東京フィルメックス最優秀作品賞「よみがえりの樹」観た映画 エグジール/苦い銭/大樹は風を招く | 映画時光 eigajikou

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第17回東京フィルメックス授賞結果と観た映画

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最優秀作品賞
『よみがえりの樹』
中国
チャン・ハンイ監督
授賞理由;映画監督になる前はサッカー選手になりたかったという監督の、オリジナリティーあふれる初の長編映画。
中国の片田舎でゆっくりと、しかし痛みを伴いながら村が消えていくという現実を捉えています - しかもそれをセンチメンタルにはさせず、安易なノスタルジーに浸る事もなく淡々と描き出しています。
その手法も、男女の性別を超えるという驚くべき展開で。
どの場面も強く記憶に焼き付けられます。

この作品はジャ・ジャンクーが若手監督作品をプロデュースする「添翼計画」の最新作。
ジャ・ジャンクーは70年生まれ。
自分自身も国際的な評価を高めて来ましたが、
後進の育成もして、
その人たちがまた評価されています。

『よみがえりの樹』
は、少年に死んだ母親の霊が憑依して、
夫に彼女が結婚した時に植えた木を
移植して欲しいと頼む不思議な映画でした。

監督は次の映画祭のために離日したため、
移動中に連絡を貰いとても嬉しいですと
ビデオメッセージが流れ、
プロデューサーが代理受賞しました。
サインはちゃんと貰ってあります(笑)
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審査員特別賞
『バーニング・バード』
サンジーワ・プシュパクマーラ監督
フランス、スリランカ合作

授賞理由;本作品は、1980年代後半の残虐な内戦で負った痛みに対する痛烈な叫びです。
夫と義母を失い、それでも力を絞り家族を守ろうと苦戦し、挙句の果てに子供たちからの敬意を失ってしまった、とある女性の視点から描かれています。

過去に起きた、ほとんど世間でとりあげられることのなかった出来事ではありますが、現代社会において、むしろ切迫した、今日的に意味のあることとして描かれています。

スリランカ内戦中の1989年が舞台。
突然密告され民兵に夫を殺された
主婦クスムは8人の子供と姑を養うために採石場→屠殺場→マッサージを看板にした売春する店で働くが、
次々と過酷な状況に陥る。
悲惨過ぎて見ていて辛くなったがラストに
彼女がとった衝撃的な行動と強さが強く印象に残る。

監督は1989年の内戦で
命を落とした皆さんに捧げますと挨拶。
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スペシャル・メンション
観客賞
『私たち』(仮題)
韓国
ユン・ガウン監督

スペシャルメンションと
観客賞の2賞を受賞。
ユン・ガウン監督は金曜に韓国に帰国したのですが、
このような素晴らしい賞を戴けることになり、
今日また日本に戻って来ました。
小さな映画でも真心を込めて作れば良いと分かりました。
日本での劇場公開が決まりましたが、
日本の皆さんとフィーリングが合うようで
嬉しいと語りました。

スペシャルメンションの
授賞理由;とても繊細且つシンプルな手法で、子ども達のストーリーを語り気持ちを表現しています。
特にクローズアップの子ども達の表情は、多くを語り、我々の心を打ちます。
今後が楽しみな若い女性映画監督を激励する意味で、『私たち』をスペシャルメンションと致しました。

10歳4年生の少女ソンは
学校で仲間外れにされている。
夏休み直前に転向して来たジアと仲良くなる。
でも、家庭環境の格差から
ジアはソンを仲間外れにしている
グループに取り込まれて友情が崩れていく。

監督が実際に経験したことで
映画監督になったら必ず作らなければ
前に進めないと考えていたテーマだった。
子どもたちの目の高さで
自然な姿を捉えたカメラが秀逸。
セリフは子どもたちに
実際に使う言葉で話してもらった。

