淵に立つ 感想 深田晃司監督の進化と深化。その淵に立って見えるものは静かに怖くて忘れられない | 映画時光 eigajikou

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浜松シネマイーラの会報にイラスト&コラム連載中。
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『淵に立つ』その1
2016年製作 
日本=フランス合作映画
PFFクロージング
先行プレミア上映
東京国立近代美術館
フィルムセンターで鑑賞

浜松シネマイーラでの上映
11月12日(土)~11月25日(金)

11月12日(土)に
深田晃司監督・古館寛治さんの
舞台挨拶がありますよ!


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『淵に立つ』予告動画


監督・脚本・編集:深田晃司

エグゼクティブプロデューサー:
福嶋更一郎 、 大山義人
プロデューサー:
新村裕 、 澤田正道
制作プロデューサー:戸山剛
撮影:根岸憲一
美術:鈴木健介
音楽:小野川浩幸
主題歌:HARUHI
録音:吉方淳二
サウンドデザイナー:オリヴィエ・ゴワナール
照明:高村智
編集コンサルタント:ジュリアン・グレゴリー
スタイリスト:村島恵子
ヘアメイク:菅原美和子
ラインプロデューサー:南陽
制作担当:三村薫
効果:吉方淳二

出演:
八坂草太郎/浅野忠信
鈴岡利雄/古舘寛治
鈴岡章江/筒井真理子
山上孝司/太賀
設楽篤/三浦貴大
鈴岡蛍/篠川桃音
鈴岡蛍〈8年後〉/真広佳奈

あらすじ(ネタバレなし)

小さな金属加工工場の社長鈴岡利雄(古舘寛治)
には、妻章江(筒井真理子)と
10歳の娘・蛍(篠川桃音)がいる。
ある日利雄の古い友人
八坂草太郎(浅野忠信)が訪ねてきた。
最近まで服役していて出所したのだ。
利雄は章江に相談もせずに
八坂を工場で働かせ
空いている部屋に住まわせるという。
蛍は八坂になつき、
章江にも心境の変化が起こる
そして...


ぴあフィルムフェスティバル(PFF)
クロージング上映で観て、
深田監督、
古館寛治さん、
筒井真理子さんのトーク、
Q&Aを聞いてきました。

監督はこの映画を観た人が
人に勧めるときには、
どこまで話していいのかなどは
その人にお任せだと話してみえました。

でも、私はなるべくネタバレ記事などは読まずに、
鑑賞されることをおススメします。

以下に映画のストーリーについての
ネタバレは書きませんが
俳優さんの演技のことなどを
少し書きますので
読みたくない方は飛ばしてください。

監督が
『歓待』
(2010年)とは
コインの表と裏のような作品、
黒い『歓待』だと説明していると語っています。
監督は2006年に本作『淵に立つ』の
シノプシスを書いたが、
キャリアもなく映画化はできなかった。
その後、前半部分だけ抜き出して
制作した映画が『歓待』。
『歓待』では山内健司さん演じる
下町の印刷工場の家族に
古館寛治さん演じる
怪しい男が入り込んで来ます。
『歓待』を観ていなくても
構わないとは思いますが、
『淵に立つ』を観る前でも後でも、
『歓待』を観るとそれぞれを
引き立てるからご覧になることをお勧めします。


得体の知れない怪しい男・八坂を演じる
浅野忠信は自分にしかできない役だという
意気込みでのぞみ、
監督の期待に見事に応えています。

古館寛治さんに
いつもとは違う受け身の役を
ぜひやってみて欲しかったという監督。
静かで深みのある怖さを感じる
観たことのない古館さんです。

個人的には筒井真理子さんに
本年度の主演女優賞を差し上げたいです。
前半と後半の撮影の合間の
3週間で13キロも増量されたそうですが、
肉体の見た目の変化だけでなく、
人格の変化を見事に演じています。

