竜とそばかすの姫(2021年) | 勝手に映画紹介!?

竜とそばかすの姫(2021年)

 

【鑑賞日:2021年7月16日】

 

シネプレックスの会員デーで細田守の新作アニメ映画「竜とそばかすの姫」を見てきた…なんだかんだで“時かけ”(もう公開から15年経つことに驚き)以降の細田作品は、毎回劇場で見ているんだけど、オイラ的には“時かけ”を超える作品となかなか出会えないなというのが本音な部分もある。「サマーウォーズ」まではそれなりに楽しめたんだけれども…結局、円盤を買ってまで見直したのはその2つだけだ。“時かけ”の円盤はまだDVDの時で、ブルーレイは買いなおしてないんだけど…WOWOWのエアチェックがあるから、今でも定期的に見直している。

 

高知の田舎に住む17歳の女子高校生・内藤鈴は、幼いころに事故で母親を亡くし、それ以来、好きだった歌が歌えなくなってしまった。ある日、友人の別役弘香に誘われ、インターネット上の仮想世界“U(ユー)”に参加。“U"では“As(アズ)”と呼ばれる自分の分身を作り、まったく違う人生を送ることができるのだ。鈴は“ベル”と名付けた“As”になることで、もう一度、歌うことができるようになり…今まで作り続けてきた作品を“U”の中で発表。すると瞬く間に話題になって、一躍時の人に!そんな“ベル”の前に“竜”と呼ばれる謎の存在が現れるのだが…。


現実世界では、目立たない存在が…ヴァーチャル空間で注目を集め、スターダムにのし上がるが、そこでまた色々なトラブル、弊害も生まれ、それに対処することで、今度は現実にも話が飛び火し、友人知人も巻き込み、手を借り、最終的には一皮むけて、人間的に大きく成長しましたよという流れ。ぶっちゃけ…そんなに新鮮味のある話でもなかったよね。現実と仮想空間のギャップだったり、リアル世界のコミニケーションが仮想空間にも影響していったり…それこそ「レディ・プレイヤー1」なんかとも、けっこう似通った話なんじゃないかなって感じたよ。

 

ヒロイン・鈴のヴァーチャル空間での分身“ベル”…容姿は同じ学内の人気者女子そっくりにモデリングされるんだけど、本人のコンプレックスの一つである“そばかす”だけは残っている。だから、結局…ヴァーチャルでも心無い連中からはブス扱いされる。ぶっちゃけ…たとえ、その“そばかす”がなかったとしても、CGで描かれる“ベル”が、劇中で言われるほど、オイラにはキャラクターとしてそこまで魅力的に見えなかった。現実を従来のアニメ表現である2D、ヴァーチャル空間をCGという構成自体、既に“手垢がつきすぎ”なのもそう思ってしまった要因かも?

 

ただね…その“あまり魅力的じゃない”と感じた印象も、けっこう間違っていなかったのかもしれないなと思える瞬間があり、逆に作品の評価が変わった。物語がかなり佳境になったある場面で、分身よりも中身が大事だってなる展開があり…そこでね、2Dの作画で描写された“そばかすだらけの地味な女の子”が本当に美しく、輝いているのよ。イコール、見てくれよりも中身が大事なんだ、ネット上の偽りの戯言になんて執着するなって…テーマにも繋がる。あのCGキャラ、世界があることで、ネットに対する批判や警鐘がメッセージとして受け止められたのよ。

 

公開前からネットなどで囁かれてたけど…“あれっ、これって「サマー・ウォーズ」のパート2?”な感じの内容でしたね。表現的には、“見たことある感”が無きにしも非ずだが…劇中に登場するヴァーチャル空間、使用アプリの名称は違ったので、まぁ、別物という解釈でいいんだろう。どこかに“神木くんが出てくるんじゃないか”って…予想してたんだけど(アニメ映画の主役はもちろん…話題作で隠れキャラ的にもひょこひょこ出てくるじゃない?)、さすがにそれはなかったか。前述作品と同じような題材なんだけど、やたらと重く、けっこう辛気臭い部分も多い。

 

まず、ヒロインの母親の死の原因であったり、その後…ヒロインがトラウマを抱える原因の一つにもなったネット中傷の話題ね…どっちらかというと、オイラなんかは中傷している側の意見に近いというのが正直な気持ちだ。大抵、己の力を過信したヤツが、余計に水難事故の被害を拡大させる…実際にそういうケースが多いじゃん。でもね、そういう正論を…無関係な人間がむやみやたらにネットで吹聴するのもまた害だという事実に、ヒロインのこじらせた現況を見せられることで、気づかされ、あそこは細田守に己を見透かされてる気分になってへこまされた。

 

あとは“竜”の正体にも繋がっていく、核心部分なんかはさらに社会派なテーマがぶちこんであり…メッセージ性が強い展開なんだ。ただね、扱った題材は決して悪いものではないと思うんだけど、オイラ的には納得できない部分も。最後の最後で、すげー大きな壁にぶち当たるのよ。それを攻略するまでのお膳立ては「サマーウォーズ」同様に、実は仮想空間で繋がっていた“顔見知りの人”たちが、現実とネットを駆使して、色々とサポートしてくれるんだけど、実際に行動する段になって、所詮は一介の女子高生でしかないヒロインに、何ができるんだ?ってなる。

 

確実に“変化”を起こしたいのであれば、サポートした人たちの手助けや、見守りも必要なんじゃないか?行動は立派なんだけど、なんか腑に落ちない。あれだけヘビーな問題を解決させるなら、絵空事として描くのであれば、関わった人がみんなで押し掛けるくらいの勢いが欲しかったし、あの状態を観客に納得させるなら、その後、どうなったのかまできっちり描いて欲しかった。あと一番大事なことなんだけど、物騒な事件も多いこのご時世、ネットを介した出会いを、劇的に、綺麗に描きすぎ。他でネットへの警鐘を描いてきただけに、そこが安易すぎて残念。

 

メインの声優さんは…いわゆるオイラたちが認めているような本職の声優さんではなかったが、そこまで下手な人はいなかったな。ただ、まぁ…森川さんとかツダケンさんが出てくると、やっぱ迫力が違う。合唱隊のオバサンたちがなんだかウザイなって思ったら、直太朗の母ちゃん(森山良子)とか、「タッチ」歌った人(岩崎良美)とか、「夜桜お七」歌った人(坂本冬美)とか、「ラジオビバリー昼ズ」の人(清水ミチコ)とか、ガチで凄いオバサンたちだった。見間違えじゃなければ、キャストの下の方に、行成とあ、悠木碧の名前があったような…何の役かわからん。

 

 

監督:細田守

出演:中村佳穂 成田凌 染谷将太 玉城ティナ 幾田りら 森川智之 津田健次郎 宮野真守 佐藤健

 

 

【小説版はこちら】

竜とそばかすの姫 (角川文庫)

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