追悼上映 ありがとう、キアロスタミ!追悼対談 おすぎ×野上照代 ドキュメント:キアロスタミの世界 | 映画時光 eigajikou

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追悼上映 ありがとう、キアロスタミ!
追悼対談 おすぎ×野上照代
『ドキュメント:キアロスタミの世界』
『クローズ・アップ』

ユーロスペース

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17日からユーロスペースで始まった
「ありがとう、キアロスタミ!」
追悼上映と対談に行ってきました。

『ドキュメント:キアロスタミの世界』
1994年、ジャン=ピエール・リモザン監督
キアロスタミ監督が運転する車で
ジグザグ道三部作『友だちのうちはどこ?』
『そして人生はつづく』
『オリーブの林をぬけて』
と、『トラベラー』の
出演者を訪ねインタビューしながら、
キアロスタミ監督も作品についてや
映画論を語る。



『クローズ・アップ』
1990年、アッバス・キアロスタミ監督
モフセン・マフマルバフの名を騙り
詐欺罪に問われた
映画好きな貧しい青年が起こした事件を
青年本人や関係者すべてを本人に演じさせて再現。
ラストにはモフセン・マフマルバフ監督本人も登場。



観てから20年は経っている
この2本を見て、
10月の「キアロスタミ全仕事」で
全部見直したいと思いました。
『ドキュメント:キアロスタミの世界』は
監督の映画作りの手法や信条も語られた
貴重な記録です。
『クローズ・アップ』は
事件の当事者たち本人に事件を再現させる中で
人間の本質が現れてきます。
ラストカットには胸が詰まりました。
『ドキュメント:キアロスタミの世界』で
キアロスタミ監督は
ドキュメンタリーでもフィクションでも
映画は嘘を並べていい。
嘘を並べてもその最後に
真実に迫って語ることができていればいい。
といったことを話していました。
野上さんがキアロスタミ監督は
全部自分の意思を通して
画面の隅々まで作る
しつこさが凄く、
『クローズ・アップ』も全部
事件の当事者本人たちに
再現させていて
初めて香港で観た時に凄い監督だと驚いた。
と、話されました。
マフマルバフ監督を語った青年を
逮捕した警官の1人は、
映画の撮影時には遠方の国境警備隊に
配属されていたのを呼び寄せています。
(隅々まで作るしつこさは
黒澤監督も同じと野上さん)

追悼対談は
野上照代さん、おすぎさん、
通訳などで23年間キアロスタミ監督と
親交のあったショーレさんと3人で
キアロスタミ監督の思い出話や、
ショーレさんから
監督の亡くなる前や
葬儀の様子のお話がありました。
キアロスタミ監督、野上さん、
ショーレさんが黒澤明監督の自宅を
訪問した時のお話し。
黒澤監督が
「子どもをあんなに上手く
どう演出してるの?」と尋ねたら
キアロスタミ監督は
「私のことを誰も知らないから
カメラを置いても緊張しないのですよ。」
と語ったそうです。
2時間ぐらい黒澤監督の自宅でお話しされたとのこと。
帰り道でキアロスタミ監督が
ショーレさんに訳して渡して欲しいと
黒澤監督に書いた手紙を
ショーレさんが読んでくれました。
キアロスタミ監督は黒澤監督に
「質問したいことがたくさんありましたが
今日は我慢しましたので
またお会いしたいです」と書かれましたが、
お二人が会ったのはその時、
90年の山形ドキュメンタリー映画祭で
キアロスタミ監督が来日したときだけだそうです。

日本では野上照代さんとおすぎさんは
「キアちゃん」と呼んでたそうです。
キアロスタミ監督は人の反応を見ながら
話すのが得意だそうで、
1つのエピソードも相手の反応を見て
作り変えて話していたそうです。
脚本も執筆中にどんどん人に話して
意見を言ってもらって変えていたとのことです。
キアロスタミ監督は
日本に来たときは
とてもリラックスしていたそうで
何でも話して、
野上さんとおすぎさんは
猥談にも付き合ったのよと言われてました。
(ショーレさんの通訳が上手くて
直接話しているようだったそうです。)
「監督が奢ってくれるときは
大体ファミレスだったわね。
映画監督はケチな人が多いのよ。」
「女性にモテた人だったわね。」
と野上さん。
おすぎさんがそんな話していいの?
なんて言われた話題もありました。

