ物語の核心部分へと入っていく…実はヒロインが恋焦がれたウィリアム・ハート演じる謎の男は、盲人の母親ジャンヌ・モローに、特殊な装置を使って映像を見せるという、父親マックス・フォン・シドーの研究に協力していたことが判明…さらに父親は、研究をもっと発展させ夢を記録するという壮大な野望(?)も持っていたと(だから怪しげな人間に追われてもいた)…それまで世界観の飾り程度でしかなかったSF要素が、一気に本格化、そっち系の話になっていく。今見ると、年代設定にもう少しハッタリをかましてもよかったかなって思うけどな。
盲人に映像を転送する、はたまた夢を抽出するなんてあたりのビジュアルは、当時の最先端ハイビジョン技術なども駆使された特殊映像が使用されてるんだけど…今見ると、ただ単に不鮮明な画質がサイケに彩られているだけの印象も受ける。ただ、これが…感動的なシーンではアーティスティックな絵画にも見えたり、反対に、研究者の暴走が描かれるくだりではトリップ映像、ドラック映像的なものにも見えたりと、映画的に古臭くなっていないセンスが秀逸だなと。それまでのロードムービー然とした“世界の観光地巡り”とあわせ、映像美として楽しめる。
また…最初にさりげなく提示されていた“人類滅亡の危機”も、急にクローズアップ。落下の危険があった核衛星が破壊された影響で、今度は世界中で“放射能”が蔓延する事態となり、電子機器までが使用できなくなってしまう。メインキャストの色恋、夢の記録という怪しげな研究と並行して描かれる終末論的映画展開…このあたりもコロナ禍の今見た方が、当時よりもより共感できるんじゃないかと思える部分。ヒロインによって引き寄せられてしまった人たちが、コミュニティー内で特にすることもなく、その場でできることをダラダラとやる日常描写が妙にササる。
人類が直面している未曾有の事態での、科学、文学、音楽の在り方、存在理由…そんなものまで付きつけられているように段々と思えてきた。コミニティー内にいる女博士(医者)みたいな人が、しょっちゅうガイガーカウンターを向けて放射能の値を測定。目に見えないだけあって、無頓着な一般人と…放射能に対する意識に差があり、ああ、こういう光景をコロナ禍でも散々見てきたなと。その後、急展開があり、物語は最終局面に入っていくが…現実での緊急事態宣言解除のタイミングもあり、個々の行動というものをこの映画を見ながらもう一度考えたくなった。
ヒロインを中心としたラブストーリーとして見た時に、やっぱり男の視聴者として、一番共感できるのがサム・ニール演じる元カレだった。本を正すと発端はコイツの浮気なんだけど…元カノに対し、未練タラタラの軟弱男が、一連の大冒険を通して、次第に…恋だ、愛だなんて超越した、聖人君主のようなナイスガイになっていくじゃない。やっぱ“サム・ニールが出ている映画”というオイラの記憶にあった印象も、この部分が大きいのかもしれない。一方、ウィリアム・ハートはバカげた本当の目的のために、女も利用するだけ利用する碇ゲンドウみたいな男だった(笑)
使い捨てにされ、最後は廃人のようになるヒロインが哀れだが…サム・ニールの優しさに救われる。まぁ、5時間も見せられて、最後に救いようのない映画だったら、とんでもねーよな(笑)映画が長かっただけに、オイラの感想も、ダラダラとやたらと長くなり、とりとめのない文章になってしまいました、スンマセン。ホント、内容を忘れてたのもよかったんだろうな…この後、どんな展開だったっけ?と記憶と葛藤しながら、5時間近い長丁場を乗り切った。日本パートでは笠智衆以外にも、竹中直人、神戸浩、藤谷美和子などが出ていた…。まったく覚えてなかったよ。
監督:ヴィム・ヴェンダース
出演:ウィリアム・ハート ソルヴェイグ・ドマルタン ジャンヌ・モロー マックス・フォン・シドー サム・ニール
【輸入盤Blu-rayソフトの購入】
Blu-ray Until the End of the World (Criterion Collection) ※日本語収録なし