主要3人のセリフは少なく、
佇まいや表情が繊細に語ります。
存在感が物語になっています。

太賀くんはイノセントな雰囲気を
上手く出しています。
蛍役の子役の篠川桃音さんは
監督がオーディションで
いかにもハキハキした子役なタイプではなく
一番生々しい子どもらしさを感じた彼女にしたそう。
8年後の蛍役の真広佳奈さんも
難役を繊細に演じました。
三浦貴大くんは出番少しでした(^o^;)


激しい暴力描写やグロい描写はないのに、
日常に闖入してくる「暴力的な何か」の
不条理までな恐ろしさ。
どこにでもありそうな日常が
静かに怖い。

監督の好きな映画のエッセンスや
メタファーが散りばめられているし、
分析好きにはたまらないでしょうね。
『ほとりの朔子』
『さようなら』

で、具体的に描いていた
現代性の活写を、
もう一段階進めて抽象化していたり
サラッと挟み込む物、景色、表情などから
観客が読み取って考えを促す仕組み。
なんでもない日常が
どんなに脆いものかと
静かに突き付けてきます。

印象的に使われている「赤」
浅野忠信自ら描いて
提案した衣装イメージ画の赤色を
元にしたそうですが、
『歓待』のブライアリー・ロングや
『ほとりの朔子』の朔子の衣装も
赤が印象に残っています。
『さようなら』のラスト竹の赤い花も。

一昨日やはりPFFの特別上映で
念願のドキュメンタリー
『我等の時代の映画作家シリーズ
ジョン・カサヴェテス』

監督:アンドレ・S・ラバルト
ユペール・クナップ
観ました。
カサヴェテスが
自分は生きている人間の姿や
感情を撮りたい。
アメリカでは認知されていないけど
アートフィルムを撮りたいんだ
と語っていました。
『淵に立つ』は
カサヴェテスの
『フェイシズ』
『こわれゆく女』や
トリフォー映画観た時と同じような
直ぐに言葉にならないような衝撃や
思考を促す力を感じた。
(と、書くと褒めすぎ!?)
『怒り』のような
エンタメ性はないので
観客を選ぶ作品ではあるかと思うけど、
『淵に立つ』も
今年の日本映画を代表する
1本であることは間違いないです。

土曜日にも
シネマヴェーラ渋谷の
若手映画監督の特集上映
「日本映画の現在」で
深田監督と太賀くんのトークを
聞きに行く予定。
『淵に立つ』は一般公開されたら
もう一度観て記事を書きたい。
映画とはまた一味違うらしい、
深田監督が書いた
小説「淵に立つ」も読みたい。

淵に立つ/深田 晃司


トークの進行役
PFFディレクターの荒木啓子さんが
「映画はぜひ映画館のスクリーンで観てください。
皮膚が覚えていますから」
と言われました。

『淵に立つ』は正に皮膚が覚えていて
忘れられないタイプの映画です。
今年は深田監督所属の
青年団づいている私。
青年団関連の舞台を4本観て
古舘寛治さんの朗読劇も鑑賞。
深田監督の映画3本観て
青年団河村竜也さん出演の
『SHARING』(篠崎誠監督)も観た。
(河村竜也さんは深田監督
『歓待』にも出演)

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荒木さんと深田監督


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筒井真理子さんと古舘寛治さん


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監督が着ているのは
浅野忠信のバンド「SODA!」のTシャツ


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深田監督と筒井山に
もらったサイン



今週劇場鑑賞した映画

スウェーデン映画祭
『モダン・プロジェクト』

『波紋』

『同窓会/アンナの場合』

『ストリート・オーケストラ』

『トレジャー オトナタチの贈り物。』

『アスファルト』

PFF特別上映
『我等の時代の映画作家シリーズ
ジョン・カサヴェテス』1969年

『The Exiles エグザイル』1961年
監督:ケント・マッケンジー

『淵に立つ』



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Captain Fantastic
ヴィゴ・モーテンセン新作「キャプテン・ファンタスティック」
マット・ロス監督


『淵に立つ』は今年の
第69回カンヌ国際映画祭
ある視点部門審査員賞受賞
そして監督賞が
マット・ロス監督
『キャプテン・ファンタスティック』です!