【映画】不思議の国の数学者 | おきらく映画ファンクラブ

おきらく映画ファンクラブ

最新作から懐かしい映画まで
レビューと映画情報をお届けします

不思議の国の数学者

(2023・韓・117分)

監督:パク・ドンフン

主演:チェ・ミンシク、キム・ドンフイ

脱北した天才数学者と

挫折した男子高校生の交流を描く。

 

チェ・ミンシクを信じて観た映画です。

この人が出演するだけで

映画が締まるというか

重厚さが加わります。

観る前から大体のストーリー展開や

ラストシーンも予測はできました。

それでも観たかった。

観て正解でした。満足しました。

 

自由を求めて脱北したものの

大切な家族を失い心閉ざした警備員。

夫を亡くし優秀な子供に期待を寄せる母

そんな母を悲しませたくないが

特別推薦で入学した進学校の

勉強についていけない高校生。

そんな2人が「数学」を通し

交流する中で信頼を深めてゆく。

 

南北対立の中で過酷な運命を

背負わされる数学者。

学歴社会の中で不条理を

味わう高校生。

韓国ならではのシチュエーションです。

日本では描けない設定です。

 

脱北すれば自由になれる保障もないし

成績さえよければ世の中の勝ち組に

なれるわけでもない。

数学者は言います。

「自分で証明しろ」と。

数学者は様々な仮説を立て

単純作業でも最後まで諦めずに

自らの手で解を証明していく。

問いが正しくないと

正しい答えが導けない

というフレーズにも心動かされました。

 

以前、国連難民高等弁務官

緒形貞子さんの著書を読んだ時の

「その質問は正しいですか?」

というフレーズを思い出しました。

相手が求めている答えに対し

その質問でいいでしょうか?

という発想が当時の私には

新鮮で衝撃を受けました。

 

今回の映画を観て

勉強の大切さとか

数学の美しさとかを知る

そういう単純な感覚ではなく

年齢や立場は違えど

理解しあおうと努力するのは

人間の性なんだなと思いました。

そして、時には自らの意に反しても

大切な人、恩義のある人との

約束を守らねばならないという律儀。

人の心を動かし

固くなった心を溶かすのは

やはり人なんですね。

 

やや目障りなくらい煩い女友達。

要領がよく友達気取りの嫌な奴。

立場や金銭で世の中思い通りに

動かそうとする鼻持ちならない金持ち。

韓国ドラマでよく見る嫌な

ステレオタイプの人間も多数登場します。

ただ彼らも改心したり、反省したり

それなりの天罰は下ります。

腹が立っても、しばし我慢を(笑)

そこは韓国映画のお約束だから仕方ないかな。

 

偏屈で陰のある天才をチェ・ミンシクが

演じるからこそドラマが引き締まりました。

映画館で観る時間がないという方も

いづれサブスクやレンタルでも

観てください。

エンディングでは穏やかな

春の日差しのような温かさを感じます。