打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?(2017年) | 勝手に映画紹介!?

打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?(2017年)

打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?

【鑑賞日:2017年8月18日】

1000円ポッキリで映画が鑑賞できるシネプレックスの会員デーだったので…公開初日の「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」を鑑賞してきた。昨夏公開の大ヒットアニメ「君の名は。」に続けと、東宝が思ったかどうかは定かではないが…24年前にTVドラマとして作られ、その後、劇場公開もされた岩井俊二初期の同名実写作品を今風アニメにしてリメイクしたのが本作。総監督の新房昭之をはじめ「物語」シリーズのスタッフが携わってることで現代のアニメファンも大注目。「モテキ」の大根仁がオリジナルを大幅にアレンジした脚本に挑戦している。

夏休みのある日…その日は中学校の登校日で、花火大会でもあった。島田典道は親友の安曇祐介らと学校へ。授業が終わった後、典道と祐介は校内のプールに行くと…そこにはなぜかクラスメイトの及川なずながいた。実は、典道も祐介も…密かになずなに想いを寄せていたのだ。そんな2人に、なずながある提案をし…。やがて、教室に戻った典道と祐介…クラスメイトたちが“花火は横から見たら丸いのか?平べったいのか?”という議論で盛り上がっており…皆で灯台まで行って、実際に花火を見て、検証しようという話になるのだが…。

過去にオリジナル版もDVDで見ており…ちょうど2か月くらい前に、大根仁が手掛けた本アニメリメイク版のノベライズ小説を電子書籍で入手し、先に読みまして、その際にも…久しぶりに見直したりもした。もともとドラマの企画が“if”を題材としたシリーズものでして、本作のオリジナル版も、ある“分岐点”を境に、2通りのパターンの物語を提示し、結末は視聴者の想像にゆだねるみたいな内容だった。今回のリメイク版ではキャラクターの設定を小学生から中学生に引き上げたのが、まず大きな変更点で、さらに“if”展開が2回以上、複数回起こります。

そして…1本の物語として見てしまうと、意味が解り辛かったとされる“if”展開を、もう少し…スムーズに理解させるため、このリメイク版では、不思議な力を持った“謎の玉”が登場。その“玉”の力によって…主人公は分岐をやり直すという、よりSFファンタジーの要素を強くした作品に仕上げている。ノベライズ小説を読んだときは、“だいぶ話がアレンジされてるな”と思いつつも、まだ過去の実写版のイメージに囚われてる部分が少なからずあったんですけど…実際に今回のリメイク版アニメの本編を見ると…まったく新しい作品に生まれ変わっていて驚く。

っていうか…やっぱりどこか「物語」シリーズ的な“ニオイ”なんかもしまして…学校内に螺旋階段があったりして、思わずガハラさん(戦場ヶ原ひたぎ)が落ちてくるんじゃないかなんて想像してしまったし。後半の何度も“if”を繰り返す展開に突入すると…より「物語」シリーズのような不条理感が強くなっていった。かといって、岩井俊二感がまったくないかというと…そういうわけでもなく、主人公たちが自転車に乗って登校するシーンなどで、岩井映画っぽさが伝わってきた。岩井映画って、けっこう“自転車”が象徴的なアイテムとして使われることが多いじゃない?

自分は真っ先に「四月物語」の松たか子が自転車を漕いでるシーンを想像しちゃったんだけど、そういえば「Love letter」でも中山美穂が自転車に乗っている印象的なシーンがあった。とにかく、そういう過去の岩井映画で見た“自転車シーン”に匹敵するくらいの気持ちよさ、清々しさが…主人公たちの登校シーンに感じられた。もしかしたらアニメ版スタッフもそういう狙いがあったのかもしれない。あとね、ノベライズ版を読んだときは大根仁らしいサブカルネタがけっこうぶち込んであったんだけど…さすがに全部は拾ってなかったな、映像じゃ無理なのかな?

オリジナルの実写で登場する“スラムダンク”だったコミック名が“ワンピース”になってるっていうのはノベライズと同じでしたね。他にもノベライズではスイカバーとか、コーラとか、ベビースターラーメンとか固有名詞がバンバン飛び交ってた。典道と祐介がプレイしているゲームが、オリジナルの実写版ではスーマリか何かで、ノベライズではマリオカートになっていて…そういう細かい変更が面白かったりしたんだけど、アニメの方では何故か“キラキラスターナイト DX”だという…要は任天堂から許可がとれなかったってことでないか?と勘繰ってみる。

そのくせ…中学生たちが好きな相手の名前を連呼する時に、1人だけアイドルの名前を挙げるヤツが出てくるんだけど、そこだけはオリジナルと同じ人の名前で、何で今その名前?という不思議な笑いに繋がる。これ、オリジナルの実写版をちゃんと見てる人ほど笑えるネタだと思われる。なずなが松田聖子の歌を口ずさむのはノベライズにもあったんだけど…映像で見ると、ちょっとミュージカルっぽく見えたりするのは、やっぱり「モテキ」などで散々歌謡曲ネタを扱ってきた大根仁のセンスが影響してるのかな?なんて解釈…ちゃんと広瀬すずが歌ってます。

オリジナルの実写版ももともと変な映画で、想像力を働かせなきゃいけない部分があったので…今回のリメイクアニメに関しても、「君の名は。」のようにわかりやすい結末ではないかもしれない(っていうか、「君の名は。」では、入れ替わり設定の時点でついて行けない人もいたみたいだが)…だからあそこまで一般客に受け入れられるかどうかは難しいかもしれない。それこそ「物語」シリーズであったり、新房昭之作品を追いかけているアニメファンだったら受け入れられるだろう。あれだよね、岩井俊二の「花とアリス殺人事件」もこういう映像で見たかったよね。

ストーリーや展開には賛否両論あるかもしれないけど、アニメ表現的には斬新なこともいっぱいやっているし、冒頭から美少女のスク水姿も堪能できるしで、見て損はないと思うけどね。ただ、広瀬すずと菅田将暉…特に菅田将暉の声がダメダメだった。周りが、芸達者なアニメ系声優さんばかりなので、余計に拙さが浮き彫りになる。主人公…アンパイの神木くんでよかったんちゃうの?(笑)本音を言うと…あのキャラデだと、神谷浩史あたりの方が一番しっくりきそうな感じがする(それじゃあ、まんま「物語」シリーズだよ)。宮野や花澤香菜はさすがにうまい!


総監督:新房昭之 監督:武内宣之
出演:広瀬すず 菅田将暉 宮野真守 浅沼晋太郎 豊永利行 梶裕貴 花澤香菜 櫻井孝宏 松たか子


【やっぱ実写版を見ておいた方がいいよ!】
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