キアロスタミ監督は今年の3月に
腸にしこりがあるのが分かり
それはガンだったのですが
1回目の手術の後一旦回復したのに
お腹が張ってきて、
その後2回手術を受け、
手術するたびに体調が悪化、
最後の死因は脳梗塞とのことで
今息子さんたちが病院を訴えているそうです。

パリから監督の遺体が空港に戻ったときは
レッドカーペットが敷かれ、
監督が映画を制作したり
ワークショップを開いていた
青少年児童協会の中庭でのお別れには
1万人以上の一般の人が集まり
写真を撮っていた記者たちも号泣していたそうです。
キアロスタミ監督『ABCアフリカ』の中で
7分間暗闇が流れる場面にちなみ
イランのすべての映画館で
同時刻に1分間上映を止めて暗闇にし、
皆で祈ったそうです。




キアロスタミ監督の葬儀に出席した
アスガル・ファルハーディー監督と
ラフシャーン・バニー・エッテマード監督
2人はベルリン、ベネチア映画祭などでの受賞歴がある監督。
イランの映画監督で初めに国際的に広く評価されて
イラン映画の海外への道を開いたのがキアロスタミ監督


おすぎさんが
キアロスタミ監督のように
人間の細かい感情を描ける人は
もう出てこないような気がする。
と言われました。
この頃は技術が進んでも
人間性のない映画が多くて
ワクワクするような映画、
出会えて良かった!
と思える映画がない。
とも。
(何でこんなの私に見せるの?
ってこともあるのよ。と(^o^;))

キアロスタミ監督は
映画と映画の間には
好きな写真撮影と、
(写真にはかなりお金をかけていたわよと
野上さん)
ワークショップを開いて
後進の指導にあたったり、
若い人たちが見てくださいと持ち込む作品を
断らずに見ていたそうです。

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これはキアロスタミ監督の墓石で
監督がモチーフにしていて有名な
キアロスタミの木と
監督のサインが刻まれています。
お墓は『桜桃の味』の舞台近くの村だそうです。


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最前列で聞いていたので
写真は近すぎて
3人を上手く入れることができませんでした。


素人を俳優として使っても
お金をかけなくても
素晴らしい作品が作れることを
世界に証明した人だと野上さん。
キアロスタミ監督の映画を配給・上映してきた
ユーロスペースで
入場無料で行われたこの対談は
1時間以上ありました。
もっとたくさんのお話がありましたが
ここまでにさせて頂きます。

私はキアロスタミ監督の映画は
日本で紹介され出した1993年
『友だちのうちはどこ?』から
その後同時代に観てきました。

10月19日(水)~27日(木)のユーロスペースでの
「キアロスタミ全仕事」(仮題)
で見直すのがとても楽しみです。







このところ映画鑑賞の
モチベーションが下がっていて
今月は劇場鑑賞まだ7本。
去年の8月は53本観てたのに(苦笑)
(今年の劇場鑑賞累計238本)
ブログ書きのモチベーションも下がってて
だめブロガーデス!(´Д`;)
観る映画も偏ってるし。
ヒット作、話題作はとりあえず押さえておく、
みたいな映画ブロガーとしての王道なチョイス!?
する心の余裕!?もないのです。(^o^;)
あ、でも、
もう原則卒業してるアメコミ映画、
これだけは例外ってことで
『X-MEN:アポカリプス』
観ましたよ。
アメコミ映画はガンで体調最悪の時に観に行った
『X-MEN:フューチャー&パスト』以来でした。(^_^;)
世界感に入り込むのに
かなり時間がかかったなぁ。(゚_゚i)



コミコン・インターナショナル・サンディエゴ2016




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『クローズ・アップ』より