四月物語(1998年)
2012年9月5日発売の新作Blu-ray「四月物語
春、東京にある武蔵野大学に通うため、北海道の親元を離れ、一人で上京してきた楡野卯月。引っ越しの荷物も届き、いよいよ大学生活がスタートする。新入生同士の自己紹介、サークル活動の勧誘などあわただしく時間が過ぎていく中、実は卯月にはもう一つ大事な目的があった…それは高校時代に片思いだった先輩の山崎と再会することで、卯月が武蔵野大学を受験したのも、山崎の影響だったのだ。その山崎が、武蔵野堂という書店でバイトをしているという情報を耳にし、足しげく通い続けるのだが、なかなか本人に会えない日が続き…。
初めてこの映画を見た時、松たか子のファミリー総出(大怪我してしまった、話題の染五郎もちゃんといます)な冒頭シーンにまず度胆を抜かれた…何気に凄いことやってたよね。いわゆる芸能人一家が、普通にその辺にいそうな家族を自然体に演じているというのがなんとも憎い。撮影的にも、かなり高度で…ワンカットで、列車が発車するまでを捉えていて、オープニングのクレジットへと流れていくんだけれども、それがとても心地よい気持ちで、映画の中に入っていけるだよね。岩井俊二ってこういう小細工がめちゃめちゃうまいんだよ。
本当は好きな男を北海道から追っかけてきたというストーカーまがいの危ない女であり、男のために大学を選んだなんて動機も不純。こんなの金を出した親が知ったら、泣いちゃうとおもうんだけれども…そういうのをリアルな日常の描写で包み込んでしまい、普通の女の子の可愛らしい物語に見せているというのが、ほんと岩井俊二のマジックである。東京来たばかりで、バイトもしてないのに…先輩との偶然を装った再会を実現させようと、けっこう散財してるよね。先輩と会うまでに、話すまでに、いったい何冊の本を買ってるんだよ!
で、物語としては非常に中途半端にも思える、これから何かが始まりそうだってところで、プツンと終わってしまうんだけれども…映画を見たというカタルシスはちゃんとあるんですよね、不思議なことに…。むしろ、これ以上見せてしまったら、映画の心地よさがなくなっちゃうと思うんですよ、この映画は。どーせ、この後は、松たか子が、憧れの先輩、田辺誠一にやられちゃって、どんどん都会にもまれてケバイ女になっていくんだろうなぁって…頭の中でストーリーが思い描けちゃいますもん、現実逃避をするための映画で、そんなのは見たくない(笑)
BDの画質は14年前の作品というのを考慮すれば…かなり高画質の部類では?本屋のシーンの一部で、ノイズのようなチラつきが散見されたけれども、撮影監督・篠田昇さん特有の温もりのある淡い映像が、ストレスなく堪能できた。音声もリニアPCM5.1chなので、大学の喧騒の中に埋もれる、松たか子のか細いセリフなんかもきっちりと聴きわけられるし、CLASSICによる軽妙な劇伴も耳に馴染む。もちろん一番見たかった雨のシーンも、まるで自分の部屋の中で土砂降りの雨が降っているようで、初めてDVDのDTSサラウンドを聴いたときの感動が蘇えった。
監督:岩井俊二
出演:松たか子 田辺誠一 藤井かほり 留美 加藤和彦 松本幸四郎 松本紀保 市川染五郎 藤間紀子
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Blu-ray 四月物語