刑事・鳴沢了2~偽りの聖母~(2011年) | 勝手に映画紹介!?

刑事・鳴沢了2~偽りの聖母~(2011年)


勝手に映画紹介!?-刑事・鳴沢了2~偽りの聖母~

昨晩、フジテレビの金曜プレステージで放送された「刑事・鳴沢了2~偽りの聖母~」をエアチェックしておいたので鑑賞、昨年の「刑事・鳴沢了 ~東京テロ、史上最悪の24時間~」に続き、堂場瞬一の人気警察ミステリーを映像化したもの。前作は、原作の6作目をいきなり映像化しており、単発の刑事ドラマとしては面白く見れたものの、鳴沢サーガを追い続けていた原作ファンとしては、鳴沢の過去、親子の確執など、シリーズの核となるお楽しみ部分がすっぱりカットされてしまっていたことに物足りなさを感じたもんだ。本作では、いよいよ警視庁刑事になる前、新潟県警時代の鳴沢の姿が描かれていたんだけれども…。

県会議員の大島洋一が何者かに刺殺された!手には小さな人形を握らされており、警察は怨恨の線で捜査を始める。被害者は、新潟県知事の小山内清美と敵対関係にあり、マスコミは知事が事件に関与しているのではないかという見方もしていた。また、児童養護施設「ひだまり学園」の園長と被害者が言い争いをしているところを目撃されており、こちらも事件になんらかの関係があるのではないかと見て、捜査を進めていたのだが…今度はその園長が殺されてしまった。犯行の類似せいから、捜査本部は連続殺人の味方を強めるのだが…新潟県警捜査一課の鳴沢了は、犯人は別ではないかと主張する。しかし、鳴沢の意見は認められず…。

原作の第1作目である「雪虫」をベースにしつつも、事件の内容はどうやら原作とは異なるオリジナルになってしまいましたね。鳴沢親子の確執、警察官僚の父親や元刑事の祖父が事件に関与をしており、それが鳴沢が新潟県警を辞める大きな原因になるという大まかな設定部分、そこで展開されるドラマなんかはわりと原作に近いんだけれども、児童の虐待問題に取り組む女性県知事の周囲で起きる殺人事件を発端に、養護施設で過去に起こっていた事件がひも解かれていくという話に変更されていた。原作は、宗教絡み(元祈祷師のばあさんが殺される)ので、あんな見立てっぽい殺人とか、連続殺人とか、いかにも2時間ドラマな安っぽい展開ではなかったはずなんですけどねぇ…そこが残念といえば、残念か?

ただ、原作に出てくるキャラクターに関しては、前作で坂口憲二が鳴沢了にピタリとハマったように、本作も意外といいキャスティングをしているなぁと感心。今回、鳴沢の相棒役となる後輩ショカツ刑事のウミくんこと、大西海を勝地涼が演じてたんだけど、堅物の鳴沢と、今風の若者の大西のやりとりは、原作を読んでイメージしていた、デコボコなコンビの印象にだいぶ近い。ラーメン屋での会話とかもけっこうよくて、ばっちりと食事をコントロールして体調管理している鳴沢が、ラーメンのスープを飲まないとか、そういう細かいところはちゃんと原作を意識して作ってるなぁと思いました。ストーリーが違っても、こういうところで、鳴沢シリーズらしさが感じられる。

祖父の仏の鳴沢が、大滝秀治、父親の鬼の鳴沢が石橋了…特にじーさんの方は、もうベタベタだけど、こちらの想像通りなキャスティングでしたよね。父親は、原作ではショカツの警察署長であり、後に刑事部長に昇進するが、本作では最初から新潟県警刑事部長の地位に登りつめていた。些細な事だけど、BOBAさんが演じた先輩刑事の新谷刑事を、原作通り“カンエイさん”というあだ名で呼んでほしかったなぁ、そうすればさらにポイントは高かった。あと、鳴沢の上司をかたせ梨乃が演じてたけど、原作では女じゃなかったはず。梨乃ねーさん、どちらかというと1作目で矢田亜希子が演じた萩尾聡子あたりの方が似合いそうな感じだよ。

1作目の時の感想にも書いたけど、矢田亜希子は、まだ映像作品では出てきていない小野寺冴のイメージだよね。数字さえよければ、今後も続編がつくられそうな感じだけど、その時は必ず出てくるであろう小野寺冴を誰が演じるのか、気になるところだ。そういえば、チョイ役の同僚刑事で「たけしくん、ハイ」のたけしくんが出てましたね。顔が全然変わってないので、すぐにわかる、それにしても童顔だなぁ(笑)トータルのクオリティとしては「刑事・鳴沢了 ~東京テロ、史上最悪の24時間~」の方が、見ごたえはあったと思うのだが、これはこれで鳴沢シリーズのエッセンスがちゃんと抽出できていたので及第点といったところでしょうか?今後は2時間ドラマよりも、連続もので、もっと丁寧にゆっくりと鳴沢の成長ぶりを描いてほしいぞ!


演出:山本剛義
出演:坂口憲二 勝地涼 田中要次 濱田マリ かたせ梨乃 石橋凌 大滝秀治 大地真央 徳井優


【原作はこちら】
雪虫 (中公文庫)
勝手に映画紹介!?-雪虫 (中公文庫) [文庫]