重いテーマが多いコンペ作品の中で
子どもが自分たちの
困難を乗り越えていく力を描いて
一服の清涼剤のような作品だった。
来年日本での一般公開が決まっています。
記事を書いて応援したいです。
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学生審査員賞
『普通の家族』
フィリピン
エドゥアルド・ロイ・Jr監督

授賞理由;
普通ってなんだ。
生きてればつきまとう、普通という概念。
しかし、この映画を通して、それが主観的でしかないということに気付かされた。
愛や、親が子を想う気持ちは万人共通。
生まれ育った環境が何であれ、誰もが共通に持つ感情が描かれており、一番世界観にのめり込むことができた。
なおかつ、問題提起が含まれるエンターテイメントとしての重要性を感じさせられる作品だった。
この素敵な映画を通して、自分の中にある普通というものを、改めて考えていただきたい。
“ 普通” ってなんだ。

マニラでホームレス生活をしている
16歳のジェーンと17歳のアリエスの
カップルの赤ん坊が誘拐されてしまう。
2人は必死で赤ん坊を探す。
ドキュメンタリータッチの
スリリングな展開で
ストーリート・チルドレンカップルの
奮闘を描く。
フィリピン映画のパワーと勢いを
この作品でも強く感じた。
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審査委員長の
トニー・レインズさんは
コンペ作品の中で
『仁光の受難』だけがタイトルに
「受難」が入っていたが
どの作品も「受難」が入っている重いテーマの作品だった。
『仁光の受難』は「受難」はあまり感じられなかったけど、
新しい手法に取り組んだ楽しく見られる作品で、
私1人が推していた。
審査は強い意見が出て激しい議論をした。
コンペ作品はバラエティに富んでいた。
観客から面白い質問が出ていたし、
反応も良かった。
トニー・レインズさんは
日本をはじめ東アジアの映画を
世界に紹介している、
映画祭プログラマー、映画評論家、
国際映画祭の審査員経験が豊富なイギリス人です。
ブラック・ユーモアの効いたスピーチが
とても面白かったです。

受賞理由は東京フィルメックス
公式サイトより。

その他昨日観た東京フィルメックス
特別招待作品
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リティ・パン監督の
『消えた画』に続く
自身が経験したクメール・ルージュ時代の
辛い経験を
今回は詩の引用を多く使って幻想的に描いた『エグジール』


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ワン・ビン監督の新作
『苦い銭』
中国浙江省の縫製工場で臨時工員で雇われる出稼ぎ労働者の若者たちを描く。
今の中国のお金の存在のかつてない強さの中で
人々がお金に翻弄されている様子が浮かび上がる。
人々をじっくり写して存在のユニークさも
捉えているため重苦しさばかりの作品ではなく
長尺でも興味深く観られた。


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クロージング作品

『大樹は風を招く』
香港
ジョニー・トーが主宰する
「鮮浪潮短編映画祭」受賞監督3人を起用し、
ジョニー・トーがプロデュース。
中国返還前夜の香港が舞台。
当時実在した3人のギャングの人生をヒントに描いたノワール映画。
26日に発表された金馬奨で
編集賞、オリジナル脚本賞を受賞。
久々に観た本格アクション(笑える所もある)香港映画。
ユニークな構成で面白かった!

今日、
特別招待作品
フィルメックス・クラシックで
アジア・アクション映画の金字塔と言われる
傑作カンフー映画
1971年製作
キン・フー監督
『俠女 デジタル修復版』
で、今年の東京フィルメックスでの
鑑賞が終わります。


東京フィルメックスで観た映画

The NET 網に囚われた男

ぼくらの亡命

バーニング・バード

神水の中のナイフ

マンダレーへの道

オリーブの山

山のかなたに

私たち(仮題)

仁光の受難

よみがえりの樹

ザーヤンデルードの夜

恋物語

普通の家族

山<モンテ>

タイペイ・ストーリー

ティクン〜世界の修復

エグジール

苦い銭

大樹は風を招く


今週劇場鑑賞した映画

ホドロフスキーの虹泥棒