傷だらけの勲章(1986年)
2018年5月に他界した西城秀樹の没後1年の企画の一環として、WOWOWで放送された「傷だらけの勲章」を鑑賞…33年前に秀樹が主演した東宝のサスペンスアクション。かつて、VHSでソフトリリースされていたらしいが、現在は入手困難。Amazonでもさすがに見つからなかった作品なので、このWOWOWでの放送は相当貴重なようだ。オイラも、本当はWOWOWシネマでやってた別の映画も録りたかったのだが、三番組も重なったので(プライム放送のドラマ版「リーサルウェポン」も録画)その映画の録画をリピート放送に回し、秀樹の映画を優先した。
エジプトの砂漠で…東光開発の社長・倉田が何者かに暗殺された!日本でもニュースになり大騒ぎ!その頃、刑事の都築明と大貫六助は…たまたま街で、助けを乞う女性を発見!その女性は弁護士の秘書で、事務所に族が侵入…弁護士の山本を拷問しているという。犯人と鉢合わせした倉田たちは、銃撃戦になるが、結局…取り逃がしてしまう。やがて被害に遭った山本が倉田社長の弁護士であることが判明。後日、都築と大貫は倉田社長の自宅を訪ね、未亡人の喜枝と面会を果たすが…その直後、倉田の娘が誘拐事件に巻き込まれてしまう!
冒頭からエジプトロケ、出てきたと思ったら、砂漠の真ん中で直ぐに殺される会社社長の鈴木瑞穂…犯人は殺し屋の萩原流行。これがその後に続いていく大きな陰謀の幕開けである。その頃、東京にいる秀樹は恋人の朝加真由美とHに励んでまして…始まって数分でかなり濃厚なラブシーン。朝加真由美は水着の痕がくっきり残る健康的な裸体を披露…おっぱいもバッチり拝めて、ご馳走様って感じだが…秀樹も負けずに脱いでる。恋人に布団をめくられるとフルチン…さすがに股間は写ってないが、そのまま銃を構え、画面に尻を向けて仁王立ち。
真っ裸(まっぱ)で拳銃を振り回すって、どんなプレイじゃ…と思ったら、なんと刑事だった。でも、自宅に銃を持ち帰るって…まぁ、そういう昔ながらの“刑事もの”のスタイルです。ちなみに恋人はテレビ局のリポーター…なんか、これだけでツッコミどころである。秀樹には尊敬する先輩刑事・中村嘉葎雄がいて…コンビで仕事をしている。そんな2人が、街で押し込み強盗の小林稔侍と深水三章と遭遇、まさに犯行をしている最中に鉢合せ、銃撃戦になるも…射撃の名手なのに人を撃つことには抵抗ある秀樹が、発砲を躊躇して取り逃がしてしまうという結果。
悪党なんか、アメリカみたいに射殺しちゃえよと…警察署長の成田三樹夫がご立腹(笑)やがて、刑事コンビは強盗の狙いが…エジプトで殺された会社社長の遺言状であったことに注目。未亡人のちあきなおみに事情聴取をするため、未亡人が住んでるお屋敷へ。ちょうどそこに…小林稔侍たちも現れて、今度は死んだ社長の娘を誘拐してしまう!“遺言状を持ってこいや、おら”と脅される未亡人を見て…この事件は俺たちだけで解決するぞと中村嘉葎雄。一応、人質優先…刑事がドカドカと乗り込んで来たら、犯人を刺激するだけだという理由説明。
明らかに胡散臭い提案だが…後輩の秀樹はそれを信じ、2人だけの捜査が始まる。その時点で、遺言は見つかっておらず、でっちあげの書類と未亡人を囮にして犯人をおびき出す作戦。けっこう簡単にアジトを突き止め、犯人の1人深水三章を射殺するも、またも小林稔侍は取り逃がしてしまう。まぁ、人質は救出できたので、OKらしい。その後も、なぜか小林稔侍逮捕に執念を燃やす中村嘉葎雄…秀樹と遺書に未亡人の家に泊まり込み、ついでに家捜しをして、ついに遺言状を発見!そして、一連の事件の真相を見抜いてしまう…って、まだまだ映画は前半戦。
