ホームランが聞こえた夏(2011年) | 勝手に映画紹介!?

ホームランが聞こえた夏(2011年)


勝手に映画紹介!?-ホームランが聞こえた夏

わぉ、三連続当選…現在、GyaO!で実施中のオンライン試写会に、ここ二日間で3作品全部当たってしまいました。ハリウッド大作の「シャンハイ」、邦画話題作の「うさぎドロップ」…そして残っていた韓国映画の「ホームランが聞こえた夏」。まぁあ、これは当選人数が1000名なので(最初の二つは当選人数300名)、当たる確率が高いなとは踏んでたんだけれども、結局、いちばん最後であった。えっと、韓国の高校野球を描いたスポ根です…問題を起こしたプロ野球選手が、点数稼ぎのボランティアで、弱小チームのコーチを引き受けるというところまではなんだかありがちなお話なんですけど、生徒がみんな聴覚障害者、つまりろう学校が舞台というのが特徴的です。

中学時代に天才ピッチャーと呼ばれていたミョンジェは突発性の難聴で聴覚を失い、高校はろう学校へと転校する事になった。そして、もう二度と野球はやらないと心に誓うのだ。その学校にも、野球部はあるのだが…部員たった10名の弱小チーム。チームの存在も危ぶまれている中、選手たちはなんとか全国大会に出場して、一勝したいと願っていた。一方、人気プロ野球選手のキム・サンナムは、度重なる不祥事で謹慎処分に。世間への点数稼ぎも兼ねて、ろう学校の野球部コーチを引き受けることになったのだが、本人はあまりノル気ではない様子。それでも、選手たちに熱血指導を行うのだが…。

素人同然の弱小チームが全国大会で“優勝”を目指すなんていったら、それこそどっかの“マネジメント小説、映画”と一緒で、鼻白んでしまうところだが…当座の目標が、“1勝すること”にあるのは、なかなか現実的ですばらしい。日本の野球を扱った青春もので「ひゃくはち」って作品があったけど、あれも、チームの勝利じゃなくて、補欠がレギュラー昇格を目指す話だったからこそ、グンとハードルが下がって、普通の人でも共感できる話になっていた。そして、そういう低い目標だからこそ、予測できる結末の幅が広がり、ドラマの先行きが読めなくなる。そういう点では、本作も試合終了の声があがるまで、気の抜けないスリリングな映画であった。

ただ、一つ勿体なかったのは、試合の結果が出た直後だろう…お国柄の違いなんかもあるんだろうけど、やっぱり勝ったにしろ、負けたにしろ、まずやらなきゃいけないのは…高校球児だったら、相手、対戦チームへの敬意、賞賛ではないだろうか?涙をこらえて、両チームが整列して、お互いを讃えあうところが感動的なのに、本作ではろう学校の選手たちが真っ先に自分たちの世界に浸ってしまい、周りの大人たちもそれに追随してしまった部分だ。「感傷に浸るのは試合(挨拶)が終わってからだ」っていう、指導者の言葉が欲しかったね。日本人としては、順番が逆かなと、思わずにはいられなかったよ、せっかくいい、意外性のある結末だったのに。

謹慎中のプロ野球選手で、最初はいやいや生徒たちの指導をはじめるキム・サンナムは、なんとなく「タッチ」に出てきた柏葉英二郎みたいな印象。めちゃくちゃスパルタで、はたから見たら生徒たちを殺す気かとか思うんだけれども…実は、物凄く野球愛に満ちた熱い指導者だったという。綺麗事だけじゃ、野球も、人生も勝てねぇんだよというのを、独自の理論、解釈で、生徒たち、そして周囲の大人たちを説き伏せていく。そんなコーチの偉大さを見抜き、必死に食らいついていく障害児の生徒たちが、とにかく健気ですねぇ~。なんとなくだけど、エースのピッチャーをやってる男の子、実写「タッチ」で上杉兄弟をやった、双子の斉藤兄弟に似てる。

韓国映画の凄いところは、周りの人間が障害者を舐めているという、嫌な現実、事実も隠さず描くことだろう。だからこそ、「舐めんじゃねーよ、クソ食らえ」という精神を叩き込む。もちろん、スポーツマンシップとか、そういうのは大事なんだけどさ、こういう気持ちが、今の日本、日本人に足りない部分なのではないかというのを思い知らされますよね。余談だけど、高校時代にオイラも野球部(軟式)で、某ろう学校や、某朝鮮高校と対戦したことがあります…練習試合で。うちの対戦したろう学校はけっこう強かった…っていうか、ウチらがめちゃめちゃ弱すぎたっていうのが本当のところなんだけど。逆に朝鮮学校にはボロ勝ちした記憶があるなぁ~。


監督:カン・ウソク
出演:チョン・ジェヨン ユソン カン・シニル チョ・ジンウン キム・ヘソン


【ろう学校の高校球児といえば…】
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