やっぱりツッコミどころがいっぱいあったんだけど、このあたりまでは…まぁ、アクションものとしてはかっこよく見えちゃったりして、意外と面白いなって思ってたんだけど…日本とエジプトの事件の関連性が判明するなど怒涛の後半戦は…なんじゃこりゃという展開。もちろん、せっかく海外ロケがある作品だ…あまり活躍しない萩原流行と鈴木瑞穂がちょろっと出てきただけで終わるはずがなく、主役の秀樹はもちろん、ちあき、中村、朝加といった主要キャストも海外へ向かう展開が待っている。一介の刑事・秀樹が、エジプト、シンガポール、東京を行ったり来たり。
銃撃戦があり、車の爆破があり、海外ロケと…一見、スケールがでかそうに見えるが…その実、2時間ドラマよりもショボイ事件の真相、予想通りの真犯人。遺言状が絡んでるから、まぁ、そうだろうなと。これ、わざわざエジプトやシンガポールに行く必要があった話なのだろうか?尊敬する先輩刑事・中村嘉葎雄がどんどんトチ狂っていく姿はなかなかシュールで面白く、ルパン三世2ndの名エピソードの1つ「ツタンカーメン三千年の呪い」みたいに、“ファラオの呪いだ”って言い出すくらいのサプライズがあれば、もっと面白いのにななんて思いながら見ていた。
異国の地で、勝手に真犯人を断罪する秀樹…“水戸黄門”や“大岡越前”じゃあるまいし、お前にそんな権限があるのか?っていうか、最初からあいつは“怪しい”と睨んでたんだから、どうせ法律とか無視して殺しちゃうんだし(あんだけ遺言状とか気にしてたのに、もうどうでも良かったよね)、もっと早くに手を打っておけよ。ドンパチでケリを付けるのではなく、あそこはもう少し頭を使って真犯人と対峙して欲しいところ。死人もいっぱい出てるけど、最後は恋人と観光旅行して…終わってしまった。はたしてこんな映画で、秀樹のファンは偲べるものなのだろうか?
まぁ、秀樹の尻を拝めたし…ファンはそれで納得なのかな。個人的には秀樹が恋人と路上で喧嘩するシーンが、どんなアクションよりも映画的に凄いと思った。画面の奥から路面電車が近寄ってくるんだけど、線路上で喧嘩…その後、車がビュービューと通る車道(明らかに交通規制してない感じ)の横に移っても芝居を続け、結局チューまでしちゃうという。現代の日本じゃ制約があってあんなシーン撮れないんじゃない?役者がちょっとよろけただけで絶対に事故る。ツッコミ満載のストーリーなのに、ああいうところで本気を見せられるとリアルを感じられる。
あと、もしファンの人が見てたらすげーお叱りの言葉を頂戴しそうなんだけど…一見、幸薄そう(でもけっこう腹黒よ)な未亡人を演じるちあきなおみを、あらためてこうして眺めていると、“あれ、やっぱりコロッケに似てるじゃん”と。特に、小林稔侍の人質になり、解放された直後のアップがもろ顔がコロッケ(笑)モノマネのネタにされるのわかるよ(爆)散々ツッコミを入れてるけど、オイラは本気で映画を否定するつもりはなく、これはこれで80年代邦画として大いに楽しむ…これから見る機会がある若い世代もぜひ寛容な気持ちで見てほしいなってことです。
監督:斎藤光正
出演:西城秀樹 ちあきなおみ 中村嘉葎雄 朝加真由美 竜雷太 高橋幸治 成田三樹夫 仲谷昇 鈴木瑞穂
【未DVD化、VHSはAmazonでも発見できず】
西城秀樹をAmazonで探す
ちあきなおみをAmazonで探す